お隣のミニチュアダックスがお気に入りの孫が初めて口にした言葉はワンワンでした。
ワンワン、ニャーニャー、ザーザー、ドキドキなど音・声・動作を音声化した言葉をオノマトペと呼びます。
こうした言葉は単純にイメージしやすく人に伝わりやすいものです。
血液ドロドロ・サラサラも伝わりやすいオノマトペです。
ドロドロ血液だとどうなるのでしょうか。
ドロドロ血液は流れが停滞しやすいのでコレステロールが血管壁に沈着しやすくなります。
またプラークで狭くなった血管内にドロドロ血液が流れることで血流の遮断が起き心臓発作や脳卒中リスクが高まります。
各組織への血液を流すべく動脈内の抵抗が高まると血圧が上昇します。
静脈系では血流量が減少することで血液粘度が増して血栓リスクが高まります。
しかし血液がドロドロかサラサラかについての検査数値は存在しません。
血液検査ではコレステロールが高いと薬が処方されますが、意外なことにコレステロールが高いことが血液ドロドロに直結しません。
逆にコレステロール薬で血液がサラサラになるとは言えません。
またコレステロールが高い=動脈硬化でもありません。
コレステロールは体にとって大切な物質でもあり、コレステロール仮説(1960年代の動脈硬化→心臓病になるという有名な説)は近年の研究で否定されています。
コレステロールが高い状態が続くと悪玉や超悪玉コレステロールが動脈血管の内壁に溜まりそれが「活性酸素」により酸化して老廃物(プラーク)ができます。
それが破け血栓ができ脳梗塞、狭心症、心筋梗塞などが起きます。
すると病院で「血液サラサラの薬ですよ」と薬が処方されます。
これは動脈という血管の硬化ですから動脈対応の薬(抗血小板薬)が処方されます。
一方静脈では不整脈や心不全などで血栓が形成され心房細動、肺塞栓、静脈血栓症が起きます。
この場合は静脈に対応する薬(抗凝固薬)が処方されます。
抗血小板薬(バイアスピリンなど)は血小板の凝集を防ぎ、抗凝固薬(ワルファリン、リクシアナ)は血液中の凝固に関わる因子を阻害することで血栓を防ぎます。
これら以外に青魚のEPA(又はEPA・DHA)製剤も血栓をできにくくします。
ただ血栓をできにくくするからドロドロ状態を改善するとまでは言えません。
血液は血漿と血球成分(赤血球,白血球,血小板)に分類できます。
疾患など特別なケースは別にして一般的な日常生活でドロドロ原因になりやすいのは血漿と赤血球です。
血漿は9割は水分で残りはアルブミン、抗体、凝固因子等の蛋白質で、さらに少量の無機塩類、糖質、脂質、酵素を含みます。
脂質のコレステロールがよほど高くても影響は少ないです。
むしろ熱中症などで血管内の水分が減少すると血栓ができやすくなります。
血球成分の大部分を占める「赤血球」が原因になるのには二つのパターンがあります。
一つはまるでコインが連なるように赤血球同士がくっついてしまう状態(連銭)になることです。
赤血球の膜は通常(-)イオンに帯電しているので互いに反発しあいくっつきませんが赤血球の細胞膜に異常が生じることで連銭が生じます。
もう一つは「赤血球変形能」です。
赤血球は自身の直径の半分以下の微小な毛細血管を通過しなければなりません。
そのため赤血球がクニャリと自分の体を変形する必要があるのです。
赤血球は血管壁に擦れる圧力を感じることで変形しています。
これは人体に備わる手触りや、体の位置、肺が空気を吸う、膀胱に尿が溜まるなどの感覚の受容体が赤血球の表面にも存在する(PIEZO1)ため可能なのです。
さらに哺乳類以外の脊椎動物の赤血球には核がありますが哺乳類の赤血球には核がないのです。
核のない赤血球は変形能が向上して毛細血管をスムースに通過するため、哺乳類の脳の進化にも大きく寄与したという説もあります。
ちなみにこの受容体は血管内皮細胞にも存在しており、血液の流れに沿って内皮細胞は向きを整えています。
この働きで毛細血管だけでなく通常の血管を流れる際の抵抗も小さくします。
この変形能が低下すると連銭は起きやすく、連銭が起きて血流が滞ることでさらに連銭が起きやすくなるという悪循環に陥いります。
連銭と変形能低下により血液は流れにくくなり粘度が高まりドロドロにつながります。
その結果冷え性、疼痛、頭がぼーっとする、めまい、目の下のクマ、皮膚がくすんだり乾燥するなどが起きます。
東洋医学の「瘀血」に近い症状です。 連銭は喫煙や中性脂肪、活性酸素で赤血球の膜機能が低下することで起きます。
変形能低下は鉄分不足・遺伝・高山病、そしてやはり活性酸素などが要因になります。
活性酸素は慢性炎症、高血糖・過労・寝不足・ストレス・飲酒・喫煙・更年期などで発生します。
つまりサラサラ血液を保つには活性酸素を消す、活性酸素を出す炎症を抑える、赤血球の細胞膜を正常に保つことです。
血液中の活性酸素の状態を調べる方法としては、「酸化ストレス」を測定する方法があります。
しかしこの検査はどこの病院でもできるほど一般化していません。
普通の病院で調べる方法としては炎症によって増える物質(高感度CRP)を調べる検査があります。
この数値が高いと活性酸素が多いと言えるでしょう。
活性酸素とは吸った空気の中の酸素が活性化されたものですが、悪い面だけでなく免疫機能には必要なものでもあり通常の生活ではそれほど気にすることはありません。
ただし慢性の炎症がある方は持続的に活性酸素による酸化ストレスにさらされることになります。
インフルエンザなどは短期的な炎症ですがぜんそく・アトピー性皮膚炎、リウマチ、歯周病、慢性痛、肥満、心臓病、糖尿、潰瘍性大腸炎などは慢性炎症です。
ちなみに動脈硬化も慢性炎症です。
慢性炎症の原因になっている疾患を治すことは過剰な活性酸素対策にとても大切です。
(*参照:慢性炎症)
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