寂しさを抱えて
生き終えていった母の
心に降っていた雨の音がする
寂しさ
誰にも分け合えない
人独りの心に抱くもの
どうして人は死ぬのだろうと
その時初めてその気持ちを知った
寂しさ
抱えながらも
生き終えるまで
わたしには笑顔で
なんとか母を貫いた__ちゃんの
心に降っていた雨の音
どんなに独りでも
この雨の音はひとしく
わたしの心にも
聞こえております
貴方が抱えていた
わたしに言えなかった
本当は言ってみたかった
こぼしてみたかったでしょう寂しさの音は
今はわたしも
聞こえているような気がしております
__ちゃんと
生前呼ぶことは勿論ありませんでした
貴方は立派な
尊敬に値しすぎる賢母でしたし
或いは
髪を振り乱して娘を𠮟咤する
半狂乱の母でもありました
貴方は
お母さん お母さんと
頼られ 或いは怖がられ
独りで 或いは父と
迷いながら 覚悟を決めながら
母として 色んな甘えを押し殺して
ここまでわたしを育て上げたのですね
未だに貴方のように
一人前になったとは思っておりませんが
貴方の寂しさを
生前に分かち合いたかったと
振り返られるくらいには
オトナになったつもりです
貴方の心に降っていた
雨の音
今日も いつも
すぐそこ
手を伸ばせば届くような距離で
或いは
覆い尽くしてしまうような大きさで
聞こえております
ひたひたと 或いはざああ ざああと
わたくしの友も わたくしのかつての知人も
さうやって母になってゆきます
母になる苦しみと喜びと
貴方は最後の瞬間
どちらを多く感じて
生き終えたのでしょうか
わたしには
その答えが
知りたいようで
知るのが怖いくらいです
ですが
けして貴方が
寂しさや苦しさだけを感じ残して
幕を閉じたのではないことを祈って
今日も明日も明後日も
いつかわたしも貴方のような母になる時が来た時の為に
この雨の音を
ずっと胸から離さないで
抱いていようと思うのです。
画像:https://www.youtube.com/watch?v=JAVaT86SvVk
