◾️不意な音楽との遭遇
2023年9月17日 日曜日
バランスが取れず、私は仕事終わりにしょんぼりしながら帰路に着いた。
家とは反対方向のスーパーに寄るために、中洲の方向へ歩き出す。
庶民的な街中の道中で、耳を疑う幻想的な音が、まだ「音楽」だとも認識出来ないくらいの奇妙な「音」が私の耳に飛び込んできた。
夕方の中洲川端の裏道の住宅街に似つかわしくないその状況に、精神的疲労から来る幻聴かと戸惑いながら、音の発生源に向かって歩いていく。
それは、この街で開催されている「中洲ジャズ」という街ぐるみの無料イベントの出演者の演奏の音だった。
私が街中で聞いたそれは、なにかの曲のイントロかアウトロで、「ぶぁぁぁああ」って、ちょうどベースとドラムが音量をあげて即興演奏を繰り出す、前衛性の真っ只中の音だった。
▲ 藤原清登 JUMP MONK BBS
もう何年も忘れていた。中洲ジャズのことを。
そもそもコロナで中止になったり、その後有料のイベントになったと聞いたこともあったし。
しょんぼりした私の心を彼らの演奏はときめかせた。
20th centry boyのカバーを、「20世紀ベース少年」と題し、四人のウッドベースで繰り広げる様は、なんだか私をわくわくさせた。
「不意な音楽との遭遇」
忘れていた、もしくは今までに味わったことのない、退屈な日常を一瞬で輝かせる音楽との遭遇であった。
◾️過去の中洲ジャズについて
博多にある中洲という歓楽街で、「中洲ジャズ」は2009年から始まったらしい。
私は過去に3、4回真面目にこのイベントの演奏を見に行ったことがある。
記憶にある出演者は、つのだ⭐︎ひろ、金子マリ、yamazen、村上ポンタ秀一etc...
みな、素晴らしい音楽家だった。
中でも金子マリさんが、「私は『ものは言いよう』と邦題を付けてるんだけど・・」と言って歌いだした「What's a wonderful world(この素晴らしき世界)」のカバーの粋さは忘れられない。
◾️夢みたいなバンド
2024年9月14日 土曜日 (博多 晴れ時々雨 最高36度 最低25度)
今日は中洲ジャズだから、久々に意図的に見に行くことにした。
去年のあの不意な遭遇がとても心地よかったから。
中洲ジャズは中洲の至る所にステージを設け、この時期の夕方の中洲には、どこにいてもジャズの切れ端が聴こえてくる。
私は、タイムテーブルを見てなんとなく気になった
H3F(from thailand)というバンドを見ることにした。
音源を8秒くらい聴いたら良い感じだったので、それ以上は聴かず、あとは直に見ることにした。
川端商店街を通ってキャナルシティ方面へ。
川端商店街には、博多弁を紹介する垂れ幕が下がっている。
「ちゃっちゃくちゃら」
この博多弁を妙によく使った。
「めちゃくちゃ」みたいな意味。
それは物理的なことだけでなく、どうしようもない事が立て続けに起こり、精神的・感情的にどうにもならない時にも「ちゃっちゃくちゃらやないね!」と博多っ子は途方に暮れる。
なんか途方に暮れたんだろうな。この10年くらい(笑)
H3Fが出るステージは、キャナルシティという商業施設の中の広場にあった。
中洲ジャズでキャナルシティは初めての体験だった。
メンバーによるセッティング、音出しが始まって、
キーボードの人がプロレスのマスクみたいなのを被ってて、そこに感銘を受けた。
そうだよ。演者とはミステリアスで、エンターテイメントとは謎めいている。
素顔でセッティングしてる場合じゃあない。
覆面でセッティングして、いざライトが当たれば、「みなさま初めまして!」と言わんばかりに素顔を晒す、それが舞台芸人でござい。
・・と、私はセッティングをする見知らぬタイ人達に、ただならぬ期待を膨らませていた。
「これは、たぶんいい演奏が始まる」
開始間も無く、彼らはとても心地よい演奏の中にいて、私の大好きな音楽であることが明白であった。
ん?
こいつ、これがステージ衣装だったーーー
これが通常のこいつだったーー
なんのことはない。通常のこいつが通常のセッティングしてるだけだった(笑)
一曲目から如実だった。
それはエリック・クラプトンとかジミ・ヘンドリックスとかの系譜にあるギター。
「あぁ今の俺だったらそう叩く」と思わせるドラム。
「そうだよ。ベースは長瀬のギターくらい高い位置で持たなきゃ!」と思わせる高い位置で弾くベース。
最高のバンドだった。
エリックやジミヘンやサンタナが垣間見え、テデスキ・トラックス・バンドとかのアメリカ南部のロックのタイム感が垣間見え、現代的なジョン・メイヤーみたいな感じもあり、なんかマイケル・ジャクソンの「スムース・クリミナル」みたいなクールさもある。
素敵だった。
影響って素晴らしい。
真似じゃなくて、それが血になって、凄いオリジナルなバンドになってる。
それがタイという、音楽的には私は全く知らない国にまで根付いてるなんて。
最高だ。凄くバンドをやりたくなった。
「今ならこうやる」
「このフィーリングで叩く」
そんな夢想をさせる夢みたいなバンドだった。
全然ジャズじゃ無えけど(笑)
ロックのレジェンドが垣間見えすぎたから、彼らには。
最高だった。またどこかで見たい。彼らは。
◾️長くなってきたから!次回に続く!!
次に見ようと思ったステージまで時間があるし、せっかくキャナルシティにいるから、久々に一蘭を食べようと思った。
だけど、一蘭はご覧の通り混んでいたので、同じくキャナルのラーメンスタジアムで味噌ラーメンを食べた。
ちょっとピアノトリオの演奏が聴きたいなって思って、どういう方達か知らないけど宮本貴奈 special trio with friendsのみなさんを見に行った。
ん?ウィズフレンズって、トリオじゃ無いじゃんって見る直前に気づいた。
とても素敵なジャズトリオだった。
私はそんなジャズの詳しいことは分かんないけど、でもそういえば、私はニューヨークでジャズを聴いたこともあるんだ。
あの夜の意識の低いオルガントリオよりも、この夜のこの方達の方が、ニューヨークのジャズじゃん!って思った。
my favorit thingsとかnewyork state of my mindとか、「ニューヨークでジャズを聴いたことがある」(笑)私も満足のいく演奏で聴かせてくれた。
とりわけ3曲目の「newyork state of my mind」は素晴らしかった。
この歌も大人になればなるほど沁みてくる。
創作おでん屋の「厚揚げ鯛みそ」くらい沁みてくる。
そして次々にウィズフレンズの皆さんが登場する。
TOKUさんという、私は知らなかった方が出てきて、なんというかイギー・ポップのようないかがわしさというか危険さが滲み出ていて、初見ではハラハラした。
そしたら、めちゃくちゃ歌がうまくて!
凄いかっこよかった。
なんかアル・ジャロウのような歌唱で最高だった。
アル・ジャロウもイギー・ポップも会った事ないけど。
ふいに、司会者の方が現れて語り出す。
「一年前のこのステージには八代亜紀さんが出演の予定でした・・」
◾️私の抱く八代亜紀さんへの想いとは!?
次週!!紺碧の海に霧笛が響く!!
そう、去年中洲ジャズに八代亜紀が出る予定だったらしい。
直前で彼女は体調不良で出演を辞退した。
そして、その年の年末に亡くなった。
私は大晦日の「年忘れにっぽんのうた」という番組で、「舟唄」のラスト、「ルルル」だけのあの歌唱に魅せられた。
ルとルとルの繰り返しの後に、薄暗い青い水面の上を晴れていく霧のように鳴るストリングス。
ステージ側から客席側にスーッと向かうカメラワーク。
画面越しにピーンと空気が張り詰めていた。
あの日の彼女の歌唱を私は忘れない。
八代亜紀さんの「ルルル」をいつか聴いてみたいと思っていた。
だから、この去年の中洲ジャズに出れなかった話は、しんみりとした。
「今日は、特別に八代亜紀さんの曲をやっていただきましょう!」
司会者がそう切り出し、「お、舟唄か?」と私は思い、バンドは「雨の慕情」を始め、私は「舟唄やないんかい!」って思ったけど、その次に「舟唄」をバンドは演奏し始めて、私の前にいたお兄さんは「もうジャズでもなんでもないじゃん」って呟いて、でも歌謡曲とジャズや洋楽の親和性は言うまでもなく、それでいて実はこの夜のように本格的なニューヨーク仕込みのジャズバンドの演奏で(そう、ニューヨークでジャズを聴いたことがある私をも満足させる演奏で)歌謡曲を聴くという経験は、実はあるようでない貴重な経験なのではないか、と私は真剣に「雨の慕情」と「舟唄」を聴いた。
◾️文章がごちゃついてきたので次回に続く!!
◾️エモいリムショット
2024年9月15日 日曜日(博多 曇り一時雨 最高36度 最低28度)
今日は、北海道旅行の際に買ったおしゃれな帽子をかぶって行ったんだ。
なかなかかぶる機会が無く初めて使えた。
昨日ビール飲み過ぎて、味噌ラーメンで胃がもたれたから、今日はコーラでいいかとも思ったんだけど、
「ジャズだぜ?」って俺が言うから(笑)
心の中の俺が
今日の1組目はThe Timeless Nation。
沼澤尚さんのドラムを見たくて行ったんだけど、
結局このグループ自体がめちゃくちゃよかった。
▲沼澤尚さんは豊本に似てるよの図。
とよもっちゃん沼澤さんの最初のプレイが、リムショット(太鼓の淵をカチッて叩くやつ)で、
その音が凄い理想的な綺麗さで!
10代の頃やってたバンドのボーカルが、「今のリムショット凄い良い音だったね!」とか言ってくれて「マジで?」とか言って、
「何かに似てる音」が出たり、「誰かに似た演奏」をしては、一緒にはしゃいだ。
つまりそういう「いい音」を出したかった若いあの頃の私達が理想とする最高のクローズド・リムショットだった。
そんなことを思い出すエモいリムショットだった。
一曲目は、ボーカルを同機でループさせて、なんかアイルランド民謡みたいな民族的な雰囲気で、
徐々に熱量が上がって行って、3人とも凄い演奏で、「これってモントレー・ジャズフェスティバルとかで聴くレベルのやつじゃない?」とか思って、でも俺は別にモントレー・ジャズフェスティバルのことを何も知らないし、アイルランド民謡のことも知らないし、豊本のこともよく知らない。
だけど、3人の演奏が凄くて、会場は確実に沸いて、なんか「ふぉーー↑↑」とか言ってるお客さんもいて、俺はやはり半笑いで、冷静に自分に注意を払ってみたら、口が半開きで、なんかうす目を開けてて、目の前に写る映像がなんかブレていて、
「は、博多が壊れちゃうよ!」って心の中で思った。それくらい凄い演奏だった。
気づいたら40分のステージを、2曲で終えた彼ら。
凄かった。
凄く良いバンドを見た。
ありがとう。中洲ジャズ。
▼過去に一度見た沼澤尚さんのドラムのお話はこちらから。
ちょっと呆然として川のほとりで休む。
次の目当てのステージまで2時間以上あるから、ラーメンを食べた。
いつものラーメン屋に行こうと思ったが、なんか気が向いたので、初めて長浜ラーメンの店に入った。
一口目、「ちょっと薄いな」って思った。
けど、食べてたら「なんだこれ?うまいな」って思った。
博多の豚骨ラーメンとは似て非なるものだった。
博多に住んで13年。なぜかこれまで食べてこなかった。
なんか、洋食のスープっぽい?これで他の料理も作れそうな上品なスープだった。
私はあまり替え玉しない派なんだけど、おいしかったからトライしてみた。「バリカタ」ではなく「なま」って言うんだって、長浜ラーメンは。
「硬さはー?」
「なまで」
なんか自分が福岡の人っぽいと感じて嬉しかった(笑)
◾️もうこのまま最後まで書きます。
美しいなー。あの赤いとこには何があるんだろね。
次の見たいステージまでまだ時間あるし、中洲ジャズのわちゃわちゃした雰囲気を感じに来た。
ちょうどステージのシンガーのお姉さんが「ものは言いよう(What's a wonderful world)」を歌うところだったので一曲真面目に聴いた。
今日は一番大きいメインステージで、水谷千恵子さんとか、CHEMISTRYとか、佐藤竹善さんとかが出る。
ちょっと見たいけど、たぶん人の量がヤバいだろうし、疲れるだろうからやめた。
今回はそういうネームバリューのある方じゃないジャズの人を見よう。
夕べ見たTOKUさんのステージへ。
30分くらい立ったまま待って、見やすい場所を確保できた。
日中に見たThe Timeless Nationの3人も参加するとのことで、期待感に満ち溢れていた。
ドラムのチューニングを始める沼澤尚さん・・とよもっちゃん。
凄くいい音楽だった。
キーボードの方のソロもセンスがいいし、とよもっちゃんは、ずっと「みんなの憧れ」みたいなドラム叩くし、TOKUさんの歌声は唯一無二だし。
最高だった。
最後の曲が「セクシーなのに暖かい」という、私が今まで感じたことのない音楽で、不思議な心地よさだった。
曲だけとれば、マーヴィン・ゲイとかのようでもあるけど、TOKUさんの優しい歌唱と暖かいオーラが似て非なるものにしている。
ん?
これか
博多の豚骨ラーメンとは似て非なる長浜ラーメン。
なんだこれか〜〜
なんか凄い楽しい2日間だったな。
音楽は雄弁に語るね。
あまりに雄弁に語るもんだからついつい語り合ってしまった。
ありがとう中洲ジャズ。
来年はパンフレットとかTシャツとか買うばい
タダで見せてくれてありがとーーー
またね〜〜
◾️今日のとよもっちゃん
彼らの初期のコントは見てて恥ずかしくなる。
それは俺たちのことだから。
「恥ずかしい」とか「気まずい」とか「イタい」とか。
そんな「すべての俺たち」の青春を切り取った素晴らしいコント。