おもらいさん | 夢が実現するしくみがわかれば、私たちはもっと自由になる  君塚由佳

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「おもらいさん」を知っていますか?

大姑さんと 姑さんは 「昔はよく来てくれたのよ」とよく言っていました。

「おもらいさん」が何であるのか知らないまま、遠い親戚なのかな?くらいにしか思っていなくて
実際に会ったのは 結婚してこの家に来てから10年くらいたってから。

庭を掃除していたら、ボロボロの服を着た 知らないおじいさんが
「おもらいです」と言って木のお椀を差し出してきたんです。

「は?」と固まった私。

家の中からと 姑さまが飛び出してきて、「あらあらあらあら!ちょっと待っててね!今いいもの持ってくるから!」と言って 台所に走っていきました。

庭に その見知らぬおじいさんと2人になった私は 全身硬直が取れないまま。


お姑さまはすぐに おにぎりだの おせんべいだの ペットボトルのお茶まで持ってきて
「ごくろさまです」とおじぎまでして見送ったのでした。

おじいさんは とてもおとなしくて 穏やかな方でした。
丁寧に何度もおじぎをしてゆっくりゆっくり歩いていきました。

でも私は

おもらいさんって ホームレスじゃん!!
下手に親切にして 目をつけられたらどうするの?!
子どもだっているのに こわいよ!もうやめてくださいよ!!

半泣きで訴えたものの、「あらあ。おもらいさんは 福の神なのよ?」と取り合ってもらえず。

しかもちょっとネットで調べたら おもらいさんがやってる
乞食行為、つまり物乞いの行為は軽犯罪法で原則禁止されているみたいだし!!!

仕事から帰ってきた夫にも 言いつけてみたけど
「なつかしいなあ。おもらいさん。昔はよくいたんだよ」で終了。


いくら言っても心配で仕方がない私に、大姑さまとお姑さまの二人がかりで諭されたのは
仙台四朗の話。


明治から明治にかけて仙台に実在した「仙台四郎」。

彼が訪れる店はなぜか繁盛することから「福の神」と呼ばれていたそうです。

知的障害があり、「バアヤン」くらいしかほとんど話すことができなかったようです。

何か特別なことをしたかと言うとそうではありません。
いつもニコニコしていて、何となくふらっと店に訪れてはご飯をごちそうになるだけなんです。

四郎を招き入れた店は、不思議にも必ず繁盛することから、どこも喜んで迎え入れたようで。
素直な性質ではあったようですが、気に入らない店には誘われても決して行かなかったそうです。

四郎の評判は瞬く間に広がり、仙台市中どこへ行っても四郎に限りタダ。汽車も無賃乗車ご免。

まさに超VIP扱いです。今でもその魅力は尽きず、写真や四郎の人形を飾る店が多いとか。






福の神は一見、貧乏神のような姿で現れ、人の心を試すのかもしれません。

そして本当に真面目に働く心根の良い人に近づいてくるのかもしれません。


私がおもらいさんと出会ったのは それっきり。

間もなくIT業界から離れて 思いもよらない形で企業の研修やコンサルティング業務に関わるようになります。

あのおじいさんは あれから来ていません。
かわりに、毎年 ツバメが来るようになりました。
今年も 巣を作っています。

フンが落ちたり 騒がしいからと、最近は嫌われがちだそうですけれど ツバメは繁栄の象徴。

落ち着いて子育てできる場所だと認定していただけるのは 何よりの誇りです。

もうちょっとしたら ヒナがかわいい顔を出してくれることになると思います



また おもらいさんが来た時に お姑さんみたいに親切にできたらいいなあ。