とあるテレビマンが教えてくれたたった1つのこだわり | ロングテールの先っぽで

とあるテレビマンが教えてくれたたった1つのこだわり

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僕はインターネット急進過激派なので
テレビ局は早く潰れれば良いと思っていますし
もはや遺物であり、社会に取っての足かせだとも思っていますし
報道にしてもバラエティにしても品質はひどいですし
噂では1日の視聴率が通して一桁だった日もあったらしい
イッヒッヒッヒ、としか言いようがないけれど


それでも僕は、学生の頃、テレビ局に行きたいと思っていました。


1年目でテレビ局は軒並み落ちて
就職浪人をして何を好んでか2回も就職活動をしました。
超絶面白いバラエティー番組を作りたいと思ってました。

2年目に日本テレビの最終一歩手前まで進んだのですが
最終一歩手前というのが、一夏かけて番組を作るって言う強烈な試験だったわけです。

それは信じられないくらい濃密な夏でした。

その時、一夏かけて僕らにテレビを教えてくれた先生は、
誰もが知っているある番組を作った伝説のディレクターでした。
この人については以前にも何度かこのブログで書きました。

今日はその人の話ではなく、この先生が授業の一環で呼んでくれた
とあるプロデューサーの方のお話です。

この人はテレビにもチラホラ顔を出す人なので僕も顔は知っていました。
僕と同じ立場の生徒の中には、その人を崇拝している奴もいて
そいつの目ん玉なんかは完全に血走っていました。
そんなちょっとした緊張感に包まれながら彼の登場を待っていると
テレビで見たイメージよりは一回り大きく、黒くてガッシリした人が部屋に来ました。

ちょっと怖そうだな、なんて思っていると
タバコに火を点けて、その人はイメージよりもゆっくりと話し始めました。
話し始めると、なんだか急に話に引き込まれて
10分くらい経つと、なんだかやさしそうなおっさんに変わっていました。

テレビはラーメン屋と一緒だ、
と言っていました。

・どんなラーメンにするか考える
・ラーメンを仕込む
・ラーメンを作って出す

そして一番重要なのが
・お客に出すラーメンを食べる(味見する)

ことだと言っていました。

必ず味見をしろ。
放送した番組はお客さんと同じようにして見ろ。
これを力説していた事をハッキリと覚えています。

そして彼はその次に、僕の心に焼き付ける言葉を言いました。

「僕はね、これだけはテレビで絶対にやったら駄目だと思ってる」

どんな事があっても絶対にサンタクロースの正体だけは番組で言ったら駄目だ


これがその人の言葉でした。

もう10年も前だけど、その人がやっている二つの番組は今でも日テレの人気番組です。
言えば、絶対に知っている番組。
そんな人気番組を手がけて華やかそうな業界で働いて
面白ければ何をやってもよーし!

っていうイメージもありそうな人が
サンタクロースの正体だけは絶対にテレビでは言わない
ことを守ってる。

女性の裸でも、イジメを想起する演出でも、肖像権違反でもなく
サンタクロースの正体こそが守られるべきものだと。

最近、テレビの低迷がさんざん言われていて
インターネット急進過激派としては毎日酒盛りをしたい気分だけど
50年続いたテレビには、やっぱりコンテンツを愛する気持ち
コンテンツが人に与える影響を考える力が半端ないんですよね。

インターネットは「便利」な方から進歩してきたから
ともすると「愛」の方は苦手だったりして、
特にひどいのはインターネット方面でエンタメっぽいことをやってる人は
コンテンツへの愛よりも先にお金の事を考えちゃったりして。

そういう意味で、僕はオワコンのテレビ局に
インターネットが見習うべきところはすごくたくさんあると思っています。

インターネット業界で、はずかしげも無く
あのプロデューサーのような台詞が吐けないと
やっぱり人の心は動かせないんじゃないかなと思います。

奇しくもグーグルが今日新しいサービスを発表しました
そこの発表文面には「人の温かさ」を強調するところがいくつも見られました。
きっとインターネットはもっともっと「温かさ」が必要になってくるんだとうと思います。

テレビは最後にインターネットに温もりを教えて、
そして安らかに眠られよ。

まあでもあと20年くらいは大丈夫かな。

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