量子コンピューター

理化学研究所 2025,4,22

 

量子力学の理論を応用した次世代の計算機。従来のコンピューターは計算前に0か1のどちらかのビットを規定する必要がある。一方、量子コンピューターでは、量子力学における「量子重ね合わせ」という特性に基づき、0と1が重ね合わさった状態を利用して並列計算することで速度の向上を狙える。複数の方式が存在するが、膨大な組み合わせから最適解を見つけ出すことに特化した「アニーリング方式」と汎用計算機の「ゲート方式」が代表的。アニーリング方式はカナダのD-WAVEやNECが開発し、応用も進んでいる。ゲート方式は米IBMや米グーグルなどが研究しており、将来的な社会実装が見込まれている。

 

量子コンピュータはすでに開発されており、実用化に向けた研究開発が進められています。IBMやGoogleなどの大手企業が開発に参入しており、クラウドサービスとして利用できるものも登場しています。しかし、実用化にはまだ多くの課題が残っており、完全な実用化には数年、またはそれ以上の時間がかかる見込みです。 

 

一方量子ゲート方式とは、いわゆる汎用(はんよう)型の量子コンピューターです。 従来のノイマン型コンピューターが使っていた「論理ゲート」の代わりに「量子ゲート」を使って計算処理を行うことから、量子ゲート方式と呼ばれます。

 

 

量子コンピュータは、量子力学の原理を利用した次世代のコンピュータであり、従来のコンピュータよりも高速で複雑な問題を解くことが期待されています. 量子コンピュータの実用化は、社会に革新的な変化をもたらす可能性を秘めています. 

 

 

量子コンピューターの実用化は、現状では2030年頃、あるいはそれ以降と予測されています。Googleは100万量子ビットを搭載した量子コンピューターの実用化を2029年に目指しており、日経クロステックによると、2030~2040年頃に実用化が進むと予想されています。ただし、技術的な進歩によっては、より早く実用化が進む可能性もあります。 

 

理化学研究所 2025

 

秋の夜が静かに更けていくころ、お庭の草むらでは、小さな小さなスズムシたちが目を覚まします。空には、まあるいお月様が、銀色の光をそっと降り注いでいました。

「リーン、リーン…」

耳を澄ますと、その光の中から聞こえてくるのは、透き通るような美しい歌声です。それは、草の葉の影に隠れているスズムシの男の子たちが、一生懸命に翅(はね)をこすって奏でる音楽でした。

スズムシたちは知っていました。この歌は、暑かった夏に「さよなら」を言うための歌。そして、ちょっぴり寂しいけれど、美味しい食べ物がいっぱいの秋に「こんにちは」を告げるための歌だということを。

その音色は、まるで古い絵本を開いたときのような、懐かしい響き。風に乗って運ばれ、夜空のずっと遠くまで溶けていきます。その歌を聞いた人は、誰でも心がすーっと静かになり、日々の忙しさを忘れてしまいます。

「ああ、なんて安らぐ調べだろう」

 

お庭の木々や、月明かりに照らされた石たちも、じっと静かにスズムシの歌に聴き入っています。

スズムシの音楽会は、秋が深まるにつれて、少しずつ、少しずつ、短くなっていきます。やがて、冷たい風が吹き始め、雪の妖精がやってくる冬になると、彼らの歌声は聞こえなくなってしまうでしょう。

 

けれど、大丈夫。

この一瞬一瞬の美しい歌声は、その夜、草むらを通りかかった人の胸の中に、まるで温かいお守りのように大切にしまわれるのです。

 

スズムシが教えてくれた「秋の調べ」。それは、季節が移り変わる美しさ、そして、心にいつまでも残る温もりの調べなのでした。そして、その温もりは、また次の夏が終わり、秋がやってくるまで、人々の心の中で静かに光り続けます。

塩で歯を磨く

 

朝食が終わり、洗面台の鏡に向かい、少年はアルミチューブから練り歯磨きを乗せたナイロンブラシを口に入れた。

その隣で、祖母のシワだらけの手が、そっと陶器の塩壺に伸びた。

「おばあちゃん、また塩?」

祖母は湯呑みで口をゆすいでから、軽く湿らせた人差し指に、粗塩をまぶす。ジャリッという音とともに指を歯茎に押し当て、マッサージするように丁寧に磨き始めた。

「こりゃ、昔からのやり方だよ。あんたらが生まれるずっと前からね。これでないと、なんだか歯が締まらねぇ気がしてねえ」

祖母の口元から、かすかに潮の香りが漂う。江戸から明治に続く習慣だと、母から聞いたことがある。塩には歯を白くする力があって、それに殺菌にもなるんだと。だが、学校では、定期的に歯医者さんが「練り歯磨きで、隅々まで磨きましょう」と指導していた。

少年は祖母の指先をじっと見た。指の腹に食い込んだ塩の粒が、光を浴びてキラキラと輝いている。それはまるで、遠い昔、海岸で拾った小さな貝殻のように見えた。

祖母がゴシゴシと磨き終えて、庭に水を吐き出す。祖母の歯は、少しくすんでいるけれど、その光沢は、練り歯磨きで磨いた少年の歯とは違う、どこか強く、健やかな白さに見えた。

「ほら、お前さんも、やってごらんな」

祖母は空になった塩壺の蓋を閉めながら言った。

「その甘ったるいのもいいけど、たまには海の白で磨くと、背筋が伸びるよ」

少年は自分の歯ブラシを握りしめたまま、その日の朝だけは、いつもの練り歯磨きを使うのをやめた。

 

祖母が立ち去った後の洗面台には、小さな塩の結晶が、ひと粒だけ残っていた。それは、祖母の古い習慣と、新しい時代に生きる自分とを、静かに繋いでいるように思えた。