ゴミ箱を頭の支えにして蹲っていると、子宮の痛みも落ち着く。
換気扇の回る空気音、その奥から混ざる暖房の音。
貴方が_____でなければ、僕はふらりと胸に飛び込みそうだった。
ふとした瞬間に近づいた胸板から、それまでとは違う空気を受け取った時、不本意にも僕の頬は紅潮して僕自身とても戸惑った。
僕はかつて子宮に支配されて子宮に殺されそうになったあの日以来、体を開いた先の恐ろしさを身を以て学習している。
だから、貴方から離れた。怖かった。知らない間に僕は、貴方の前でワタシになりかけていたのだ。
垂れ流している仏教の説法が低く響く。
僕を少なからず気にかけてくれる人がいて、仮に僕がそれをアイだと勘違いしてしまって、その人が________だからと言って、僕はそれを避けなければいけない謂れもないし、その人を厭う理由にもならない。
もともと自然の摂理として、人の心は自由だと僕は思っている。
けれど、言葉の文法のように人間社会が規程してしまった善悪の枠。それに逸れた事で益を得たとしても、その対価として失い、或いは傷つけるものの多さはその分の相応を遥かに超えている事を、世を賑わす有象無象の恋愛殺傷沙汰を見て尚分からない程馬鹿にもサイコパスにも成りきれない。
僕はこれ以上其処にいると、貴方に子宮から愛されに行きそうだった。
僕の人生に於いてたった一つの掴みたいものがあるとして、貴方のアイに触れる対価としてそれを失ってもいいと思える程、僕は貴方の生き方に心から賛同してはいなかったし、又僕自身も貴方のアイを求めにゆくには大変幼なすぎると思った。
僕は今でも貴方の近づいた時の、胸板から伝わってきたあの空気感を覚えている。
あれが僕だけの勘違いだったとしたら、僕はいよいよアタオカだ。
これでよかったんだ。
僕は僕自身の、"貴方のいる場所"という執着から、
完全に離れたんだ。
写真引用:
