室 | 森由 壱 - tune bride -

森由 壱 - tune bride -

... という 、夢を視ました 。

蛇の呼吸する音がする
蛇の呼吸する音がする

おどろおどろしい呼気が
眠らない室内を廻る

開きかけの楽譜ノート
ちかちかするマウスの赤ランプ

朝が来る迄の間
垂れ流した昔のアニメが
眠らない室内を僅かにつなぐ

蛇の真っ直ぐ通った内臓に
積年のへどろは模様をつくる
何も産み出せぬ侭
皮だけが増えていった

秋に脱いだもの 春に脱いだもの
夏に脱いだもの 冬に脱いだもの
脂の抜けきった今も
それらの悪臭が室を侵す

鱗の一片一片に
陶酔しては 又脱いだ
脱いでは その醜さに
室を荒らした

嘔吐を催す 幾枚もの皮に
とぐろを巻かれつつ
蛇は ひたすら 待っている

室をつなぐ 僅かな音声に
蛇は全ての悪夢の中和を押しつけながら
おどろおどろしい呼気の中に
朦朧と意識を押し退ける

蛇の内臓は
蛇の内臓は
今夜も真っ直ぐにへどろを押し流しつつ
淡々と おぞましい模様を染みつかせる

あと何枚脱ぐ迄
内臓は動くだろうか
あと何呼吸分
この へどろは生きるだろうか

そんな事に 汚い自意識を昂らせながら
眠らない室の悪臭にくるまって
蛇は 小さい眼を閉じた

蛇の呼吸する音がする
蛇の呼吸する音がする

上の階で 突然 物騒な乱打と怒号が響く
そんな事はどうでもいいと
蛇は この夜初めて疲れながら
眠らない室で 眠りについた