CDレビュー: ゆるめるモ! / 孤独と逆襲EP | アイドルKSDDへの道(仮)

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心に茨を持つ山梨県民こと「やまなしくん」のブログ。基本UKロックが好きですが、最近はもっぱらオルタナティブなアイドルさん方を愛好しています。

与えられる側から与える側へ、応援される方から応援する方へ…アイドルの成長とはおよそこのようなものであると思われるし、それはゆるめるモ!も例外では無かったことは歴史が証明している。そして結成後5年目に突入した今…自らがオーディエンスに光を与えよう、という尋常ならざる決意が、このタイトル曲に横溢している。「私がダメなら次の私がいるの 何回だって甦る覚悟だ」…プログレッシブロックのような目まぐるしい展開、エレキギターのフィードバックノイズの嵐の中で、4人のメンバーは可愛くラップし、のたうち回りながらシャウトし、この決意を力強く歌う。ヘヴィメタルとドリームポップとシューゲイザーとダンスポップを縦横無尽に行き交う凄まじい曲構成は、「過去最高に攻めたシングル曲」との前振りにふさわしいクレイジーさである。(ちなみに、作曲者・ハシダカズマ氏が自身の主宰するインディ・ポップバンド「箱庭の室内楽」で試みた変拍子への偏執病的な探究が、この曲には活かされているようだ。)

カップリング曲「孤独な獣」は、一転してダンサブルでポップな曲調で、大らかで優しいメロディが魅力的なナンバー。だがさらに魅力なのは、その歌詞だ。「ほぼ専属作詞家」小林愛氏の哲学が、過去最高レベルで明瞭かつ鮮やかに、そこに刻み込まれているといってよいだろう。曲タイトルからも察せられる、同調圧力への反発、アウトサイダーとしての決意…という氏の哲学は、同時にゆるめるモ!という特異なアーティストの哲学でもあった。「孤独になれば 景色が広がるような気がした」と歌う"あのちゃん"の歌声は、鳥肌が立つようなリアリティがあり、その先のラストパートで広がるアンセミックな大合唱は、そんな孤独な彼女たち(と私たち)を祝福するかのような高揚感に満ちている。

昨年夏にリリースされた、4人体制になってから初のCD『WE ARE A ROCK FESTIVAL』は、間口の広いポップな内容だったが、本作は一転してアグレッシブに自らのアイデンティティを追求した作品となった。そのアーティストとしての真摯さ、音楽としての面白さ、楽しさを、ぜひ受け止めてほしい。