CDレビュー: ゆるめるモ! / ディスコサイケデリカ | アイドルKSDDへの道(仮)

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心に茨を持つ山梨県民こと「やまなしくん」のブログ。基本UKロックが好きですが、最近はもっぱらオルタナティブなアイドルさん方を愛好しています。

過去の作品と同様に、ゆるめるモ!は今回も洋楽ロックの名盤のパロディを(ジャケット帯のデザインや文章に至るまで)全力で披露。誰がどう見てもプライマル・スクリームの『スクリーマデリカ』のパロディである本作は、しかし、モ!の過去と未来をつなぐような、多彩な楽曲で楽しませる作品となった。

チボ・マットを思わせるイントロ『melted』に続くのは、2年前の『1!2!かんふー!』を思わせるユルいダンスポップ『モイモイ』だ。「覚悟とか理想とか 無理に言わないでいいのよ」という歌詞は、1年前に4人体制になってからがむしゃらに突っ走ってきたモ!自身に向けられたようで、はっとさせられる。

本作最大の目玉は、絶大な支持を集めるシンガーソングライター、大森靖子氏が提供した『うんめー』だろう。氏が昨年発表した『勹″ッと<るSUMMER』においてモ!の「あのちゃん」をフィーチャリングし、今年4月に対バン…という経緯から、氏自ら楽曲提供をオファーし、メンバーとの話し合いを経て、この曲を書き上げたそうである。果たして、大森靖子らしい個性的な言語感覚とアイドルポップスらしい可愛らしさを兼ね備えた曲が完成したが、愛にあふれた歌詞がとにかく素晴らしく、感動的なものになっているので、ファンならずともぜひ聴いてほしいナンバーだ。


続く『我が名とは』は3年前に発表された代表曲『スキヤキ』を彷彿とさせるクールなディスコチューン。古風な日本的情緒を感じさせるサビのメロディに合わせて、モ!の「ほぼ専属作詞家」小林愛氏は文語調の歌詞を提供。そのメッセージ性に注目してほしい。

『デテコイ!』は、POLYSICSハヤシヒロユキ氏の提供曲で、これが3曲目となる。とびきりポップなニューウェーブは、モ!の真骨頂と言えるだろう。

『ミュージック 3、4踏んで終わっちまうよね』のようなラップを交えたロックナンバーもまた、もはやモ!のお家芸。「なんでアイドルやってんだ?」とのセリフにドキッとさせられる歌詞は、これまでにない自己言及的なもの。本人のみならず、全てのアイドルの共感を誘うものになっている。

前回シングル曲の再録である『震えて甦れ』は、カオティックハードコアやノイズロックを飲み込みながら過去最高の複雑な曲構成を見せるナンバーで、ももいろクローバーや でんぱ組.incの諸楽曲にも匹敵するプログレッシブ・アイドルポップス。この狂気のサウンドを、ぜひ体験してほしい。

クロージングナンバーは、Sundayカミデ氏(ワンダフルボーイズ/天才バンド)の提供による、美しく壮大なバラード『永遠のmy boy』。曲調、歌詞ともにモ!の新機軸といえる新鮮な曲だ。十代の恋愛を歌ったラブソングと言える歌詞だが、失われゆくイノセンスへの追憶というテーマは、大人のリスナーの胸にも刺さるものだろう。

以上のように、個性豊かな楽曲が一堂に会したこのミニアルバムは、世代を問わず親しむことのできるようなものになっているし、安定と新鮮さを兼ね備えたバランスの良さも感じさせてくれる。

ただ、筆者のようなコアなファンには、「安定のモ!楽曲」にやや物足りない印象を抱いてしまうのも事実。これは、新作が出る度に期待値を上げてしまうファン心理によるもので、仕方ないとは思うのだが…今後、さらに突き抜けたエンタテイメントを提供してくれることを期待して、星(5点満点中)4つとしたい。