共存感 | 森由 壱 - tune bride -

森由 壱 - tune bride -

... という 、夢を視ました 。



みんなが好きなものを共有することと
自分が好きな世界を共感してもらうこと

この2つがバランスよく成功すれば
人は何かしら満足に生きていける

孤独感を抹消するのに
常に誰かと愛し合う必要はなくて

誰かとつながっている感じは
たぶんそういう直接的なものだけではなくて

同じ空の下にいること
昨日偶然同じ場所にいたこと
これから食べるカレーが誰かも美味しいと言っていたこと
同じ音楽が好きだということ

似たような悩みを抱えていること
同じような境遇であること

冗談が通じあうこと
対話がはずむこと
扶けあえること

そんな日常の積み重ねで
間接的に得られるものも沢山ある


誰かの嘘を見抜いたり
自分の嘘を見抜かれたり
いたずらがバレたり
いたずらされたり

そういうのもたぶん
間接的な愛情の裏返しで

無関心よりははるかに
共存感を与えられる


.. 


心の窓を開けば
毎日何かしらが傍にある
家から一歩でれば
そこには溢れるほどの
同じ日常

決まった曜日に毎日開けている店
お気に入りのメニュー
好きな散歩道
少し気があるあの店員さん

毎日そこに在るというだけで
時々そこにいるというだけで
人ははかり知れずも
誰かに安心感を与えていたりもするものです

いつも来てくれるお客さん
時々ひやかしに来てくれる兄ちゃん
謎のガン見お姉さん

たまにはうっとうしい
客引きも

毎日みんなが必死でいきようとしている風景は
どんなに孤独な時も 孤独でない時も
変はらず同じように 其処に在る


.. 


たとえば
いつも好きなハンバーグランチが
いつもより固くて冷めていたとして
それもよく食べているからわかる変化で
今日も食べたから気づいた変化で

そんな体調の時もあるのだと
たぶんこの時間に来たからあらかじめ焼きおいていたのかしらと
今日は作る人が違うのかしらと
それとも誰か注文を間違えてしまって余ってしまったのを
運よくわたしに貰われてきたのだと

そんなことまで人は
馴染みのものの変化に対して
考えを巡らせるものですね

たかがハンバーグひとつ
されどハンバーグひとつ

毎日触れているものが
自分の好きなものが
いつも同じとは限らないけれど

人は好きというだけで
そんな小さな変化にまで
沢山の思いを巡らせる

かわいらしくて心の狭くて広い
鋭敏で繊細な生き物なのですね


.. 



人は愛しているからといって
このハンバーグのように
全く同じ愛情をサイボーグのように保ちつづけることはできないし

ハンバーグも愛もナマモノだから
ちょっとした変化にすぐに味を変えるし


そんな不確定な愛だけで
根こそぎそのハンバーグやそのハンバーグを作る職人やそのハンバーグを出すお店を
自分のテリトリーに縛り付けることもできないでせう

あなたがこんなに好きだからといって
あなたを無理やり
わたしに縛り付けることができないように

この樹が人生で一番好きなものだとして
その根差した土から引き剥がして
自分の寝床に飾り付けたところで

その樹は自分の土壌を失って
みるみる生気を失うのは
想像にかたくなく

愛するものが
自分の所有欲のせいで
無惨に死んでゆくのは

かなしいものです


..


だから
自分が好きなものは
摘んではいけないの

愛するものとずっといるには
通わなければならないの

そのハンバーグのあるお店に
その樹が植わっている道に
その風が吹く丘に
あなたの暮らしている街に

魚が好きだからといって
海を丸ごと買い取って
家の水槽にぶちこむことはできないのよ


愛するものを
そのまま愛してゆくには
別々に生きる必要があるの


.. 


最初から最後まで
独りで生きなきゃいけないのかしら
愛するものですら
手に入れられなくて

ただでさへ
愛することにも愛されることにも
人はこんなに臆病で嘘つきなのに


それでもそうやって真剣に考えながら
考え疲れそうなこの身を
何も考えないで楽にさせてくれる

なんともないこの街と
この少し固かったハンバーグと
こんなことについてつらつらと考えさせてくれる
馴染みのカフェが好き

たとえわたしを根こそぎ愛してくれる人が現れたとして
わたしがこうやって独りで
アイやスキやコドクについて
つらつらと似通った思いに耽る時間を
カレが奪うこともきっとできないんだわ



...