アカデミー賞受賞記念<『オッペンハイマー』クリストファー・ノーラン×山崎貴>スペシャル対談! | C2[シーツー]BLOG

C2[シーツー]BLOG

川本 朗(カワモト アキラ)▶名古屋発、シネマ・クロス・メディア
C2[シーツー]の編集・発行人。 毎月30本アベレージで、
年間300本以上を鑑賞。“シネマ・コネクション”を
キーワードに、映画をナビゲート!
▶シーツーWEB版  www.riverbook.com

 

 

 クリストファー・ノーラン監督最新作『オッペンハイマー』が、2024年3月29(金)より全国公開、IMAX®、35mmフィルム、Dolby Cinemaで同時公開!

 

 

第96回アカデミー賞®で《作品賞》《監督賞》をはじめ最多7部門受賞となった本作 は、第二次世界大戦下、世界の運命を握った天才科学者 J・ロバート・オッペンハイ マーの栄光と没落の生涯を実話にもとづいて描く作品です。2023 年 7 月の全米公開を皮切りに、世界興収 10 億ドルに迫る世界的大ヒットを記録。実在の人物を描いた伝記映画としては歴代 1 位となっています。 クリストファー・ノーランが監督、脚本を務め、主演のキリアン・マーフィーほか エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.、フローレンス・ピュー、ジョシュ・ハートネッ ト、ケイシー・アフレック、ラミ・マレック、ケネス・ブラナーらが出演。ノーランは、IMAX®65 ミリと 65 ミリ・ラ ージフォーマット・フィルムカメラとを組み合わせた、最高解像度の撮影を実践。また、本作のためだけに開発された 65 ミリカメラ用モノクロフィルムを用い、史上初となる IMAX®モノクロ・アナログ撮影を実現。IMAX®撮影による、 天才科学者の頭脳と心を五感で感じさせる極限の没入体験を味わえる作品となっています。

 

 

この度、自身初となるアカデミー賞®《作品賞》(エマ・トーマス、チャールズ・ローヴェンと共に受賞)、《監督賞》に 輝いたクリストファー・ノーラン監督と、日本初となる《視覚効果賞》を受賞した『ゴジラ-1.0』の山崎貴監督による 対談が実現。

 

DIALOGUE

 

 

特別対談映像は、山崎監督の「知的好奇心を刺激されました」という感想 から始まります。「パンドラの箱を開けてしまった人間が、どのような社会 的な立ち位置でいたのか。時系列を組み替えながら描いていて、ハードな テーマのエンターテインメントになっている。凄く面白い、素晴らしい作 品。オッペンハイマーが残酷な幻影をみるという、栄光と悲惨さが同じ画 面に収められている作り方が凄い」という山崎監督の評価に、ノーラン監 督は「私が物語の中で興味があるのは頭脳明晰な人たちが世界を理解し驚 くべき創造性を飛躍させテクノロジーを用いてどのようなことを可能にするのか、そしてその裏に潜む恐ろしい暗示です。そのコントラストを映画に映し出し観客のみなさんに直で感じてもら いたい」と応じ、「開発を進めていく先に待ち受けている恐ろしさの片鱗が既に見えているわけです。しかし時代の状 況ゆえに行動するしかなかった。その緊張感を観客のみなさんに体験してほしいと思いました」と述懐。天才物理学者 の脳内に入り、その時彼は何を感じていたのか、その瞬間を観客と共有する“没入体験”を目指したと語っています。

 

「悪い人間、素晴らしい人間を決めつけていない、その両方が渾然一体となっている」描写に驚嘆したとする山崎監督 に、ノーラン監督は「それは物語を伝える上で大切にしたことでオッペンハイマー役のキリアン・マーフィーともよく 話し合いました。観客にはオッペンハイマーを裁くのではなく理解してほしかったのです。みなさんにこの人物の両面 を体験してもらい、彼がした選択について自分だったらどうするか考えてみてほしかった。自分とは考えや立場が全く違う人の、考えや思いがわかるというところが映画の魅力です」と、どう受けとめるかは観客ひとり一人の判断に委ね ることを最優先したとコメントしています。

 

『オッペンハイマー』に触発された山崎監督が「日本が返答の映画を作らねばならない」と宣言すると、ノーラン監督 は「アンサー映画を作るのであれば山崎監督以上にふさわしい監督は思い浮かびません。ぜひ実現していただけたらと 思います。これからも山崎監督の作品を楽しみにしています」と笑顔で応じます。

 

映像へのこだわりについてノーラン監督は、「観客の感覚に訴えかける映画を常に作りたいと思っています。今まで多 くの映画を IMAX®用の 70 ミリフィルムで撮影してきました。驚くほど鮮明で色の再現度が高いからです。大きなスクリ ーンに投影するとスクリーンの枠が消え映画に没入することができます。劇場の様々なサウンドシステム 音響や音楽 との融合によって観客を物語に引き込むことができるのです。こういった没入感を これからも映画制作で大事にして いきたいです」というコメントを受けて山崎監督は「すごい伝わってきました。IMAX®ならではの作品だと思います」と 対談を締めくくりました。

 

コメント全文(順不同/敬称略)

「クリス・ノーラン」僕にとってだけでなく、多くの観客の脳内をかきまわす監督である。 『メメント』から始まって、『インセプション』、『TENET「テネット』と時空を彷徨う人達が錯綜する話を手掛け、今度は 天才物理学者を描いた『オッペンハイマー』、原子爆弾を開発した男だ。 日本は被爆国でもあり、この映画が日本で公開されるのか心配していた。かく言う僕も恐る恐る試写の席に着いた。 今も、この世界を終わらせてしまうかもしれない爆弾を作った男が、細やかに、エキセントリックに描かれていた。盟 友キリアン・マーフィーがそれを丹念に生きていた。だらしなく、誠実で、時代に流されていく男を。 彼の幻覚の中にある、被曝の実態を世界はどう見てくれたのか。日本の観客にとっても観ておくべき作品なのだと思っ た。

渡辺謙

====================================================================

ノーラン監督の作品には常に知的好奇心を刺激される。「パーフェクトに近いスペクタクルを完成させながらも、「パン ドラの箱を空けてしまったオッペンハイマーという科学者の、善悪が渾然一体となった人間性を浮かび上がらせ、彼の 思惑や社会的地位を、時系列を組み替えハードなテーマながらエンターテインメントとして見事に創り上げた。「あの 時代に何が起こっていたのか目撃して欲しい。

山崎貴 映画監督

====================================================================凄まじい映画体験。人類が悪魔を生み出す瞬間を全身震えながら目撃する。 ノーランの最高傑作であり、正攻法で描く反戦映画。間違いなく今年の見るべき一作です。

白石和彌 映画監督

====================================================================映画の中でいかに物語を伝えるか。数奇な運命に翻弄された実在する人物を紹介するか。 善悪のように単純化されることのない複雑な混沌が渦巻く世界がそこにある。 かつて体験したことのない人生が体感できる。これこそ、新しい映画なのだ。

樋口真嗣 映画監督

====================================================================

映画史に燦然と輝く「市民ケーン」に匹敵する偉業をクリストファー・ノーランは成し遂げた。音と光のインパクトで オッペンハイマーの心奥に飛び込む導入部から、核分裂の連鎖反応のようにぶつかり火花を散らす華麗なる演技陣の対 決が続く終盤部まで、ノーランの緻密な映画力学に圧倒される。日本の映画人としては、この大傑作に応ずる形で、破 壊の雨(レイン・オヴ・ルイン)を浴びた広島・長崎の人々の姿を克明に描く義務を、震えが来るほど強く感じた。 

原田眞人 映画監督

====================================================================

広島・長崎への原爆投下に対する評価。魔女狩りのように吹き荒れた赤狩り。そして最先端科学と軍事の接合(デュア ルユース)。「アメリカの戦後における3つのダークサイドに、ノーランは正面から切り込んだ。 その手法は徹底して映画そのもの。濁流のようにあふれる映像と音。だからこそ透けて見えるオッペンハイマーの苦悩 と絶望。断言できる。「「間違いなくノーランの最高傑作だ。

森達也 映画監督、作家

====================================================================

「核兵器は狂気の天才のしわざ」なんて逃げ道は、この映画にはありませんでした。 科学は誰にでも微笑みかけるし、私欲はどこにでも罠をはる。けれど、人はいつでも善意を宿すことができる。 この 映画に関わるすべての人の善意と勇気に感謝するばかりです。
こうの史代 漫画家「この世界の片隅に」

====================================================================

天才物理学者の一生を彩る才気と驕りと判断ミス、静かな没落。悍ましい兵器の開発をつぶさに描き、主人公の視点か ら遠く離れないことでむしろ破壊をいまだ正視できないアメリカの矛盾と、本人の呵責を鮮やかに炙り出した力作。 

ロバート キャンベル 日本文学研究者

====================================================================心が深く、えぐられました。物理学が世界を変えていく、それが物理学者の生活感情に深く結合している。僕が漠然と 感じてきたことが、非常にリアルな体験へと変換され、一挙に心になだれ込みました。僕は、なすすべがありませんで した。本作は物理学者の心に迫る映画であると同時に、人類に問いかける、傑作です。 橋本幸士 物理学者

朝長万左男(ともながまさお) 医師、長崎県被爆者手帳の会友の会「会長」

====================================================================あれだけの悲劇を経験してもなお私達は手にしていないものがある。目を逸らし、面倒くさがり、遠ざけているもの。 それは「政治」への関与だ。馬鹿馬鹿しい政治家の権力闘争は放置され続け、科学を暴力へと貶めていく。日本人だか らこそ、この映画を見るべきだ。 

堀潤 ジャーナリスト 

====================================================================

『オッペンハイマー』は『アラビアのロレンス』を想起させる。どちらも、明晰で鋭敏で繊細で、しかし評価をめぐっ て物議を醸した人物の映画だ。謎めいた化学記号のようなその肖像を、クリストファー・ノーランはめざましい手腕で 描き上げる。イメージはもちろんのこと、情感やオブセッションを「積み重ねる力」に眼をみはった。
芝山幹郎 評論家====================================================================

この映画は衝撃の連続でした。天才の見ている世界はこうなっているのか、と思わせる美しい映像と音楽の世界観に。 歴史の大きな波と人々の思惑が重なり合ったストーリーの重厚さに。世界を変える未知の技術への興奮とその影響力へ の恐れは、開発者の手を離れたが最後、それらの運命を決めることはできないのでしょう。 人間は知的好奇心を抑え込むことはできない、そして新たな技術を必ずしも望ましい形で利用できるとは限らない。技 術の進歩著しい今に生きる私たちに過去の天才達はどんなメッセージを残すのか想像せずにはいられません。 そして、被爆国日本に住む私たちはこの映画から何を感じ、どんなメッセージを世界に伝えられるのでしょうか。 

トラウデン直美 モデル、タレント

====================================================================

オッペンハイマーは英雄ではなく、矛盾に満ちた人間である。 科学者の研究成果が、国家によって殺人兵器に利用されたため、彼は道義的責任に苦しむことになった。 彼が感じた世界の破滅への危惧は、いま現実となってわたしたちの世界を覆っている。 核の脅威を秘匿する危険性を訴えたために、彼は赤狩りの標的になった。その頃の空気は今の時代にも満ちている。 そして足を踏み鳴らして、彼を英雄として迎える研究所員の姿は、民衆が国家にからめとられる状況を暗示しているよ うだ。

それゆえ、もう一度観て、核抑止力を信奉する国家とは何か、を考えたい。
平岡敬 元広島市長====================================================================数奇な理論物理学者ロバート・オッペンンハイマーに聞こえていた発明の漣(さざなみ)は、想像し難い原爆という全て を飲み込む大波となり、歴史という海原を超えて我々の魂にこだまし、放射能という戦争が生んだ深い痕跡を残してゆ く。忘れられない傑作。
細木信宏 NY在住映画ライター====================================================================世紀の発見が人類の未来を永遠に変えたばかりか、国にも見放された男の混乱と苦悩をかつてない映画的表現で描き、 観客を物語に没入させる。「オッペンハイマーの原爆開発を美化するのではなく、想像の範疇を超えた悲劇と後悔に苛 まれた研究者の運命を描く“反戦映画”。
平井伊都子「LA 在住映画ライター

====================================================================

マンハッタン計画を時系列で捉えると単調な人間讃歌になる.予期はできたが予期せぬ結果,その利用と称賛,自己批 判,これは研究者当人以外には理解し難い内的葛藤がある.その内的葛藤に切り込んだストーリーを時系列を絡み合わ せて提示することで作品としての旨みが作り込まれている.難解か?そんなことはない.何より単純に原子爆弾の圧倒 的エネルギーの暴力性が音と光で満ち溢れ,我々の脳裏に様々なカタルシス,畏怖や悲しみを想起させる.

落合陽一 計算機科学者

====================================================================

物理学をここまでスリリングに描いた映画は前代未聞だ。しかも極秘の開発プロジェクトの内部を、インサイダーの視 点でぼくらに見せてくれる。見事なセリフの刺激は絶えず脳を覚醒する。人類初の核兵器を作ったオッペンハイマーた ちこそ、最初のヒバクシャにもなったことが、身にしみる。
アーサー・ビナード「詩人、絵本作家

====================================================================

日本での公開は全世界より大きく遅れた。日本人には過酷過ぎるのか?「 否!強烈な反戦映画であり、繊細な科学者の葛藤を想像を超えた編集と大迫力の音響で描く IMAX で見るべき伝記映画 などこれまで存在しなかった。
アカデミー賞 7 部門受賞は伊達じゃない。戦争におけるアメリカの基本精神は今も変わっていないのだ。日本人こそ見 るべき映画だ。

笠井信輔 アナウンサー

====================================================================ナチスよりも先に原爆開発に成功することは、ユダヤ人であるオッペンハイマーにとって差別との戦いでもあった。ただその「大成功」は永続的な苦しみの拡大再生産の始まりだった。そこに至るまでのオッペンハイマーの心の動きを追 体験できるのが、この映画だ。

前嶋和弘 政治学者

====================================================================

世界を崩壊させるかもしれない、恐ろしく、興奮する場面に居合わせた。「 映画「オッペンハイマー」は見る芸術じゃなく、体感する芸術だ。 

中江有里 女優、作家、歌手

====================================================================

神の力を手に入れようとする人間、男たちの、情熱と、欲望と、その尊大さと卑小さに戦慄する。その美と恐怖と自己 中心的な思考を残酷なまでの緻密さで織りあげ、私たちに体感させる。
小林エリカ 作家、マンガ家

====================================================================

 

 

『オッペンハイマー』

2024年3月29日(金)よりミッドランドスクエア シネマほかROADSHOW

公式サイト

 

STORY

第二次世界大戦下、アメリカで立ち上げられた極秘プロジェクト「マンハッタン計画」。これに参加した J・ロバート・オッペンハイマーは優秀な科学 者たちを率いて世界で初となる原子爆弾の開発に成功する。しかし原爆が実戦で投下されると、その惨状を聞いたオッペンハイマーは深く苦悩するよ うになる。冷戦、赤狩り―激動の時代の波に、オッペンハイマーはのまれてゆくのだった―。

 

 

DATA

●監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン

●製作:エマ・トーマス、チャールズ・ローヴェン

●出演:キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.、フローレンス・ピュー、ジョシュ・ハートネット、

ケイシー・アフレック、ラミ・マレック、ケネス・ブラナー

●原作:カイ・バード、マーティン・J・シャーウィン 「オッペンハイマー」(2006年ピュリッツァー賞受賞/ハヤカワ文庫)

 


 

(C) UniversalPictures.AllRightsReserved.