人は"イケナイコト"とそれを言う。
「ほっとけよ」とぼくは思う。
雄と生まれ雌と生まれ、人間だけが動物のように睦みあえぬ理が何処にある。
社会だ?掟だ?
クソ喰らえ。
と夜道に吐き捨てた昨晩の自分をすっかり忘れて、コピー機でスイスイとスキャンをかける抄子。
隣の男はちらちらと抄子の手元を見つつ、用が終わればまたデスクへと戻ってゆく。
ですよねぇ。
バタンとプリンターの蓋を閉じ、後ろを見るともうその男はいなかった。
(抄子のバカバカっ)
お尻をパンパンっと両手ではたきながら新たなスキャン対象物を床に置いた箱から取り出して、またプリンターに挟む。
いつだってそう。
いくら抄子が雌を豪語しようと、この白昼の如き照明に照らされた顕微鏡のパレットの上のようなオフィスで何ができよう。
抄子は、夜道で一人になるとやっと現れる素直な自分が、このコピー機の前では全く出せぬ事を、幸に思うべきか不幸に思うべきかを思考した。

