お客さんの1人が
ようやく、自分の味方を始めた
田舎からたった1人で上京して
ちゃんと家賃払って、自炊して 仕事見つけて 保険払っての一人暮らし。
それが「自分を大切にしてる」ことだと言っていた。
確かにえらい。すごい。ちゃんとしてるし、立派だ。
料理をして それを誰かにふるまったり、縫い物をしたり 小物を作っている時がすごく幸せなんだそうだ。
そういう毎日を過ごしたいの?と聞いたら
「息抜きみたいなもので、こればっかりやりたいわけじゃないから。」と言っていて
「仕事はやめたいんだけどね。でも、そうすると、ちゃんと生活できなくなるから」
ふーん、そうなんだ。としか答えようがなかった。
「仕事はやめたいんだけど、いい人ばかりで」
ふーん。
「やっぱり、仕事やめたい。でも、社員候補にならない?って声かかって」
ふーん。
社員候補となり、休みの日には旅行に行き、おもしろそうだからと楽器を習ったりして
それができるのは仕事があるからだと言っていた。
たまたま入ったお店の接客に ありえない!ちゃんと仕事してほしい!と憤慨していたり
また旅行に行ったり ボイストレーニングを受けたり 友人とランチして
やっぱりそれができるのは やめたくても、仕事をちゃんとしているからだと言っていた。
根が真面目な人だから、ちゃんとしたいんだと思う。「ちゃんとすること」を批判する人もいるけれど、とても素晴らしいことだ。
素敵だな、と思う雑誌の切り抜きや 写真や本が目につくようになって、それがどんどん溜まっていったころ
ついに彼女は「仕事をやめたい」という自分の声をちゃんと聞くことにしたらしい。
そして聞いてあげて終わりではなく
ちゃんと実行に移した。
だって、誰でもない自分の声だったから。
「ちゃんと生活できなくなる」と言っていた自分を敵に回してまで
初めて「仕事を辞めたい」彼女自身の味方をした。
どうしてもちゃんとしたい彼女は
料理して 誰かに食べさせて喜んでもらえて、
縫い物をしたり、小物を作って喜んでもらえることを ちゃんとし始めて
自分をか弱くて消えてしまいそうなところにだいじにだいじに置いて
批判や非難から 必死で守る最強の味方をしていたのに
短い期間で自分をとても高いところに掲げるようになった。
彼女の「ちゃんと」な真面目さは とても大きな自信になって
自分にさえ従えばいいのだと 自分を敬い、崇拝すらし始めている。
なんかね、すごい人をお客さんにしちゃったんだなあ
楽な仕事をさせてもらってるよなあ、と。
仕事って、そういうもんだよねぇ