あの頃はヘドロのように生きていた
--
導かれるように入った
「珈琲音楽」 下北沢の一角で
父の晩年に聴かせていた
ビル・エヴァンスのCDが
流れていた
Blue In Green
わたしの一番好きな曲
ジャズの ビル・エヴァンスの中で
父が導き入れたように感じた
色々なことが
父の遺した道標のような
チルチルとミチルが落としてゆく
お菓子の欠片を拾っているような
そんな気分で歩いている
この道である
--
店を出て
駅へと帰る道のり
色とりどりな店の連なりに
木製のピアノを発見した
女性が何気なく座り
通りすがりで耳に届いたのが
Moon Riverだった
ますます静かに驚いた
今わたしがアレンジの勉強で
取り組もうとしている曲だった
温かみのある
調弦の甘さで
ほどよく歪んだ
素朴な響きだった

--
もふもふと
死んだねこしゃんを抱きながら
母と、父の遺品を整理している夢を視た
珍しく わりとフランクに言葉を交わしていた
真っ白だったのであろう
もふもふなねこしゃんのお腹に
わずかな黄ばんだ染みが
小指でかすめた程度にあった
気持ちよさそうにわたしに抱かれて
かわいくて気持ちよくて
全然死んでないようだった
夢の中の設定で
現実とは違う、父のぽんこつおんぼろ車の
ポケットの中に押し込まれた消費期限切れの
山のようなカップ味噌汁の山を
ねこしゃんを抱きながらつまみ上げては
「ぎゃああこんなん捨てよ捨てよ」と
半笑いで母と仕分けしていた
楽しそうな自分であった
--
また次の日は
自分のオリジナル曲が流れる
リアルRPGの洞窟をくぐるような夢を視た
素敵な音響空間で
わりとリアルに自分の一番のピアノ曲が流れて
我ながら感動していた
--
父と母が今尚身近にいて
見守り、導いているように感じる
何にもスピリチュアルな世界を知らない視えない
わたしにしてはやはり
不思議な感覚ではある
--
父は天国で
我が敬愛して止まぬ作家 大崎善生に
会っただろうか
会ったらぜひ
友だちになって
一緒に将棋でも相手してもらったりしたら
わたしは嬉しい

