今週のもう一本!「アメリカン・ユートピア」(20年) | プロレスライター新井宏の「映画とプロレスPARTⅡ」

プロレスライター新井宏の「映画とプロレスPARTⅡ」

週刊プロレスモバイル連載「週モバロードショー~映画とプロレス~」延長戦!

公開から2ヵ月以上経っても異例のロングランを継続。ライブドキュメンタリー映画としてはとんでもないヒットになっている『アメリカン・ユートピア』。元トーキングヘッズのフロントマンであるデヴィッド・バーンによるショーの映像化が映画としておもしろいのはもちろん、やはりライブ映画の金字塔として君臨する『ストップ・メイキング・センス』の影響がいまだに根強く残っているということなのだろう。実際、筆者が鑑賞したTOHOシネマズ日本橋では当時を知るような世代を中心に、平日とは思えないほどの観客が集まっていた。また、新型コロナ禍で長引くエンターテインメントの停滞状況により、ライブ欲が高まっている事実も見逃せない。せめて映像でもいいからライブを楽しみたいという欲求が高まっているのではなかろうか。この作品を見ていると、コンサートを当たり前のように見られた時代が妙に懐かしくさえ思えてしまう。観客席が映るたびに「密!」と思ってしまうのはこの時代だからこそ。とはいえ、名曲「road to nowhere」に突入するシーンの多幸感と言ったらない。舞台そのものは一切の無駄を省いたシンプルそのものながら、内容はド迫力。その魅力をさまざまな角度から伝える映像がいい。鑑賞から数日経っても、アタマのなかでは「road to nowhere」がエンドレスで鳴り響いている。

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