CDレビュー: GANG PARADE / barely last | アイドルKSDDへの道(仮)

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心に茨を持つ山梨県民こと「やまなしくん」のブログ。基本UKロックが好きですが、最近はもっぱらオルタナティブなアイドルさん方を愛好しています。

まさに激動の歴史だった。新生アイドル研究会BiSメンバーだったカミヤサキが、2014年7月のグループ解散後にミズタマリと「プラニメ」を結成するも、1年を経ずして瓦解。その後4人のメンバーを募集し「P.O.P」が始動するものの、ほどなくしてカミヤサキが無期限活動休止の処分を受け、キーパーソン不在の活動を余儀なくされた。カミヤサキは2015年12月に復帰を賭けた「100kmマラソン」により感動のカムバックを果たす。新機軸を見せるシングルをリリースし、「ギャング・パレード」と改名し、順調に進撃を続けていく…と思いきや、2人のメンバーが相次いで脱退。新たに新メンバー1人を迎え4人体制になり、このアルバムを制作した…ところで、何と、復活するBiSの公開オーディションに落選した3人を加えて7人の体制になるという、予想外の展開に。現在は7人で精力的に活動している。

メンバー達は、そんな状況の中で、不安と希望の狭間で苦しみもがきながら、必死に歩みを進めてきたに違いないのだった。…そんな彼女達の折々の心情は、メンバー自身が書いた歌詞によって、明らかにされている。アルバムタイトル曲「barely last」の「羨ましい 楽しそう…みんな/僕だけ壊せそうもない」という、あまりにネガティブな歌詞に驚かされる。だが彼女達は「僕らは今 試されてんだ」(QUEEN OF POP)と自身を鼓舞し、「希望や夢なんか/ない!ない!」(Happy Lucky Kirakira lucky)と半ば投げやりな言葉で現状打破を試みようとさえするのである。そしてたどり着いた境地は、「望んだ先は夢じゃなくて/いつかここで輝くまで/歩き続けるよ」と歌う#9「WE ARE the IDOL」に結実する。アイドルのみならず、世の中全てのアーティスト、そして市井の私たちの琴線に触れる、あまりに感動的なバラードナンバーだ。

ラウドロック中心のBiSやBiSHを手掛けてきた松隈ケンタ氏のプロデュースによる本作だが、前述の2組とはやや異なり、 EDMテイストを取り入れたダンスポップとパンキッシュなギターロックが中心となっている。事務所社長であるエグゼクティブプロデューサーの渡辺淳之介氏は、インタビューにおいて、グループの音楽性について「EDMではなくてtwenty one pilotsをイメージしている」旨を語っているのだが、そんなシンセサウンドとロックバンドサウンドの融合は、クールなアイドルポップスとして確固たるポジションを確立している。

かつてBiSが、相次ぐメンバーの脱退と加入、そしてエクストリームな活動によってエモーショナルな物語を紡いできたのと同じく、ギャンパレもエモい足跡をアイドルシーンに刻み続けてきた。そんな「BiSイズム」の継承者ともいうべきグループの成り上がりストーリー、クールなサウンド、そして元気はじけるパフォーマンスの数々…注目すべき価値があるだろう。