WWE「サマースラム」は “スピンオフ”レインズvs“新メンバー”シーナの「ワイスピ」対決! | プロレスライター新井宏の「映画とプロレスPARTⅡ」

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週刊プロレスモバイル連載「週モバロードショー~映画とプロレス~」延長戦!

今年の夏は、プロレスラー映画祭りなのである。7月29日にはザ・ロック製作主演のアドベンチャー『ジャングル・クルーズ』(20年)、8月6日にジョン・シーナ『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(20年)、13日に『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(21年)が日本公開。なんと3週連続で、プロレスラーが重要な役割を果たすハリウッド大作が日本の映画館で上映されるのだ。しかもシーナは2週連続で、両作品とも珍しく悪役である。

ヒーローを演じるのが当たり前だった俳優シーナの転機とも言える状況のなか、彼自身もプロレスのリングにカムバックを果たした。これをもってプロレス本格復帰とは考えにくく期間限定の可能性もあるだろうが、7・18「マネー・イン・ザ・バンク」でメインのユニバーサル王座戦に出現、エッジを破り王座防衛のローマン・レインズの前に立ちはだかり、無言でYou can’t see meのポーズを見せつけた。翌日、ダラスでの「ロウ」、それから4日後のクリーブランドでの「スマックダウン」には番組の冒頭に登場。「ローマン・レインズに『サマースラム』で挑戦するために戻ってきた」とアピールし、正式に真夏の大一番でのタイトルマッチが決定した。

レインズが王者で、シーナが挑戦者。映画出演の連続で長らく留守にしていたシーナだが、ベルトを奪えば4年半ぶりの王座戴冠となる。WWE王座を17年1・29「ロイヤルランブル」でAJスタイルズから奪い、同年2・12「イリミネーションチェンバー」で6人同時に闘いブレイ・ワイアットにベルトを奪われていたのだ。今回は、それ以来のタイトル戦線復帰となる。

テレビ的には8・21ラスベガスでの「サマースラム」がいきなりのカムバック戦となるのだが、7・23クリーブランドでのダークマッチでレイ・ミステリオ&ドミニクの親子と組み、ウーソズ(ジェイ・ウーソ&ジミー・ウーソ)&レインズのザ・ブラッドラインと対戦している。20年3・26「レッスルマニア36」での謎すぎるファイヤーフライファンハウスマッチ(vsブレイ・ワイアット)を試合とカウントするのならばそれ以来の試合だが、カウントしない場合は19年1・14「ロウ」でのユニバーサル王座挑戦者決定フェイタル4WAYマッチ以来。やはり、ユニバーサル王座戦にはチャレンジする理由があったのだ。

7・23以降も、シーナはダークマッチや再開されたハウスショーでリングに上がっており、レインズとの前哨戦も重ねながら試合勘を取り戻しているのだろう。それだけに、「サマースラム」でのユニバーサル王座戦には期待がかかる。同大会ではWWE王座戦としてボビー・ラシュリーにゴールドバーグが挑戦。WWEの2大王座がレギュラーvs特別参戦の大物で争われる。WWE王座、ユニバーサル王座とも似たような図式だけに、シーナとゴールドバーグが比較されることもありそうだ。

レインズ&ウーソズというファミリーとの対戦を繰り返している現在のシーナ。レインズvsシーナのユニバーサル王座戦は、強引にこじつければ、『ワイルド・スピード』対決にもなっている。

王者レインズは『ワイルド・スピード』シリーズのスピンオフ作『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(19年)に主演ドウェイン・ジョンソンの推薦で登場、映画のなかでもファミリーが共闘し、レインズが本格ハリウッドデビューを果たしたのだ。

今回対するシーナは、ロック様に代わりシリーズの新キャラクターとして登場。ヴィン・ディーゼル演じるドミニクの実弟ジェイコブを演じ、一般市民大迷惑な兄弟喧嘩をおっぱじめるのである。

映画俳優としてすっかり浸透したシーナではあるが、やはり本職はプロレスラー。それだけに、格闘シーンはお手の物だ。英国エジンバラで勃発するディーゼルとの一騎打ち。ディーゼルが空中スピアを見舞い、壮絶な闘いが展開される。水車落としやブルドッキングヘッドロックなど、プロレス技を駆使するのはむしろディーゼルの方だが、両者流血に見舞われ決着はつかず。ディーゼルにはほかにも筋肉ポーズからダブルエルボーを投下するというプロレス技的な場面も用意されている。そしてシーナは、車上をリングにしてのスリリングこの上ない大バトルを展開。今回はヒールのシーナとはいえ、レギュラーになるのならば今後の役回りはどうなるかわからない。なにしろ死人がよみがえったり昨日の敵が今日の友になるようなシリーズだけに、なにが起こっても不思議ではないだろう(次作がラストと言われてはいるが…)。「ワイルド・スピード」シリーズで将来もっとも見たいのは、ホブス役ドウェイン・ジョンソンとジェイコブ役ジョン・シーナのスクリーンでの対決だ。

それにしても、なにがどうしてそうなるのかよくわからない展開ながら、2時間23分の長尺をまったく感じさせないのはたいしたもの。カート・ラッセルやシャーリーズ・セロンの贅沢な登場のさせ方に面くらい、セロンとシーナの対峙にはゾクゾクさせられた。シーナ演じるジェイコブと若い頃を演じた俳優がよく似ているのも驚いた。ただし、大御所ヘレン・ミレンの「ドミニクとジェイコブは背丈が同じくらいで感じも似ていた」という台詞には異議あり! ちなみに、UFC世界ヘビー級王者フランシス・ガヌーや英国出身のボディビルダー、マーティン・フォードも本作に出演。そのうち『エクスペンダブルズ』シリーズみたいになってくるのではないかと要らぬ心配をしてしまう。

とにもかくにも、8・21「サマースラム」でのレインズvsシーナがどうなるのか? それがやがて映画でのロックvsシーナに発展するのか。もちろん、このカードはリング上でも大歓迎である。

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