レインツリーの国 | <ムービーナビ> by映画コーディネーター・門倉カド

<ムービーナビ> by映画コーディネーター・門倉カド

観たい映画に迷った時は、このムービーナビをご活用下さい。現在公開中の映画の中から、目的や好みに合わせた映画を探せます。

※「声に出して読みたい映画のセリフ in 2018」 4月8日発売♪

障がい者の苦悩と、健常者の苦悩。奇跡の出逢いが描く、一筋の希望。


2015年11月21日公開
監督:三宅喜重
出演:玉森裕太・西内まりや・森カンナ 他


【賛否両論チェック】
賛:障がいを抱え苦しむヒロインが、彼女と真摯に向き合い続ける主人公と出逢い、少しずつ変わっていく様子が感動的。主人公のひたむきな姿も印象に残る。また、障がい者に対する理不尽な言動の実態や、障がい者自身の心の壁など、改めて考えさせられる描写も多くある。
否:2人がブログで出逢ったりする辺り、現実味はあまりないかも。恋愛に興味がないと、どうしても退屈してしまいそう。


ラブシーン・・・ほんの少しだけあり
グロシーン・・・なし
アクションシーン・・・なし
怖シーン・・・なし



 有川浩さん原作小説の、実写映画化です。1冊の本がきっかけとなり、感音性難聴の女性と出逢った主人公を描きます。主演は玉森裕太さんと西内まりやさん。


 主人公・伸行(玉森裕太)は、大阪の出身。里帰りした際、部屋の片付けをしていた伸行は、高校時代に読んでいた本「フェアリーゲーム」の上・中・下巻のうち、下巻だけがなくなっていることに気がつきます。どんな結末だったか思い出せず、いてもたってもいられなくなった伸行は、タブレットで検索。すると、フェアリーゲームについて書かれたブログに辿り着きます。ブログのタイトルは「レインツリーの国」。そこには、下巻で予想外の展開に裏切られる衝撃と、結末に対する率直な想いが綴られていました。その内容は、伸行が高校時代にフェアリーゲームを読んで感じた気持ちと同じで、彼はブログの管理人“ひとみ”に、親近感を覚えるのでした。


 東京に戻った伸行は、その気持ちを伝えようと、“ひとみ”にメッセージを送るべく、彼女のブログへの共感と、自身のフェアリーゲームへの想いをしたためます。長々とした文章に、我ながら送ろうか迷っていた伸行でしたが、勢い余って送信ボタンを押してしまうのでした。しかしその後、“ひとみ”からの返信はなかなか来ず、伸行はヘコみます。それでも翌日の会社帰りの電車の中で、タブレットをチェックしていたところ、遂に“ひとみ”からの返事が来て、伸行は舞い上がります。その後、何度もメッセージのやり取りをするうちに、伸行は“ひとみ”の奥ゆかしさに、次第に惹かれていくようになっていくのでした。しばらく経った時、伸行は思いきって、
「会ってみいひん?」
とメッセージを送ります。ところがそれから、返信はバッタリと来なくなってしまい、伸行は再びヘコんでしまいます。そのまま数日が経過し、諦めかけたその頃、ようやく彼女から、オッケーの返事が来るのでした。


 待ち合わせ場所は、本屋のフェアリーゲームが置いてあるコーナー。伸行が着いてみると、そこにいたのはヘッドホンをした清楚な女性。彼女こそが、レインツリーの国の管理人“ひとみ”こと人見利香(西内まりや)でした。早速ランチに出かける2人でしたが、伸行が探しておいた店に入ろうとすると、利香は
「もっと静かなところがイイです。」
と言い出します。結局、味もそこそこのすいている店を探し、2人はランチを楽しみます。しかしそこでも、伸行の質問に全然関係ないことを答えたりする利香に、伸行は戸惑います。その後、映画を観ることになりますが、そこでも利香は、
「洋画の字幕版しか観たくないです。」
と譲らず、伸行を困らせます。結局、大して面白くもない洋画を観た2人。自分勝手な利香に、伸行は次第にイライラを募らせてしまうのでした。


 そして映画館からの帰り道、とうとう事件が起きてしまいます。混雑するエレベーターに2人が乗ろうとしたところ、重量オーバーのブザーが鳴ります。伸行はすぐに降りますが、利香は何食わぬ顔で乗ったまま。
「なんで降りないの!?」
とエレベーター内の雰囲気が険悪になる中、慌てて利香を降ろした伸行。元々曲がったことが嫌いで、思ったことはハッキリ言う性格の彼は、
「“ひとみ”さんが、そんな自分勝手な人だったなんて思わんかったわ!!」
と怒りをぶつけます。すると彼女は、
「ゴメンなさい!!」
と頭を下げます。その耳元には、補聴器が光っていました。突然のことに動揺する伸行。利香はそのまま、泣きながら走り去ってしまうのでした・・・。


 〝感音性難聴”という障がいに苦しみながらも、初めて心を開ける人と出逢い、ぶつかり合いながらも少しずつ前向きに変わっていく利香の姿が、健気で感動を誘います。そして、そんな彼女の辛さを知り、時に戸惑いながらも、自分の意志で彼女と向き合っていこうと努力し続ける伸行もまた、非常にカッコイイです。イメージとしては、半身不随と記憶障害を抱えた女性を描いた、「抱きしめたい 真実の物語」に近いものがありますね。


 そしてもう1つ忘れてはいけないのが、障がいを持つ人と社会の向き合い方。本作でも、その障がいゆえに職場で陰口を叩かれたり、ひどい時には暴力を受けたり、担当の上司ですら内心面倒臭がっていたりといった描写が出てきて、胸が痛みます。一方で、障がいを持つ人自身も、健常者との関わりを自ら閉ざしてしまったり、他人の好意を〝同情”と卑屈に捉えてしまったり、自分をさらけ出すことが出来なかったりといった姿も描かれ、思わず考えさせられます。勿論フィクションなので、極端な例だとは思いますが、それでも私達自身が自らのこととして向き合う必要があることだと感じます。


 それにしても、2人が実際に会うまでのメッセージのやり取りの中で、西内まりやさん演じる利香の、
「私、そんなにキレイじゃないですし・・・」
っていうセリフには、思わずツッコミたくなってしまいますね(笑)。


 ラブシーンなんかもほぼありませんので、デートでは勿論、家族や友人等大切な人と一緒に、是非ご覧になってみて下さい。



【ワンチャン・ポイント】
※有川浩さん・・・本作の原作の方。「図書館戦争」の原作でもお馴染みですが、他にも「県庁おもてなし課」や「阪急電車 片道15分の奇跡」等が実写映画化されています。来年には「植物図鑑」も実写映画化されますので、そちらも期待大ですね。


※森カンナさん・・・本作では、主人公の会社の同僚・ミサコ役。映画では「しあわせのパン」での女性客役や、「太陽の坐る場所」での性悪同級生役、「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦」での謎のパイロット役、そして「HERO」での被害者役等で出演されています。今後は田中圭さん主演の「劇場版 びったれ!!!」や、藤原竜也さん・有村架純さん主演の「僕だけがいない街」等にも出ていらっしゃるそうで、これからもその幅広い役柄に要注目です。


オススメジャンル&オススメ度・・・<デートで観たい>A


「映画の通信簿2014」発売しました!!
Amazon限定販売ですので、「映画の通信簿2014」で検索下さい♪