京都のS様のW3!!とことん整備&車検でバッチリ仕上がりました!!
今回はこのW3の整備内容をご紹介いたします!
入庫時はプラグが真っ黒でアイドリングも不安定
スロットル開け始めが濃いので加速もスムーズでないなど問題あり。
S様が一生乗るつもりで購入された車両を「とことん整備」させていただきました。
全ての内容を1度にご紹介すると非常に長くなりますので
今回はエンジン不調にまつわる整備箇所に絞って紹介します。
まずは圧縮圧力測定。
右 10kg 左 11.5kg ばらつきはありますが十分な数値です。
キャブを取り外してインレットポート内確認。
カーボンなく綺麗な状態ですのでバルブシートは大丈夫そうです。
バルブステムにオイルも見られないのでオイル下がりも大丈夫そうです。
簡単ではありますがこれである程度エンジンの状態が確認できます。
まずはキャブレターの分解点検です。
当店まで乗ってこられたのでもちろんひどい状態ではありません。
定番ですがニードルジェットの内部に腐食があり内径が広がっています。
旧車の不調の定番箇所です。
メインジェットは腐食で片側は番手が読めません。
スタータープランジャーは交換されて間もない感じです。
以前はキャブの部品が入手できず調整のみで調子を整えましたが
今回はキースター製のキャブレター燃調キットを使ってO/Hします。
良い世の中になりました。
バルブクリアランス調整も行います。
OHVですのでこれから寒くなるのを見越して少しクリアランス大きめです。
最近は夏と冬の気温差がかなりありますので気にします。
信じがたいかもしれませんが、気温差でエンジンは伸びたり縮んだりしています。
真冬にキックがスカスカにならない様にしておくわけです。
続いて点火系の点検です。
点火時期、ポイントの状態はもちろんですが
40年以上経過したW系のガバナーは要点検です。
この車両もガバナースプリングが伸びていました。
お客様と相談して今回は「ユークランク」様でガバナーO/Hしてもらう事に決定。
早速ガバナーを取り外す為にYカバーを外しアイドルギヤを取り外し。
なんと!!アイドルギヤの位置決めのキーがせん断されておりました・・・。
これでは点火時期が合わないですね・・・。
ポイントの配線が当時物でカチカチです・・・。
配線被膜も割れて銅線が出ているところも・・・。
もちろん配線は新しい物に交換です。
ガラス繊維の保護チューブを使って熱対策もします。
今回はお客様のご希望でセミトラキットも取付けします。
Yカバー開けましたので、ダイナモチェーンとアイドラーギヤのダンパー点検。
アイドラーギヤのダンパーラバーは痩せてしまっていますね。
こちらもお客様と相談してどちらも交換しました。
ついでにダイナモも外して分解点検です。
ブラシは交換されておりましたので洗浄して組み付け。
点検することで安心して乗ることができます。
ダイナモの配線も固くなっていましたので交換。
ビニールテープは使用しないで配線保護チューブで絶縁です。
少しでもトラブルを防ぐように気を付けます。
ダイナモ、チェーン、アイドラーダンパー交換して組立です。
ガバナーもバッチリO/Hしていただきました。
スプリング交換、ガバナーウェイトのピボットシャフト交換など。
これでガバナーの「ガタ」が無くなり点火時期が安定。
特にアイドリングの安定に効果が大きいです。
イグニッションコイルは社外品ですが交換済みのようですので
今回は配線の補修を行うだけでそのまま使います。
オイルパンも外して点検です。異物もなく良い状態です。
ストレイナーも交換されていました。
いつの間にかオイルパンガスケット、Yカバーガスケットが販売中止に・・・。
今回はVesrahのガスケットセットを使用しました。安心の日本製です。
Wでは定番の作業ですが
キャブレターの取付座面のひずみを修正し2次エアリークの対策をします。
取付はS様から教えていただいた情報を参考に
今回はOリング無しでガスケットを使って取付けします。
面出しが出来ていればこちらの方がキャブが歪みにくいはずです。
キャブレター組立時に発見しました。
右のフロートチャンバーが新品でしたので凄いな~と思って見ていたら
チョークジェットの穴がありません・・・・。
恐らくW1~W1SA用のフロートチャンバーだと思います。
W3はスタータープランジャーを使用していますが、W1SAまではシャッター式のチョークです。
このままだと右のスターターが効きません。
穴あけ加工してスターターにガソリンが流れるようにしました。
チョークジェットは取付けできませんが・・・。
これで始動性も良くなるかと思います。
セミトラユニットはこの場所に設置。
シート下にしようかと思いましたが、W3にはリザーブライティングユニットがあるので
場所を確保できませんでした。
一通りの作業を終えエンジンを始動!
始動性も良好!アイドリングの安定感も抜群です!
W系はオイルが完全に温まらないとアイドリングしない事が多いのですが
ここまでしっかり作業をすると始動後まもなく800rpmぐらいでアイドリングします。
とことん整備ですので車体の整備も「とことん」作業させていただきました。
車体の整備は別の機会に紹介します。
全ての作業を終えて試乗しましたが入庫時の不具合は完全に解消です。
アイドリングも非常に安定していますので信号待ちで手放しできます。
極低速での走行でもギクシャクすることもなくスムーズに加速します。
追い越しなどの急加速時にもノッキングすることなく加速できます。
非常に扱いやすく、非常に乗りやすく、何よりも気持ちが良いです!!
点火時期の変更やキャブのセッティングの煮詰めなどをして完成となりました!!
年々価格が上昇しているW3。
このカラーリングは「彼のオートバイ、彼女の島」を思い出しますね!
BSA A10のコピーとよく言われますが見た目こそ似ているものの
内部はさすが日本製という感じで耐久性もあり非常に良いエンジンです。
今ではクランクのオーバーホールも可能になり
リプロパーツも少しづつ増えてきて維持しやすい状況になってきました。
ですが、最近までそういったパーツや修理技術がなかった事もあり
走ってはいるものの本調子ではない車両も多いのではと思います。
私も昔W1Sを所有していました。
http://blog.livedoor.jp/shoutrc/archives/53214645.html
このときはメカニックとしても未熟でしたし部品もなかなか入手できず
今となっては完調だったとは言えないと思います。
W系にお乗りで不調や不安定でお困りの方は
オーバーホールや整備には今が非常に良い時だと思います。
お困りの事がございましたら是非ご相談ください。
実はW系の故障の多くはその「振動」が原因だったりもします。
そのあたりの対策は車体の整備に多くの工夫をすると改善されます。
また今回の車体整備の方もご紹介したいと思います。
お楽しみに!