朝日座 | やまちゃんの映画館ブログ

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ごく普通のサラリーマンが、全国にある単館映画館のご紹介をするブログです。是非ご覧ください。

細々とブログを始めて10年が経過した山田です(久しぶりの更新になってしまいすみません)

 

年末に映画「浜の朝日の嘘つきどもと」の舞台になった福島県南相馬市の『朝日座』に行ってきました。

 


初訪問したのは、今年の12月12日すると...。

 

 

入り口に張られている紙に12月朝日座開館予定日の文字

12月は7日、14日、21日、28日11:00~14:00が見学できるとのこと。

せっかくの機会なので、再訪問することに

 

 

建物横のショーケースに書かれていた『朝日座』についての記事を要約すると、歴史は古く「旭座」として1923年7月2日に開館。おそらく近くに南相馬市旭町という地名があるので、そこからとった名称かと思われます。当時は芝居小屋兼常設活動写真小屋として営業していたそうです。

1951~52年頃『朝日座』に名称を変更し営業を続けておりましたが、1991年9月に閉館。理由はレンタルビデオの普及による観客数の減少と書かれていました。

その後、2008年NPO法人「朝日座を楽しむ会」発足。毎年数回上映会や寄席を行っております。

 

 

再訪問日の12月28日、最寄り駅JR原ノ町の地表は薄らと雪の後が残っていました。この数日前東北は日中でも氷点下が続くとニュースで流れてました。

『朝日座』は原ノ町駅から徒歩15分程度。「11時半頃伺います」と伝えておりました。

 

 

『朝日座』は私道の奥まった場所にひっそりと建っております。この雰囲気、島田にあった映画館『みのり座』によく似ています。

「こんにちは!拝見してよろしいですか?」と声をかけてドアを開けると、

 

 

入口を開けると折り鶴で書かれた歓迎の文字

他に1名お客さまがいらっしゃって、ご案内をされていました。

 

 

「写真は撮ってよろしいですか?」と伺うと「ご自由にお撮り下さい」と了解を頂きました。

ロビーを見学していると、「この辺、昔来たときのまま!」と先に来られたお客さまが入り口の。

閉館から30年経っているのに、昔と変わらない状況で維持しているのは大変なご努力だと思います。

 

 

「中をご案内しましょうか?」

声をかけていただいたのは、「朝日座を楽しむ会」の会長小畑さん。ショートメールのご連絡も小畑さんでした。

映画館のロビーに、電話室があるんですね。元々は緑の公衆電話が設置してあったそうですが、今の電話は支援者が調達した電話機だそうです。

 

 

 

劇場内広いですね。座席数は分からないけれど、200席はあるでしょうか。

はなだらかな傾斜面の昭和レトロの映画館です。

今は塞がれておりますが、当時は2階席もあって桟敷になっていたそうです。

 

 

スクリーンの裏側も案内頂きました。

舞台裏のような空間になっており、この写真には写っておりませんが寄席のめくりも置いてありました。

 

 

劇場左の扉を開くと地下の通路に繋がるさらなる小さな扉が。秘密基地みたいですね。

以前上映中は、地下を通ってトイレに行けたそうです。

 

ロビーに戻ると「せっかく来たんだから、映写室と2階席も観ていきませんか?」と小畑さん。

 

 

電話室脇の階段を映写室に向かって上っていくと

 

 

平成年度の書かれたロッカーが置いてありました。

 

 

中にはその年の上映作品資料や会計簿などがファイリング保存されていました。

朝日座創設からの大切な資料もここに保存されていました。

 

 

こちらが映写室。2機のフィルム映写機が並んでいます。

手前には35mmフィルムの切れ端もありました。

 

 

映写室の裏側は窓になっていて、昔はここから芝居の呼び込みを行っていたそうです。

壁が二重になっているのですが、外壁は後から手前に広げたそうです。『朝日座』の建物は、98年前から改築されずに残っているのがすごいですね。

 

 

映写室の隣には映写道具などが保存されている部屋がありました。

 

 

当時のままの映写道具がそのまま保存されているって貴重ですよね。

 

 

さらにその奥は、2階の桟敷席に繋がっておりました。

板の間の部分は、畳が敷かれており芝居や映画を鑑賞できたそうです。安全のために今は塞いでありますが、一番奥にのぞき窓が

 

 

2階桟敷からのスクリーンを覗いた所、かなり高さがあります。

ここまで小畑さんにフルアテンドして頂きました。本当にありがたいことです。

 

 

月に何度か建物をあけて地域のコミュニティ活動を行っているのは、建物の通気の為とおっしゃってましたが、少しでも『朝日座』のことを知って頂く為の活動なんだろうな、と思います。

 

見学後にコーヒーを出して頂き、もう少しお話をお聞きしました。

気になったのが、10年前の東日本大震災の時。建物は大丈夫だったのか伺うと、

原ノ町という土地は、地盤がかなり硬いらしく建物に大きな被害は受けなかったとのことでした。

ただ、2機あった映写機の1機は倒れたり、津波はすぐ近くまできていたとのことでした。

小畑さんの旦那様が、当時の記録を写真に沢山残しておりそれを見せて頂きましたが、あったはずの建物がそっくり無くなっており、津波の恐ろしさを改めて感じました。

その東日本大震災の地震から三ヶ月後、復興上映会in朝日座 映画「いつでも夢を」を無料で上映し、地域住民に元気を取り戻す活動も行っておりました。

 

『朝日座』は2015年に歴史的建造物としての価値が評価され、「国指定登録有形文化財(建造物)」に登録されました。このことについて触れると「タイミングも良かったんだと思います。昔からの建造物を残そうという風土が行政も意識をし始めた」とのことでした。

朝日座はあと2年で100周年を迎えます。

小畑さんは、「100周年までは頑張ってやるけれど、その後は若い人に引き継ぎたい。」ともおっしゃってました。

館内説明のお礼に募金箱に少しだけ気持ちを入れさせて頂き、100周年の時には、また伺わせて頂きますとお約束して、復興の町をあとにしました。

 

【朝日座】

訪問日時:2021年12月28日

鑑賞映画:-


住所:福島県南相馬市原町区大町1丁目120

HP:

 

 

 

オープン: 1923年9月

料金:上映作品により設定

スクリーン:1

上映形態:不定期にて年数回上映

~~                  ~~

 

今年も緊急事態宣言の影響であまり映画館には行けなかったけれど、

気に入った映画を箇条書きにしてみると

【洋画】

1.「ノマドランド」

  ノマドという言葉を初めて知りました。フランシス・マクドーマンドの熱演に共感。もっと注目されて良かったと思う。

2.「イン・ザ・ハイツ」

  ラテンミュージカルの傑作!移民たちの熱い思い・怒りをミュージカルに。

3.「ファーザー」

  観客をアルツハイマー患者のように錯覚させる描写テクニック。

4.「1秒先の彼女」

  台湾発 ワンテンポ速い女の子の不思議な世界。この作品日本人好みだと思う。

5.「マトリックス レザレクションズ」

  大好きなマトリックス18年ぶりの復活。監督が女性に性転換したせいかアクションはソフトになった気がする。

 

【邦画】

1.「ドライブ・マイ・カー」

 村上春樹短編小説の映画化。演出家と寡黙な女性ドライバーのロードムービー

 

更新が少なく恐縮ですが、よろしければ来年もご覧ください。  

皆様にとって来年が良い年でありますように!