ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ) | <ムービーナビ> by映画コーディネーター・門倉カド

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犬好きには悲しすぎる。人間のエゴが露わになる、異色の動物映画。


2015年11月21日公開
監督:コーネル・ムンドルッツォ
出演:ジョーフィア・プショッタ
シャーンドル・ジョーテール 他


【賛否両論チェック】
賛:虐げられる犬の姿を通して、人間の醜さや身勝手さが次々と浮き彫りになり、胸が痛む。犬達の名演にも思わず脱帽。
否:犬好きにはキツいシーンも多い。カメラが始終ブレるので、若干の観づらさがある。パーティーのシーンは、画面が点滅して目がチカチカしそう。


ラブシーン・・・ほんの少しだけあり
グロシーン・・・殺害シーン等多数あり
アクションシーン・・・少しだけあり
怖シーン・・・後半は結構怖いかも



 悪法により、飼い主と引き裂かれてしまった犬が、野犬達と共に反乱を起こします。キャッチコピーは、「最愛の友から、身勝手な人類たちへ」。


 物語の舞台はハンガリー。音楽学校に通う主人公の少女・リリ(ジョーフィア・プショッタ)は、愛犬のハーゲンと共に、幸せに暮らしていました。そんなある日のこと、母親が再婚相手と一緒に家を留守にすることになり、リリは父親の下に預けられることになります。父親は大の犬嫌いでしたが、渋々リリとハーゲンを家に連れ帰るのでした。父親はハーゲンをトイレに閉じ込めてしまいますが、ハーゲンは夜中に遠吠えを始めてしまい、父親を困らせます。するとリリは、ハーゲンのそばでトランペットを吹いて落ち着かせると、自分もバスタブで寝ることにするのでした。


 ところが翌朝、アパートの他の住民からの通報を受け、保護施設の職員がやってきます。職員によると、
「『雑種犬を飼うには、別途税金を納める。』という規則が出来た。税金を払うか、犬を保護施設に入れるか、どちらかにして下さい。」
とのこと。父親の、
「元妻の犬だから、俺は知らん。」
という言葉を聞いたリリは、ハーゲンを連れ、密かに家出をすることに決めるのでした。家を抜け出し、ひとまず学校にハーゲンを連れてきたリリ。しかし、授業中にハーゲンが見つかってしまい、講師は激怒。リリはハーゲンと共に、退室を余儀なくされてしまいます。その後父親に見つかり、車に乗せられたリリ。父親はハーゲンを河原に捨てると、嫌がるリリを無理やり連れ帰るのでした。


 悲しみに暮れるリリは、暇を見つけてはハーゲンを探し回りますが、父親の目もあり、なかなか思うように探せません。一方、突然野良犬にされてしまったハーゲンは困惑。それでも偶然出逢った小型犬と共に、野犬が集まる空き地へと辿り着きます。しかしそこでも、翌朝になると保護施設の職員達がやってきて、次々と犬達を捕まえていきます。必死に逃げ回り、なんとか事なきを得たハーゲンでしたが、今度は浮浪者に捕まり、闘犬のバイヤーに売られてしまいます。その後、闘犬家に売られたハーゲンは、“マックス”と名づけられます。そして、薬物投与と過酷な調教を繰り返されるうちに、ハーゲンは次第にその優しかった心を失っていってしまうのでした・・・。


 1頭の犬の健気な姿を通して、人間の強欲で醜い一面が、次々と描かれていきます。保護施設の職員から助けてくれたはずの浮浪者が、実は自分のことしか考えておらず、ハーゲンをお金と引き換えに売り飛ばしてしまったり、保護施設の女性職員が、
「犬の処分はしていない。」
と言っていたのに、実際は犬の見た目で処分する犬を決めて指示していたり、人間のエゴがこれでもかと表現されています。そうした人間達に虐げられていくうちに、次第に変わっていってしまうハーゲンの姿が、とても痛々しく映ります。


 非常に重たいテーマの本作ですが、思わずそんな気持ちになってしまうのも、ハーゲンを始めとする犬達の〝演技力”のたまものです。全く違和感がないというか、ふとした表情や仕草まで、細やかな感情が伝わってくるようで、まさに演技派です(笑)。犬達の渾身の名演技にも要注目です。


 決して明るいお話ではありませんが、最愛の友との絆について改めて考えさせられる、そんな作品です。グロシーンが思いのほかあるので、その点だけお気をつけ下さい。



【ワンチャン・ポイント】
※今回はお休みです。


オススメジャンル&オススメ度・・・<ハラハラしたい>


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