どうしていいかわからない
というのが、最終的な答えだった
時間が経った今でもそれは変わらなくて
冷静に思い返して整理しようとしても
まだ心が苦しくなり それ以上考える事は
難しいのだった
--
カラフルな後楽園のネオンが
車窓に映る自分の
レモンイエローのカットソーを通過して
一瞬ふわっと浄化された気分になった
人って視覚からでも
浄化されるんだな
--
電話をしていい相手は
親だった
してくれた心配、かけてくれた愛情に
齟齬があったとしても
たとえわたしを今尚
心配してくれる友人がいたとしても
困った時にダイレクトに
なりふり構わず心配をかけていい相手は
親だけだった
--
溜まってゆく
「お父さんあのね」
言えなかった
「お母さんあのね」
忘れていた悲しみが
遅れて届いた宅配のように
今頃、涙となって溢れた
思い出した事に対してだけでなく
ただ漠然と溢れるしかない涙が出た
--
いつか僕にも
毎日がただ清々しく
何も不安のない日々を送れている日が
来るだろうか
--
ある日突然、涙が止まらなくなっては
思いの丈を書き出して
頭が痛くなるまで泥のように眠る
この繰り返し
そうしてようやっと
少しずつ日常に復帰してゆく
自死や他殺を選ばないのは一重に
最期に両親先祖が残してくれたこの
体、魂、人生に対する誇り所以である
そうして生きなければならない人の
苦しみを思うと
肉体的な殺人より遥かに
精神的な殺人の方が罪は重いはずである
--
街が街ごと動くように、船が夜の闇に動いた
神戸港を一望できる窓に
綺麗に彩られた巨船が
ゆっくり、ゆっくりと横切ってゆく
横たわる海面に揺れる光の群は
地上にある光源より遥かに
輝きを反響させて
小さな点から大きな筋へと
姿を攪乱させながら
向こう岸からこちらへと
海面をゆらゆらと渡ってくる
--
生きていれば思いがけない素敵な事が
起こるのが人生だとしても
これから先の異性との出会いに於いて
その瞬間は中々訪れないだろうと
思っている
--
湯けむりが
飛行機の窓から見下ろす雲のように
勢いよく湯面から立ち上がっては
風に攫われて楽しげに姿を変えながら
夜空へ舞い昇ってゆく
重く膨れ上がっていた
子宮に沁み入る温泉の熱
まだ寒い弥生の夜風
--
最後に一度くらい
自分が心から大好きで
相手も自分を愛してくれる人に
抱かれておきたいと思うと
また苦しみと涙が込み上げて
床に蹲る体だった
--
木瓜の花 散りしいて 枯れて
寒波きて
だけど水やる 来春を待ち
忘れるから
思い出となる 記憶たち
死ぬからこその 生と似ていたり
木瓜の花 枯れ落ちた土に
今日も立つ
来春もまた 苦を忘れて咲け
--
苦虫噛み潰した顔で咲いてどうすんの
笑いながら咲きなさい
苦しい涙も忘れて
笑いながら咲きなさいよ
