「生きるために」
Ⅰ
人はなぜ
絶望するのだろうか
生きるためでは
ないか
生きよう生きようと
いのちが
無我夢中で
求めるからではないか
*
生きようとする力
死のうとする力
両者の
せめぎあいのなかに
人間は
置かれている
安息は
すべてを包む
*
天使と悪魔
希望と絶望
いのちと死を抱えて
生きている
死を超えて
いのちを得る
絶望は
生きるためにある
*
宇宙は与える
あらゆるものを
人間すべてを
それでも生かそうと
絶望の果てに
いのちを失ったものよ
あなたの
いのちの跡は記されている
*
わたしには
なにもない
目覚めて
息があるだけだ
この一瞬を
尽くそう
いただいた
すべてのいのちのために
Ⅱ
明るい方は生であり
暗い方は死というイメージを持ってはいないか
むしろ
ほんとうのいのちは
闇のさらに言えば
死の奥にあるのではないか
いのちの源は
人間を遥かに超えているから
***
絶望とは
なんだろう
なぜ人間は
絶望するのだろう
死への
願望だろうか
生きているだけで
いいはずなのに
*
何かを
求めさせるのだ
絶望を
通して
心の
奥の奥へ
さらに聖なるものに
出会うために
Ⅲ
早朝のビル街は どんよりと
しずかに試行錯誤が
入り乱れます
過去と未来が
酔いつぶれ 重なり合って
産声をあげます
目をこすりながら
うつろな希望が
鍵をあけます
荷を積むトラックが走り出し
工事現場から声がして
すずかけの葉が光にすけると
さあ
きょうが
待ちのぞんでいます
朝は
いちばん疲れた人のところから
はじまるのですから
それでも生きています
それでも
生かされているからです
motomi
※ あなたがそこにいること、決して偶然ではありません。