父と娘と生死の境と | 森由 壱 - tune bride -

森由 壱 - tune bride -

... という 、夢を視ました 。


白い繭の中に包まむ

今はまだ 生々しく辛かった

あの日々のこと


救えても 救えてなくても

運命と

父は言いけり わかりました


なんとか台風到来前に

滑り込みで間に合った新幹線と救急車


連日 時には

雨風の中 ずぶ濡れになり

面会を 断る看護師を破って会ったり


呂律の回らず天狗のように真っ赤になり

オムツを丸出しにされて

酸素チューブにつながれて

あちこちの患者の呻き声の中で

見えてるのか見えてないのか朦朧とした目で

かろうじて手をふる父


引きちぎれそうな袋を引きずりながら

病院帰りのウェルシアがえり


父の倒れていたであろう床

色々と垂れていたであろう床を

裸で水拭きしたり


洗濯槽いっぱいにきれいに折り畳まれて

つめこまれていた洗濯物

回したあとに出てきた汚れたパンツで

父の老いを目の当たりにしたり


かかってもないコロナを理由に

看護師に

面会を断られるので

生死の境を彷徨う家族

唯一の家族が東京から駆け付けてすら

会うなと言うなら

死に際の人間を誰が見守り

生きろと祈ることができ

励ますことができるのか

これで死んだら

あなた方はそれに

どう責任を取るのかと

ぐちゃぐちゃの心で

言葉にできぬまま

病院であり命を預かっていることをいい事に

何か上から物申すような物腰で

頑なに面会を拒む説明を

冷たく述べる看護師に

目でブチギレながら


それならば一旦東京へ戻り

仕事道具を持ってこようと

台風で立ち往生する客を推しわけ

なんとか乗り込んだ新幹線も永遠に動かず

諦めてまた戻る炎天下


胸が引きちぎれそうになりながら

歩いた炎天下 渡った交差点


新幹線の中で契約した新たなwifi

父の入院先で書かされた

オムツや入院セットの契約書

何日間 〜日まで

そんなチェック欄

分かるわけないやろ


色々かかりそうなお金

計算したり


這々の体で駆け込んだカフェのお手洗いで

取り替えた血溜まりのナプキン

こんなに血が出ていても

痛みなんてなかった

火事場の馬鹿力なのかなと

感心していたり


言いしれぬ恐怖に泣くばかりのわたしに

カフェに置いてあった一冊の詩集が

また号泣させてきたり


退院したのが

当たり前のようにしてる父は

まるで当たり前のように生き


父のオンボロ物干しの

替わりに買った物干しも

父は使わず わたしをウザがり


金を渡すから

早く帰れと


挙げ句の果てに

わたしといると「余計に時間を取られる」と

捨て台詞を吐いて

呑みに行く始末


救急隊員と警察から

とりあえず息があり救急車で運んでいて

意識もあり病院もこれから探す、

見つかったと

その一連の報告を新幹線の駅へと向かう

電車内で聞いた時、どれだけ

神と彼らに感謝しながら

泣き崩れ落ちたか


なりふり構わずとは

あのことだと

思うくらい


父が退院したいとゴリ押して

予定日より早く決めた日も

どれだけ嬉しかったか


でも父は わたしといるのが

そんな事を経た後ですら

シンプルに嫌なのだった



馬鹿らしくなりにけり

どれだけ心配しようが

所詮変わらず


わたしと居たくない父は変わらず


アホらしくなり

家を出にけり

次に帰る時は父の弔いの時







そういう風に

思わざるを得なかった

この結果が

とても悲しく しんどく 虚しく



生きてと祈った人に

勝手に死ねとまで

思わせられたことが

本当にあほらしく


けれど









わたしにできることは

全てやりけり

後悔これでなし







呑まず食わず、立ちっぱなしで

腹を限界に空かせながら乗っていた新幹線


スーパームーンとあとで知りし

月がずっとぼくについてきていた

異常に清潔な白だった








家につき


吐きそうになりながら

泣きながら腹を立てながら

絶望しながら


いつ死のうと考えながら掻き込んだ

あの東京に戻った深夜のウーバーイーツの

納豆の味をぼくは忘れない














暗いなあ

この闇の色


繋ぐものなきこの凧


天へゆくも闇

海へ落つるも闇


光るにも

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