わたしの心には大きな穴がある
その穴がいつも何かを吸っている
乾いたスポンジ
乾燥ワカメ
ティッシュ
排水溝
ぴったりな表現が思いつかない
上記のそれらよりはもっとえげつのないもの
人の幸せを吸う何か
人の不幸も喰う何か
紫と緑と黒い渦
湿って冷たい空気の渦が
ゴオオオ
と潜んでいる
そいつはよく食べる
そいつはよく怠ける
ゴオオオ
いつもそいつのノイズが
わたしの角膜のすぐ裏にまで響いている
自分でも懐柔できない渦の存在が
わたしの視界から全てを蝕む
自分も 相手も
世界も 内面も
わたしとその穴は切り離せない
浸触しきったガン細胞のように
もう取り出すことも洗い出すこともできない
存在の地図がそもそもない
MRIに写らない
自在に分布を変えている
どのHzに合わせたら 奴と交信できるのかも
そいつの名前は ブラックノイズ
わたしはそいつと共に息をしている
わたしの視界にも
聴覚にも
声にも 感傷にも
どんなエフェクターを以ってしても
消しきれないブラックノイズが
執拗にビルの崩落を促す振動のように
虎視淡々とわたくしの崩壊を狙っている
出たいんなら出てきやがれ
わたしの皮をかぶった
バケモノヤロウ
まるでわたしであるかのように
黒色の負を叫ぶな
お前が呼ぶ同類の不浄が
美しいものも汚物にする
清くなれ
ブラックノイズ
そんなことは不可能だと分かっていても
お前の叫びがいつか成仏することを
常日頃祈っている。
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