貴方を思はなくなって
心が軽くなってから
私は生きる感覚が
分からなくなってしまった
私が私の体重を
感じなくなってから
私は私の心の痛みを
感じなくなってしまったの
吹く風 吹く風 わたしを流して
降る雨 降る雨 わたしを流して
それでも私は 渇いているの
悲しい気持ちが 一つもないの
視るもの 視るもの ふわふわ浮いて
往く場所 往く場所 忘れていって
それでも私は 生きているの
生きてる感じは 微塵もないの
こころに突き刺さるもの一つ
一つでいいので あたしに下さい
背骨を砕く程の一本で
あたしを胸から刺してください
それで初めてわたくしは
アナタに生を もらえるのです
それを無くしてわたくしは
わたくしとして 生きられぬのです
風が吹いても
雨が降っても
旅をしても
時が経っても
流されることなく
びしょ濡れになって
アナタを想い
傷を舐めるの
踞るあたしの
黒い黒い影が
重たく地面を這いつくばって
私はあたしの生を確かめられるの
私の影を濃くするのはアナタ
いつでも アナタを想う私の
影の重たさが好き
痛くて 重くて しけっていて
いつでも 何処でも 泣けるのよ
それでも アナタが貫いている胸は
何処にも流されたりしないの
突風が吹いても
大雨が滝のように襲っても
私は地面に突き抜かれて
其処から離れられないわ
風で息ができなくっても
水で口が溺れても
私はアナタの痛みに守られて
死さへ苦しくなんかないわ
アナタという存在が
私の生を裏付けるの
アナタがいないという生は
影の無い ピーターパンのようなもの
自由で 楽で 何処でも飛べるの
だけど 一切 実感しないの
昨日も今日も ずっと同じ
ぐるぐるぐるぐる ただ 回り続けて
わたしというわたしは 金太郎あめのように
蝋人形のように 壊れたオルゴールのように
その動く静止画に 一生閉じ込められた侭なの
早く 早く誰か刺して
そして私を殺してください
この 全身麻痺した 影の無い蝋細工の胸を
溢れ出る生々しい血しぶきで
花開かせて
そうして再び 私は死んで
生きたあたしに戻れるの
胸から背骨へ貫かれた
一本の剣の重みに 肌を裂かれながら
死ぬ迄 アナタの痛みに繋ぎ止められて
この道を歩いてゆくの
空なんか飛びたくない
自由なんかいらない
アナタを忘れるくらいなら
死んだ方がましよ
引き摺られて構わない
縛り付けられて構わない
それでアナタを一生感じられるのなら
あたしは悦んで地面を這いつくばるわ
刺された剣の痛みの分だけ
アナタが其処にいるわ
溢れ出す血の量だけ
あたしは生きているわ
立ち上がる体の重いほどに
私は私の影を知るわ
這いつくばる影の黒さが
アナタの生を証明するの
こころに突き刺さるもの一つ
一つでいいので あたしに下さい
あたしを殺す程の一心で
アナタの剣を刺してください
それで初めてわたくしは
アナタに生を もらえるのです
それを無くしてわたくしは
わたくしとして 生きられぬのです