-前回のあらすじ-

締日のラストオーダーで、スーパーエース・マイちゃんから「リシャール2発の投下」により見事奇跡の大逆転で初のNo. 1を獲得したケイト。

敗北を受け入れられず荒狂うセツナを尻目に、歓喜のケイト達。様々な人間の思いが交錯する中、ホストクラブの締日が終わりを迎える。


  お​会計

マイ「ケイトーーー」

僕「マイちゃーーん」


周りの人間が騒ぎに騒ぎに騒ぎまくって、ハイタッチやら抱きつきやらぐちゃぐちゃにお祝いされました。


僕等2人は少々ぐったり気味に。


陽介「気張った後で疲れたよね笑」

マイ「疲れた‥」

僕「確かに笑」


内勤「本日は、ありがとうございました!こちらお会計でございます。」


マイ「‥ふぁああああ嫌な瞬間。絶対あたしだけじゃないよね、こう思ってるの」


僕「えええ?そんな事ないよおおおお??」

マイ「うざい」

僕「はい、すいません」


カバンから、四角い固体が現れます。


100万の束が5つテーブルの上にドンと置かれ、別の封筒から、輪ゴムでとめられた50万がその上に更に置かれました。


改めて見ると、物凄い景色でした。

伝票をL字型にして、入り切る訳もない大金を内勤が膝をついて「ありがとうございます」と受け取りました。


マイ「足りなかったら教えてください」

内勤「めっそうもございません」

マイ「はい?」

内勤「あっ‥!いや足りると思います‥!」

マイ「‥いやいや違くてですねww」

内勤「マイさん、めっちゃ可愛いです!」

マイ「ありがとうございますw」


内勤もテンパリますよね。

緊張しますわそりゃ。

本当に何言ってるか意味不明でした。

本人なりに「どうにか感謝を伝えたい」っていう気持ちの現れと推測しました。


俺みたいな人間にこんな大金が動いていいのか?

どういう事なんだ。

生まれて初めて、500万を超えるお金を持った時にその重みを感じました。思ったより重い。ずしっとくる。一気にマイちゃんが神々しく見えてきました。


マイ「ケイト、嬉しい?」

僕「この顔見て嬉しいかわからない?」

マイちゃんが決して好きではない変顔を敢行。


マイ「可愛い可愛い!もう本当可愛い!」


かつてないほどの上機嫌でした。


僕「マイちゃん、No. 1獲らせてくれてありがとう」

マイ「頑張ったよね。2人とも頑張った頑張った」


良い感じの余韻。これがNo. 1か


僕「マイちゃん、ちょっと他の卓送り出してくるから待ってて!」

マイ「ひゅー!!売れっ子みたいな事言っちゃってさ!」

僕「ちゃうねんちゃうねん!今日から売れっ子やねん!」

マイ「いってらっしゃい!自称売れっ子さん!」


ゴリラヘルプにマイちゃん卓を任せ、他の卓の送り出しへ。


  ​さとみの送り出し

僕「さとみ!!やったぜ!!」

さとみ「‥おめでとう」


泣いてる。めっちゃ泣いてる


冷酷「ケイト君。本当におめでとう!!!」

僕「ありがとうございます!」

さとみ「ぅえええーーーーーん!!!!」


僕「なんでそんなに泣いてるの?笑」

冷酷「ナンバー発表終わった瞬間からずっと泣いてましたよ」

さとみ「だっっぁあああってさぁ、ケイトがさぁあああああ、No. 1だよぉおお?えっっぐえっっぐえっっぐ‥嬉しいじゃああああん」

僕「ありがとうな、さとみ」


冷酷「お会計はいただいてます」

さとみ「超無理したんだよ!私も!でもさ‥」

僕「‥‥」


さとみ「ケイトには凄い子がいる‥それに比べて私、何にも出来なくてごめんね‥ケイト‥本当ごめん‥」


僕「何言ってんだよさとみ。売上差聞いてたか?」

さとみ「ふぇえ?」

僕「15万差だぞ!!お前がやってくれなかったら、結局No.2だったんだよ」

さとみ「ふぇええ?そうなの?」


冷酷「だから何回も言ったじゃないですか!」

さとみ「聞いてないよおお?」

冷酷「さとみちゃん、怖がってナンバー発表の時ずっと下向いて耳を塞いでたから」

さとみ「だって怖いじゃん、あの展開!馬鹿なのあんた!」

冷酷「15万差でケイト君がNo.1って何度も伝えましたよ?」

さとみ「どうせ、あんたのつまんないホストークだと思って嘘だと思って聞き流してたの!」

冷酷「僕はさとみちゃんに本当の事しか言ってないですよ!目が小さいねとか後ろ姿は可愛いとか、ちゃんと言ってるじゃないですか!」

さとみ「うるせー○ね!」


この2人のやり取りは腹がちぎれる程面白かった。


さとみ「じゃあ私も少しは役に立てたんだね‥」

僕「そうだよ!本当にありがとう!」

さとみ「‥けど、あの子凄すぎる‥」

僕「あの子って?あの子か」

白々しくすっとぼける僕。

さとみ「1人しかいないでしょ。凄く可愛いし、リシャール2発って‥」


僕「うん、確かにそうだな」

さとみ「‥‥私、可愛くないし、あんなにお金使えないし。ちょっと惨めだなぁ‥」


新人当時は、こういったセリフに対して「いやいやそんな事ないよ!」の返ししか出来なかったのですが、今思うと敢えて何も声をかけずに"行動で示す"というのも1つの正解だと思っています。


僕「さとみ。色々思う事はあると思うけど、今日やってくれた事に対しての感謝は変わらない。ありがとう」

さとみ「うん‥けど今日来て良かった!最後、ごめんね辛気臭い感じにして。おめでとう!」

僕「ありがとう!」

冷酷「じゃあNo. 1記念に写真でも撮りましょう!ささっケイト君、オリシャンもって!」


両手にシャンパンを持って満面の笑みでのツーショットを撮り、送り出しました。


この日に撮った写メを、さとみはずっと大事に保存してくれていました。

辛い事があっても、この写メを見て元気になれる。

お守りのような写メだと言っていました。


多分、こういう何気ない写メを見返したり、何気ない言葉というのを女の子って凄く大切にしてるんじゃないかなって感じます。


  ​真相

僕「マイちゃんおまたせ!」

陽介「お!No. 1おかえり!ん?No. 1!よおNo. 1!」

半ニヤケでNo. 1弄りをしてくる陽介さん。

僕「いやいや、弄らないでくださいよw」

陽介「は?弄ってないけど?事実を言ってるだけじゃん?どこが弄ってるの?」

マイ「うざいうざいうざい!」

陽介「いえーいカンパーイ!」


ゴリラヘルプ「マイさん‥僕はね‥本当今日‥感動しましたよ。はい。」


肩を振るわせながら、死ぬほど飲まされてベロベロのゴリラ。ここはきったねえ動物園専用の居酒屋か?


僕「マイちゃん、色々聞きたい事があって」

マイ「なんで、リシャール2発いったのか?って聞きたいのかなぁ?」


僕の顔を覗き込んでくるマイちゃん


僕「そう‥なんで‥?元々そのつもりだったの?」


マイ「今日、来る時に大きい事したいなって思いながらきてたの。そしたらケイトがラストオーダーの時"リシャールいきたい"って言ったでしょ?スイッチ入ったよね笑 本当に世界で1番ケイトが好きだって思えた。あたしと同じ事を考えてくれた事、真剣にNo. 1を獲りにいこうって思ってくれた事が嬉しかった。だから、あたしも本気になれたの。最初から本気だったけどーー」


僕「‥そうだったのか」


マイ「でも、あの人(セツナ)もやってくるだろうなって思ってて、実は陽介さんに中間の売上差を聞いてもらったの」


僕「‥‥!」


マイ「そしたら、陽介さんが帰ってきて、指で2と5(250万差)って教えてくれた。すぐ自分の卓に戻っちゃったけど笑」


陽介「ラストオーダー締切前のルール範囲だからな、一応言っておくけど」


マイ「考えれば考える程、、リシャールで勝てるかなぁって不安になったの。その後、何となく出し惜しみしちゃいけないって直感を感じたの。運任せにしちゃいけないって」


陽介「で、ケイトがラストオーダー出しに行った後にマイちゃんに呼ばれて、やっぱり2発でって言われたんだ。ダッシュで回収時間1分前に間に合ったから、俺から内勤に伝えた。ぶっちゃけめちゃくちゃビビった。5秒間で8回くらい本当に?って聞き返したわ。そしたら、"これは女の意地だからサッサと出してこい"って言われたわ」


マイ「はずっ笑」


陽介さんは、マイちゃんからのサプライズリシャールを知って、短い時間で現金がある事(売掛にならない)、シャンパンコールは自分がやる事、他のキャストに漏れないよう細心の注意を払えと指示を出していたそうです。


マイ「絶対勝ちたかった。ケイトのやつれた顔とか見て本当に勝ちたかった!何より、あたしは負けっぱなしが1番嫌なの!」


僕「そうだよな‥」

一瞬で色々過去の因縁を思い出しました。


マイ「あたしもこの数週間、ずっとこの締日の事考えてた。ケイトにこんな大金使う意味があるのかとか、なんでこんなに一生懸命なんだろうとか。でも結局わかんなかった。でもケイトが毎日毎日あたしに連絡くれた事とか、品川連れていってくれた事とか、何よりもあたしを必要としてくれてる事とかが、不安を帳消しにしてくれた感じ。ケイトをNo. 1にする事が、あたしの使命って思えた。だから絶対に勝ちたかった」


僕「ありがとう‥」


マイ「本当はもっと簡単に勝てると思ってた。ごめんねケイト。あたし1人でNo. 1にしてあげるって言っておきながら、結局他の女の子も頑張ってくれてギリギリ獲れたNo. 1になっちゃった。今日来てた子(さとみ)も、きっとケイトが大好きなんだろうなー。もっとあたしも頑張らないと」


僕「いやー余裕でエースよ?」

マイ「わかってない!!!もう嫌いー!」


マイちゃんの言いたかった事、本当は理解してました。同時にマイちゃんから、他の女の子への感謝の気持ちも伝わってきました。

本来、ホストの世界は、被り客はウザくて嫌いっていう感覚なのですが、マイちゃんの場合もちろんその感覚もありながらも、「ケイトをNo. 1にする」という目的を達成する事が何よりも第一優先だったんだなと思います。

勝つ為に、陽介さんも味方につけたマイちゃん。

ラストオーダーのやり取りもそうですが、マイちゃんと陽介さんの協力プレイによって勝利に近づいた事は紛れもない事実です。


先輩として僕の勝利の為に、この1週間ずっとヘルプに着いて単価を上げまくってくれた。

そして、気難しくて掴みどころのないマイちゃんのハートを握ってる。


陽介さんすげえ。そしてありがとう。


この2人には感謝しかないです


  ​マイちゃん送り出し

陽介「じゃあそろそろ、出ようか!」

マイ「はーい!」

僕「じゃあ皆んなで下まで見送りに行こう」


店内のゲストはマイちゃんと‥

セツナエースのみ。


キャスト達「姫ーー!ありがとうございましたー!!」

僕「お客様おかえりでーす!!!」

キャスト達「あーざしたー!!!!No. 1No. 1No. 1!!!」


まだ揉めてるセツナ卓。

泣きじゃくるセツナエースの横をマイちゃんが通ります。

心の中で「何か起きろ」と願う僕。


セツナエースがマイちゃんを睨みつけます。

そして、マイちゃんそれに気が付き‥‥



華麗にスルー



まるで「あんたなんか最初から眼中にない」「負けて泣くとかなんなんだよ」的な無言のメッセージを感じました。


王女の余裕でしょうか。

セツナは内勤と揉めており、僕にも気が付きません。ま、どうでもええか、こんな奴ら。


エレベーターで下まで送ると、代表がいました。


代表「マイ様、本当にありがとうございました」

マイ「くるしゅうないでございます」

陽介「これから2人でどっか行くの?」

僕「どうする、マイちゃん?」

マイ「行きたいーー」

僕「じゃあ行こう待ってて!」


代表「あ!!マイ様、今日もセツナが色々お騒がせしまいすいませんでした‥」

マイ「いえ、見直しました代表!好きです!今度ヘルプ着いてほしいです!」

代表「ええ!!!本当ですか!ありがとうございます!必ず着かせていただきます!!!」


フルスイングビンタがここで効いてきました。


代表「ケイト!マイ様お待たせしないよう、今日はすぐ出て大丈夫!今荷物持って来させるから!」


携帯で店に電話して指示する代表。

2分もしないうちに内勤が僕の荷物をもって非常階段を駆け降りてきました。

しごできかよ。


代表「お待たせしました!いってらっしゃいませ!」

マイ「ありがとう!ご馳走様でしたー!陽介さんもまたね!」

陽介「マイマイまたね!ケイト!おめでとう!」

僕「陽介さん、本当にありがとうございました!」

陽介「お前がNo. 1なら、俺は悔しさよりも嬉しさが大きいよ。これでライバルだ。けど来月はぶっ潰すからな!」

マイ「残念ながらあたしがいるのよ、陽介さん」


陽介「ううーーん。強いなぁー笑」

マイ「陽介さん本気出したら本当に負けるから手加減してね」


この人達、本当に仲良いなwwww


  ​アフター


僕とマイちゃんは、ご飯を食べに。

個室のある居酒屋に入って、今日の締日を迎えるまでの話とか色々話しました。

2人とも上機嫌でカラオケに移動し、僕の爆笑モノマネヒットパレードでマイちゃんを抱腹絶倒させました。

時刻は朝4時半。

歌舞伎町にいると時間の感覚がおかしくなります。


僕「マイちゃんそろそろ帰る?」

マイ「そうだねー」

僕「じゃあ酔い覚ましに少し歩いて帰ろか」


歌舞伎町を歩く2人。


マイ「ケイト。変わっちゃダメだよ」

僕「なにが?」

マイ「No. 1になっても、あたしを大事にしてくれる?」

僕「当たり前じゃん」

マイ「心配」


歌舞伎町あるあるですが、明け方は酔っ払い同士のケンカが多く、この日も道の真ん中でめちゃくちゃケンカが勃発してました。

その気がなくても巻き込まれる街なので、迂回して新宿駅に向かいます。


僕「なんで心配なの?」

マイ「だって、これからお客さん沢山できるでしょ。不安じゃん。不安じゃないけど」

僕「どっちやねん笑」

マイ「‥」


僕「マイちゃん明日、予定は?」

マイ「明日は休み」

僕「俺も明日休みだから、どっか遊びにいく?」

マイ「行くに決まってるでしょ!」

僕「じゃあ今日泊まって、そのままディズニーでも行く?」

マイ「‥泊まるの‥‥?凄く恥ずかしいんだけど」

僕「俺寝てる時、結構大声で寝言言うらしいんだけど大丈夫?」

マイ「それは本当に気持ち悪いけど、今は好きだから大丈夫かも」


僕「寝っ屁もするかも」

マイ「そっち系も大丈夫」


純粋に疲れ切っていたのもありました。

この1週間の疲労がピークに達していました。

いくら当時は若いとは言え、ほぼ不眠不休のような生活をしていたのと、強いプレッシャーがかかる場面を経験し精神的にも限界を超えていたような気がします。

それはマイちゃんも同じで、相当クタクタの様子でした。

あと、何となくマイちゃんとバイバイしたくないっていうのもあったと思います。


そして‥

そのまま僕とマイちゃんはホテルに入りました。


歌舞伎町のホテルに入るのは初めてで不思議な感覚を今でも覚えています。


部屋に入り、上着を脱ぐ。


沈黙。


僕「今日、めっちゃ嫌な汗かいたから先にシャワー浴びてもいい?笑」

マイ「あ、ああ!どうぞどうぞ!笑」


一気にぎこちない2人


シャワーを浴びて着替えます。


マイ「あ、あ、あたしも入っちゃうね。べ、べつに、先に寝てていいから。ベッドも仕切り作ってもいいし、あ、あ、あたし、は、その、あれ、あのソファで寝るし」


僕「あー、いやまぁほら、せっかくだから一緒に寝ようよ笑」

マイ「い、いやだって、いびきかくかもだからさ!いいの!気を使わないで!」


マイちゃんは逃げるようにシャワーへ。


ヤベェ、なんか普通にホテルに来ちまった。


一気に酔いが覚める僕。

特に何の意識もせずに、ホテルに誘った僕。

疲れが先行してちゃんと後先考えてなかった。


マイちゃんがシャワーを浴びて出てきました。


マイ「あ‥どうぞ」


いつもと全然違うマイちゃん。

強気で、ミステリアスで、ツーンとした雰囲気のマイちゃんとはえらい違いです。


僕「疲れたから一緒に寝よう」

マイ「‥‥うん」


電気を消して一緒に布団に入ります。

壁を向いて包まるように寝るマイちゃん。


僕「マイちゃん。今日は本当にありがとう」

マイ「うん。あたしだけの力じゃないけど勝ってよかった」


僕「マイちゃんのおかげだよ」

出会った時の頃から今日までを振り返り、純粋に"ありがとう"が込み上げてきました。


そして、後ろから抱きしめました。


ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ


服の上からでも分かるくらいにマイちゃんの心臓の音が伝わってきました。


僕「マイちゃん‥」

マイ「‥ん?」


僕はそのままマイちゃんにキスをしました。

マイちゃんもこちらを向いて、僕の身体をギュッとキツく抱いてきました。


次回へ続く



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