では、気を取り直して、旅行記の続きを…。
【佐渡とは海でつながっている】
「それにしても佐渡に二泊もされるとは珍しいですね」
「そうなんですか?」
「ええ、大抵は日帰りのお客さんばかりなので」
「そんなものなんですかね。とてもいいところなのに日帰りなんて勿体ない…」
新潟佐渡旅行も三日目。
昨日に引き続き、同じ運転手さんと一日貸切の契約を交わした。
理由は先にも書いたとおり、この運転手さんの誠実な仕事ぶりに感激したからである。
佐渡を訪れた理由は「北雪の蔵を訪ねること」と「真野御陵を訪ねること」の二つ。
私としてはその二か所だけ行くことができるだけでも大満足だった。
が、はるばるやってきた佐渡である。
運転手さんはガイドブックを片手に、佐渡の観光地をあちこち紹介してくれ、我々がそこに興味を示すとケータイで連絡を入れ、我々がスムースに観光できるよう尽力してくれた。
「ところでホテルの料理はいかがですか?」
「いや、それがですね…」
同じホテルに二連泊したのだが、このホテルが「昭和のニオイ」漂う、ホテルらしいホテルであった。
おそらくゴールデンウィークの忙しい時期だけ臨時に雇われた人なのだろうが、客室係のオバサンがとても素人じみていて、夕食の配膳のタイミングが滅茶苦茶であった。
しかし、それはそれで旅のオマケとして楽しめる範囲であると思うのだが、酷かったのが料理である。
目の前には日本海が広がっているというのに、この「冷えた唐揚げ」はどうかと…。
「この唐揚げって、近所にあったAコープの総菜なんじゃないの?」と二人して苦笑いするしかなかった。
しかも夕食の内容が二日ともほぼ同じだったことにも興醒めした。
「これはあんまりだな~」と旦那が追加料理のメニューに「アワビの姿焼」があったのでそれを注文すると「すみません、アワビがありません」との返答が。
やはり苦笑いをするしかなかった。
ホテルの食事で一番印象に残っているのが、デザートのつもりなのか冷凍の柿がゴロンと皿に乗ってきて運ばれてきたことである。
「え?何、これ???」
「これをどうやって食べろと???」
この冷凍の柿は「おけさ柿」という佐渡の名産だというのは運転手さんに聞いて初めてわかった。
私は元々、柿が苦手なので手をつけようとも思わなかったが、柿好きの旦那ですら無造作に、しかも冷凍されたカチカチの柿に手をつけることはなかった。
「本当に佐渡の美味しいものを味わうんでしたら、民宿を利用された方が良かったかもしれませんね」
「ええ、せっかくの佐渡なのに、佐渡の美味しい魚介類を頂けないなんて」
「では、今日のお昼は魚介類が頂けるお店にお連れしますよ。お気に召すかどうかわかりませんが」
我々がホテルの食事に興醒めした話をすると、運転手さんは馴染みの店に連絡を取ってくれた。
佐渡滞在最終日にしてようやく、日本海獲れの新鮮な魚介類をいただくことができたのである。
タクシーの車内ではいろんな佐渡情報を教えてもらった。
日蓮ゆかりの地で五重塔が立派なお寺に向かう途中、「佐渡は『本間さん』という姓が多い」という話になった。
現に佐渡を代表する名家は「本間さん」だという。
「あれっ、『本間さん』って名字はこっちにもあるよね。しかも北の夕暮れ町の『本間』と言ったら、××地区(北の夕暮れ町の南部に位置する港町)の名字だよ」
「あ、そうだ言われてみたらそうだ!」
と我々は「本間さん」に反応する。
「そう言えば、空港からホテル向かう道すがら、同じ名字の板金屋さんがあったよね」
「多くはないですけど、○○さん(我々の名字)は佐渡にいますよ」
「ホテルの送迎係さんにも同じことを話したんですけどね、○○って名字は宮崎の名字なんですよ」
「ああ、そうなんですか?それは知りませんでした」
「でも、××地区に佐渡の名字の『本間さん』がいて、佐渡に北の夕暮れ町の名字の 『○○さん』がいるということは、北前船とかそういうので繋がってた可能性があるよね!」
佐渡と北の夕暮れ町、意外な接点を見出したことにちょっぴり嬉しくなった。
遠く離れた地とはいえ、航路で北の夕暮れ町と佐渡は(勿論、経由地はあるだろうが)繋がっていたのだろう。