エンピツの歌 .
頭が空っぽに為る迄 文字を書いたら
何も考えずに 転がって落ちよう
鉛の塊を全部吐き尽くしたら
僕はただの木くずのかす
風が吹いたら自然に還るさ
僕はただの木くずのかす
白いシーツと雲の上
一面に雪 雪 雪と見えるは消ゴムのかす
積もり積もって僕を隠す
僕を隠す
視る間にそれはどす黒くなる
辺り一面 真っ黒な海
木くずでできた一層の舟
空っぽになった筈の僕から
溢れる鉛だけの海
てらてらと黒い波が僕を襲う
てらてらと黒い波が僕を襲う
僕は僕を襲う波の表面に
飛沫で裂けた僕の貌を視た
鉛色の波に 鉛色の塊が
ぶくぶくと笑っている
嗤っている 嘲笑っている
気持ちが悪いと吐き出しても
吐き出しても 吐き出しても止まるなき
僕の鉛の吐瀉物
鉛の海に 鉛を吐いても
ただ鉛が増えるだけ 鉛が増えるだけ
僕の鉛か 海の鉛か
吐いてしまえば分からない
そうだ この海は元々
僕の鉛でできたんだった
僕は今 僕の鉛の中に居るのか
僕は僕の鉛の海から襲われ
僕は僕の鉛の吐瀉物に追われ
一体あの 小さな木くずのかすの中に
どれ程鉛が有れば 気が済むのだろうか
僕はいい加減
僕の鉛のきりの無さに辟易して
鉛の飛沫と鉛の吐瀉物に塗れて
黒い鉛の海に落ちていった
目が覚めたら 僕はエンピツを握り締めて
眠っていた
孤独なエンピツの歌
孤独なエンピツの歌
そう言いながら僕は
鉛の芯が無くなってしまうまで
ひたすらエンピツの先を
ぼきぼきと机に刺し続けた
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