3/26 ゆるめるモ!ワンマンin渋谷O-EAST ライブレポ | アイドルKSDDへの道(仮)

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心に茨を持つ山梨県民こと「やまなしくん」のブログ。基本UKロックが好きですが、最近はもっぱらオルタナティブなアイドルさん方を愛好しています。

昨年夏に4人体制になってからの ゆるめるモ!は、「原点回帰」を掲げてツアーを行い、10月には恵比寿リキッドルームでのワンマンライブを(平日にも関わらず)余裕でソールドアウトさせ、僕もそれを観に行った。今年に入り、待望の新作『孤独と逆襲EP』のリリースと、それに伴うバンドセットでの東名阪をめぐるツアーがアナウンスされた。今回は、そのツアーの東京公演なのである。場所は渋谷にあるTSUTAYA O-EAST、キャパ1300人の大箱である。

実はこの日、同じ渋谷のチェルシーホテルというライブハウスで、午前中からレッツポコポコ、ハウプトハルモニー、そしてThere There Theresによるスリーマンライブが催されていた。レッポコは、モ!卒業メンバーの「ちーぼう」改め「千歳ちの」が所属しており、ハウプトハルモニーには、やはり卒業メンバーの、もねちゃんこと櫻木百改め「一花寿」(ひとはなすい)が所属している。…そう、この日は、モ!の新旧メンバーのライブが観られる日だった。「マジかよ!観に行くしかねぇだろ…」と、僕は久しぶりに「現場を回した」のだった。そのおかげで、モ!のチェキ会は余裕で「干した」わけだが…。旧メンバーのちーちゃんとすいちゃんは、2人とも、元気で素晴らしいステージを見せてくれた。(その様子は後日改めてブログに書きたい。)

さて、物販を買い逃さないために、13時45分ごろにO-EASTに向かうと、すでにかなりのファンが物販列に並んでいた。これまでも大箱でのワンマンライブの時はそうだったのだが、物販列がめちゃくちゃ長い。ライブハウスでの対バンイベントでの物販に慣れた自分にとって、それはとても長く感じられた。会場内からはリハーサルの音が漏れ聴こえてきた。あ、この曲は「たびのしたく」…静かに高まる自分であった。

1時間15分並んで、やっと自分の出番が来た。まだ買っていなかったEPの初回限定番、Tシャツ、メンバー自身のプロデュースによる「逆襲ノート」「さささのおつカレー」、そして久しぶりに「チェキくじ」(メンバーのチェキがランダムで手に入る)を買い求めた。




全部で7,200円…って、けっこう使っちゃったな…。チェキくじは「しふぉん」を引き当てた。チェキ会を干したことへの悔いが、やわらいだ。

* * *

冷たい雨が降りしきる中、会場時間の16時をちょっと過ぎた時間に再び会場に向かうと、入り口にはお祝いの花が多く飾られていた。テレビ番組「ほぼほぼ」やZipper編集部などといった、モ!が一緒の仕事をした関係者に混じって、「ゆるオタ一同」と「韓国のファン一同」のものがあった。物販コーナーの近くででは、韓国のファンの有志の方が、自作の缶バッジを配っていた。すごい…。











さて、開演45分ほど前に会場内へ入ると、すでにたくさんのファンが集まっていた。時間が経つにつれて観客は増え、会場後方を埋め尽くすほどになった。見回すと、20歳前後と思われる、若い人が多い。女の子は全体の3割くらいいるだろうか?でも僕は30代後半だし、その年齢層は実に幅広かった。僕の前方では、高校生と思しき2人の女の子がおしゃべりをしながらスマホで自撮りをしていたし、横では20代と思われる男女がオタクトークを繰り広げていた。

「ああ、これは理想の"現場"だな」と思った。僕が見聞きした中で「女子ファンの多い女性アイドルグループは成長する」という法則があるし、若いファンが多いことは、グループの持続可能性を担保するものであると考えられた。そして、あらゆる年齢層のファンがいることは、優れたアーティストの証明であると、僕は考えていたからだ。(一流といわれるアーティストのライブ会場へ行けば、それが理解されるだろうと思う。) …SEは英米のロックで、radioheadやNew OrderやDinosaur Jr. の曲が流れていた。あ、ああー静かにテンション上がるわー…

開演時間になると、大きな歓声のなか、女性2人、男性2人によるバンドメンバーが入場。これまでにないロック調の出囃子が流れるなか、メンバー4人が、ブラックとシルバー、そして蛍光グリーンをあしらった、サイバーな新衣装に身を包んで登場。

「ダカダカダン!ダダン!」このイントロって…おいおい、いきなり最高の沸き曲「idアイドル」かよ!ドラム、ベース、2本のエレキギターによるソリッドなロックサウンドが新鮮に感じられる中、抜群の安定感をもって、メンバーたちが踊り、歌う。そして、あのコール&レスポンス「ゆ!る!め!る!モー!」からサビになだれ込み、会場が一体となる。モ!は、ステージと客席の距離を、この1曲で一気に縮めてしまった


続く「Hamidasumo!」で、あのちゃんは、スタッフから渡された水色のエピフォンSGをかき鳴らしてギターノイズをまき散らし、歓声を浴びていた。さらに「不意打て!!」と、POLYSICSハヤシ氏提供曲を連続で披露。この曲は1月に観たモ!のライブでも「箱庭の室内楽」によるバンドセットで披露されていたが、バンドで演ると相当にカッコイイ。これは楽しい!


MCは、いつも"ようなぴ"ちゃんがメインになって話しているのだが、何度も何度も「ありがとう」と言っていた。観に来たファン、スタッフ、卒業したメンバー、もうライブに来なくなった人、ゆるめるモ!に関わったすべての人に、ありがとう、と言っていた。僕は、なぴちゃんの言葉をかみしめるように聞いていた。と同時に、あまりにも何度も感謝を口にするものだから、「おいおい、ここで解散発表、とかしねーだろーなオイ…」と、ちょっと不安を感じてしまった。最近、アイドルの解散ってめっちゃ多いし、僕もごく最近、ハウプトハルモニー解散の知らせを受けて涙したのだから…(結局「解散」は全くもって杞憂に過ぎなかったことが後に証明されたのだが。)

また、MCでは、"しふぉん"が、「隠すことではないと思って…」と今回のライブをソールドアウトできなかったことを告げた。わざわざ言わなくてもいいのに、なんと律儀であることか。そして、何と上昇志向の高く、頼もしいことか!しかし続けて、会場後方までたくさんの人が観に来たことを話し、感謝を伝えていた。客席からは温かい拍手が何度も沸き起こった。

「私の話、これでおしまい」は、僕が特に好きな曲だったから、曲名を告げられた瞬間に胸が躍った。あのイントロを聴いただけで、胸がいっぱいになりそうだった。そして、打ち込みのシンセサウンドとギターロックサウンドが、目の前で美しく融け合った。ああ、僕の理想の音楽を、大好きなゆるめるモ!が演っている!この曲の落ちサビは、かつて、卒業した「もね」と「ちーぼう」が歌っていた。その2人の現在の活躍を、僕はほんの数時間前に観ていた!そんな想いが頭、身体の中を駆け巡ったから…僕はボロボロと涙を流しながら、ステージを眺めていた

聴きなれないイントロの曲は「アントニオ」だった。昨年発表された配信限定リリース曲で、4人になってからはお蔵入りの曲かと思っていたから、これは驚きだった。あの変則的な曲をバンドで演ってるのは、やはり凄い。そして壮大な名曲「人間は少し不真面目」が!これは昨年のリキッドワンマンでもバンドセットで披露されたのだが、本当にバンドによって映える曲である。今回はバンドメンバーに作曲者・ハシダカズマ氏がいないこともあり、氏の得意とするノイズサウンドは控えめではあったが、結果として、曲そのものの美しさ、ヴォーカルの表現力の豊かさがよりビビッドに感じられた

そう、今回のライブ、本当に4人の歌声が素晴らしかった。格段に成長した表現力が感じられたし、歌詞に込められたメッセージを懸命に伝えようとする姿勢を、ひしひしと感じることができた。ようなぴちゃんとしふぉんちゃんは真っ直ぐに僕たちを見すえていたし、けちょんちゃんの深みのある歌声は素晴らしかった。あのちゃんの歌唱も安定感があり、その上で「危うさ」をもチャームポイントにできるような歌唱力で、バンドをぐいぐいと引っ張っていた。これらは自分にとって大きな発見だったし、同時に、今のモ!がいかに「本気」であるかを再確認することができた。

新曲「孤独な獣」は、まだファンの皆にはなじんでいないようだった。が、サビの部分でメンバーは拳を上げ、観客に合唱を促していた。それに呼応して、たくさんのファンが拳を上げた。
至高の美曲「もっとも美しいもの」、打ち込みのエレクトロニックサウンドに絡む、ひんやりとしたエレキギターの音が死ぬほどカッコ良い。「OO(ラブ)」は、メンバーが日の丸のセンスを手にしてダンスする珍しい曲なのだが、ここでもエレキギターによるアレンジが光っていた。

今回のライブ、僕が事前に気になっていたのは、新曲「震えて甦れ」を演るだろうか、ということだった。そりゃ、リリースされたばかりの曲だから、演奏するに決まっている。だけど、あの複雑怪奇な曲を、本当に演奏し、歌うのか? …一度でも聴いたことがあれば、この気持ちを分かってもらえるだろう。



バンドは演奏した。メンバーは歌った。全然拍子が取れない、この曲を!「す、すげえ…」と、圧倒されながら、僕はステージを凝視していた。間奏パートでは、再びあのちゃんがギターを手にとり、思う存分にノイズをまき散らしていた。凄まじくカオティックで、同時にポップであるという、モ!の魅力を存分に堪能。

代表曲にして、僕も大好きな「スキヤキ」では、「あー、けちょんー!」等と、(僕を含む)ゆるオタ皆でコールを連呼。ガチオタ勢によるMIXに導かれてサビに突入すると、そこはダンス地獄。僕はひたすら踊った。ガチオタ勢は、「はいせーのっ!」とコールを繰り広げ、落ちサビでわちゃわちゃとリフトを発生させていた。皆でクラーベ・リズムの手拍子をするのも、最高に楽しい!

インディーロックとクラシックを相互に行き交う壮大な組曲「たびのしたく」で、モ!の世界観に浸ったあと、やはり「Only You」が来た!「あ~~~~~!」と、イントロでメンバーとオーディエンスが絶叫し、魂を解放し合う、混沌とした祝祭が始まったのだった。(もはや自分にとっては見慣れた光景になってしまったが)あのちゃんが客席にダイブ!したかと思いきや、しふぉんもダイブし、「後ろまで運んでくれ~!」と叫んでいる、そして、僕の目の前(ホントに手が届くくらいの至近距離)で、ファンに支えられて必死に立っていた!その後、ようなぴ様がスタッフが据え付けた脚立に登って落ちサビを歌うのも、もはや定番と化したか。「あなただけ(が大切なんだ!)」と必死に4人がメッセージを伝えようとしている。それを受け止めている観客がいる。何度も繰り広げられてきたこの光景は、大きな会場で、より美しく僕の眼に映った。

本編が終わり、未だ客席が暗い中、しばしの沈黙の後、ゆるオタ仲間内で指名された?方が、リフトされながら、渾身の「アンコール」を絶叫し始め、周りの観客もそれに呼応して、大きなアンコール!が湧きおこった。…しばしの後、ツアーTシャツとパーカーに着替えたメンバーとバンドメンバーが再登場。ワンマンライブ名物、ツアーグッズの紹介が繰り広げられた。

アンコール1曲目は「私へ」だった。2ndフルアルバムに収録されているこの曲の歌詞がいかに感動的であるかを、僕はよく知っていた。昨年9月に長野で観たワンマンライブで、この曲を演っていたっけ。その時と同じく、僕はサビを一緒に(声を出さないで)メンバーと一緒に歌っていた。

MCでは、4人それぞれが、今回のライブに対する想いを語っていた。関わってきたアイドルグループが次々といなくなる中、自分たちが続けていくことの決意、成長した姿を見せられたこと、とか…。ここで意外だったのは、MCではいつもたどたどしく話すあのちゃんが、「底辺は最高だー!」と、おどけて話したことだった。こんな あのちゃんの姿は、僕は初めて見たように思う。驚きと嬉しさを感じた。

「これが本当に最後の曲です!みんなで踊ろう!」との、ようなぴちゃんの声に導かれて始まったのは、ミニアルバム『WE ARE A ROCK FESTIVAL』のラストナンバーにして人気曲「ナイトハイキング」。その腕を交差させるダンスを、メンバーと観客が一緒にやり始めて、会場は一体となった。ラップパートでは、キメのワードを皆が唱和した。優しい歌声、シンセの響き、タイトなバンドサウンドが融け合い、この大きな会場を温かなヴァイヴで満たした。



正直なところ、僕はイントロで「あれっ!?」と思った。なぜなら、ワンマンライブでは欠かせないと思われた絶対的な代表曲「逃げろ!」では無かったからだ。モ!の根幹ともいうべきあの曲を聴けないのは残念に思われた。が、同時に僕は考えた。「『逃げろ!』を演らないことこそ、『変わらないために 変わらなきゃいけないことがある』と、MCでも語っていた今のモ!の姿勢を象徴するものではないか」と…。(もっとも、今回はツアーの中の1公演という位置づけなので、単に外しただけなのかもしれないのだけれど。)

最後には、メンバー4人とバンドメンバー4人が横一列に並んで、マイクを通さずに、「(せぇーのっ)ありがとうございましたー!」と大声で叫んだ。その声は、はっきりと僕たちに聴こえた。客席からは盛大な拍手が湧き、僕も何度も歓声を送った。

舞台袖にはけてからは、録音だろうか?メンバー達の話し声が流れてきた、そこで、「この会場だけの特別な情報」がもたらされた。あのちゃんが「話したら殺す」とか言ってたんで…書くことはできないが、これが前述の「『解散』が杞憂であることの証明」だった。

* * *

個人的には、自分を完全に「ゆるオタ」にさせた、2015年12月20のZepp DCでのワンマンライブの次にくるくらいの、素晴らしいライブだった。すなわち、4人体制になってからは最高のライブ、ということになる。ワンマンの度に「過去最高のライブにする」とメンバー達は言っていたが、それを有言実行していたことは、実に頼もしい限りだ。

4月以降、ゆるめるモ!は、多くのツーマンライブを予定している。大森靖子、ミオヤマザキ、MIYAVI…と、いずれも屈強な実力者とのライブだ。加えて、4月末にはタイのバンコクへの遠征を予定している。これらの修行を経て、さらに成長するであろうモ!は、これからどんな景色を見せてくれるのか。それを、これからも一緒に見ていきたいと思った。

(おしまい)