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なんとも奇妙な映画体験をさせられる3時間だ。『ボーはおそれている』は、『へレディタリー/継承』(18年)『ミッドサマー』(19年)のアリ・アスター監督の新作で、今回もまた、彼の言う「家族という呪い」がテーマになっている。ホアキン・フェニックス演じるボーは、気の小さい怖がり症の中年男性。母親が亡くなったとの知らせを受けた彼は葬儀のために実家に向かうが、その道中でとんでもない目に遭いまくる。これでもか、これでもかというほど酷い目に遭いまくる姿はむしろ滑稽。それが本作の狙いでもあり、彼が味わう地獄の道中を追体験させるための、あえての長尺とも考えられる。いや、絶対にそうだろう。しかも、前2作と合わせての集大成的意味合いも、この3時間には込められているのではなかろうか。それだけに、アリ・アスターの描く「家族という呪い」にはもうお腹いっぱい。次はまったく異なるテイストを味わわせてもらいたいとも思っている。ちなみに、描かれる世界は最悪ながら、眠くならずに3時間完走したとの充実感も味わえた。