「桜、見たかったのにな...」
とぼとぼと夜の帰り道をゆく朱里。
ひんやりとした風に霧のような雨の予感。
「今日で散っちゃうじゃん。...翔のバカ!」
はらりと散る夜桜に、鞄から携帯を取り出して写真を撮る朱里。
カシャっ カシャ - ピンぼけした写真。
「夜だし..綺麗に撮れないし..翔とも見れないし」
朱里、半分涙目になって、
地面に転がっている缶を蹴り上げる。
カラン
「ってて!」
黒猫が暗闇に飛び上がる。
「にゃにすんだよおっ!」
驚く朱里。(猫が、しゃべった?)
黒猫と朱里の間に転がった缶を、黒猫がていっと朱里の方へ蹴る。
「おぃ!ゴメンくらいいえにぇえのか!」
また黒猫が朱里に向かって吠える。
「え...ええ〜〜〜!」
思わず怖くなって黒猫を突っ切って走り出す朱里。
近づいてきたコンビニに駆け込む。
「ハァ..ハァ...」
ちゃんと明るい店内と数人のひと気に安心して心を落ち着かせる朱里。
「な..何なのよあの猫」
漫画コーナーからこっそり外を覗く朱里。
暗くてよく見えない。
ピロリンピロリン- コンビニのドアが開く。
朱里「はあ。お花見もできないし、
猫はしゃべるし」
黒猫「にゃんか言ったか」
朱里「ぎゃあああああ」
ぎろりと朱里を見る客。
朱里の近くのコピー機にぴょんと飛び乗る黒猫。
黒猫「うるさいガキだな」
朱里「しゃ、しゃべってる!」
店員「お嬢さん、猫はちょっと」
レジから苦言を呈する店員。
朱里「ちち違います!わたしの猫では」
黒猫「お前のだぞ」
朱里「何言ってんの!..じゃなくてえ!」
店員、心配になって近寄ってくる。
店員「困るんですよねえ、ここ」
お湯ポットを黒猫から遠ざける店員。
朱里「だからわたしじゃないって」
黒猫「にゃあ!」
黒猫、コピー機から飛び上がり朱里に猫パンチをしてスタスタと外へ逃げる。
朱里「うぎゃっ..なにすんのよお!こらっ」
黒猫を追おうとする朱里。
店員「お客さん!忘れ物」
朱里が振り向くと店員が指差すコピー機の上に携帯。
朱里「え?」
携帯の着メロとバイブが鳴る。
振動でコピー機の上から落ちそうになる携帯を慌てて取って、
朱里「翔?..」
着信表記に『バカ翔』の文字。
朱里、店員に向かって「あ..ありがとうございました!」と言いながらそそくさと店を出る。
鳴り止む着メロ、携帯を眺めつつ歩く朱里。
霧雨が小雨に変わり、小走りで家につく。
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朱里「開け〜、ごま団子!」
がちゃりと鍵を開けて玄関になだれ込み、ぱちんと電気をつける朱里。
短い間とは言え服は濡れて気持ち悪い。
携帯を投げ出して服を脱ぎ、タオルで髪を拭く。
黒猫「電話にでんわ、にゃりか?」
朱里「ウギャアアアア!」
朱里、タオルを地面に叩きつける。
そのタオルをバサリと全身に受ける黒猫。
黒猫「にゃっ!!」
朱里、ぶるぶると震えていると
携帯の着メロとバイブが再び鳴る。
朱里「ひゃああああ何なのよ〜!」
よく聞くと翔の着メロなので慌てて携帯を引っ掴み、受話器ボタンを押して
朱里「しょ...翔?!助けて助けて」
黒猫、タオルの下からもぞもぞと顔を出す。
翔「朱里? 何?どしたの?」
朱里「ねねねね..猫があ!」
黒猫、朱里の部屋の台所にしゅたっと飛び上がり、食べ物を物色する。
朱里「ねね猫が..」
翔「猫? お前猫飼ってたっけ?」
朱里「そうじゃなくてえ!!」
半べそをかきながらへなへなとくず折れる朱里。
黒猫「これ食べてもいいかにゃ?」
黒猫、ふりかけ用のソフト鮭フレークのパックを咥えて朱里の膝にぽんと着地する。
朱里「とにかくうちにきてえ!」
そう言って朱里、気絶する。
翔「朱里??朱里〜???!」
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つづく。

