夢の中の
あなたは優しかった
ぼくを探しあて
後ろからそっと
両の手を握ってくれたんだ
誰でしょうとぼくに云う
あなたの声だとわかっても
ぼくは夢のなかでも信じられなくて
何度も何度も
感触をたしかめようと
握り返したんだ
あなたの手は
わたしが思っていたより
やわらかくて大きめで
かつての男の
白い手の感触を
想起させた
夢の中でのその手が
あなただとわかった瞬間
ぼくは何も云はずに立ち上がって振り返って
きみに抱きついたんだ
あなたはじっと
動かずにぼくに
抱きついた侭でいさせてくれたんだ
夢じゃなくてよかったのに
夢ならば
そのまま醒めてくれなくても
ぼくはよかったのかもしれないのに