あゆみよりプレゼントテキスト。あるクリスマス物語 | 藤沢あゆみオフィシャルブログ Powered by Ameba

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作家。著書29冊。相談30000件超。ananによる信頼できるカウンセラー20人の1人。NHKEテレハートネットTV出演。2023年4月「バズる!ハマる!売れる!集まる!WEB文章術 プロの仕掛け66」発売9日で増刷、7月18日枚方蔦屋書店で101人講演会開催

「あたし、どうせ予定ないですから」
そこまで言わなてもいいのに、つい自虐してしまった。


「助かるねー、流石に明日はみんなダメらしくて」...
3ヶ月前から、お年寄りの食事介護のアルバイトをしている。
シフトは希望を出してきめていくのだけど、
イブの日の明日は、誰も空いてなくて困っていたそうだ。

イブの日のシフトが空いていて、正直なところホッとした。
女友達に声をかければ、飲みにくらいいけるかもしれない。
でも、クリスマスに招集かけれそうなメンツは、
前彼とまだ続いてると思ってるから、
いちいち説明するのもめんどくさい。

頑張ってみようかなと思った男子もいないでもない。
だけど、なんだかもう12月に入った時点で
あたしは勝負から降りていた。

それでも、何もなしは嫌だなと
往生際悪く思っていたところ、
この日のシフトがあいていると聞き、
あたしは迷わず志願した。

不毛なことはしたくない、だけどひとりはさみしい。
実家に帰るのも、余計にうるさいことを突っ込まれそう。

水しらすのおじいちゃんと過ごし、
ちょっといいことした気分になり(多分)バイト代も入るなんて、
今のあたしには願ったりのクリスマスの過ごし方だった。
終わったら、自分にクリスマスプレゼントでも買おう。

どのくらい介護が必要かはいってみないとわからないから、
まずは自宅を訪問する。

「こんな日に、こんな可愛いお嬢さんと一緒に過ごせるなんて、
ありがたいね。ヘルパーさんをお願いしたのは初めてだけど、
勇気を出して頼んでみてよかったよ」

おじいちゃんはしゃんとしていて、自分で何でもできるようだ。
それでも、ヘルパーを頼んでみたのは、
今日がクリスマスイブだからだという。

「おじいちゃん、ハイカラだねー。
クリスマスをひとりで過ごしたくないの?」

気を使わなくていいよ言ってくれた言葉に甘えて、
あたしはすっかりタメ口でおじいちゃんと打ち解けていた。

「それはな・・・今日が婆さんの命日だからじゃよ」

おしどり夫婦と言われた奥さんは、去年のイブになくなったという。
そして、なんと今日はおじいちゃんの誕生日なんだそうだ。

あたしは、思わず言った。
「おじいちゃん、食べちゃいけないものってある?」

「別に、ないけど・・・」

「じゃ、クリスマス会しようよ。
あたしスーパーでチキンとケーキ買ってくる。
あたしからのお誕生日と、クリスマスプレゼントだよ。
バイト先には内緒にしとくから」

「え? いいのかい? じゃこれで買ってきてくれるかい? 
そんな提案してもらっただけで嬉しいから、
お金は私に出させてくれよ」

おじいちゃんは一万円札を渡してくれた。
あたしはいそいそと近所のスーパーで
チキンとショートケーキをふたつ買った。
彼氏とクリスマスパーティーするかのようにウキウキした。

グリルでチキンを炙り
「これはお酒がいるねー」なんて言っていると、
インターホンがなった。

「おじいちゃん、誰か来る予定なんてある?」
「さぁ・・・」と言いながらおじいちゃんが玄関に出ると、
そこに立っていたのはおじいちゃんの息子さんだった。

「お前、彼女は・・・」
「なんだよ親父、心配してきてやったのに、
いきなりそれはないだろ、別れたよ。親父こそその方は」

「ヘルパーで来てくれたお嬢さんだよ。
さみしいから来てもらったんだ。
お前、せっかくお嬢さんとふたりで盛り上がっていたのに、
じゃましやがって」

言いたいことを言い合う二人に思わずくすっと笑ってしまった。
さみしいから来てもらったとさくっというおじいちゃん、可愛すぎる。

「でもまぁ、この組み合わせだと邪魔してるのはわしになりそうだけど」

あたしより少し年上であろう息子さんは、スーパーの紙袋を持っていた。
「安いけどシャンパン買ってきた」

「おお、気がきくねー。酒がないねと言ってたところだったんだ。
それ置いて帰ってくれていいよ」

おじいちゃんは言いたいことを言う。
そして、最愛の妻に先立たれた老人と、
恋人と別れた妙齢の男女という、
不思議な組み合わせで盛り上がった。

「お前たち、おたがいひとりになったんなら付き合えば?」
「何言ってるんだよ親父、すみませんね、
そんなこと言われても困りますよね」

「あ、よかったら写真撮ります?」
リアクションに困ったあたしは、撮影会を提案した。
スマホでみんなで写真を撮り合って、
気がつけば、結構いい時間になっていた。

「じゃ、お前この人を駅まで送っていきなさい。
くれぐれも襲うんじゃないぞ」

あたしは息子さんに送られて駅までの道を二人で歩き出した。
時々カップルとすれ違った。
イルミネーションの中を歩くのがちょっと照れくさい。

「あの・・・きょうは親父とすごしてくれてありがとうございました。
もしかして親父が無理言ったんじゃないですか?」

「とんでもない、あたしが、提案したんです。
おとうさまとってもダンディーで素敵ですね」

「母がなくなってからずっとふさぎこんでいたんです。
あんなに元気な親父、久しぶりに見ました。

あの・・・よかったらお礼をさせてもらえませんか?」

そんな・・・お礼を言いたいのはあたしの方です。
おじいちゃんにあわなかったらひとりだったんです
・・・そう言いそうだった。

「で、改めて食事とか。
あ、親父に言われたからじゃないですよ。
明日会いましょうとか言いませんし」


「あ、明日でもぜんぜんいいです!」


ここで素直にならなきゃ、いつなるんだと思った。
この人のこと全然知らないけど、
もちろんときめきがあるわけじゃないけど、

さみしいときはさみしい、さみしかったら人を求める、
あたしもそんなひとになろうと思った。おじいちゃんのように。

しあわせは、求めたひとのところに来るんだ、きっと。
 
心に小さな灯りがともった。
明日どんな格好していこうかな。
クリスマスっぽかったら何か勘違いしてるみたいだよね。

もしもこの人と縁があったら、おじいちゃんがおとうさんになるのか、
電車の中で妄想してあたしはくすっと笑った。




あゆみですドキドキ

このスケジュールの中
本で言うと6ページくらいになりそうなお話を書き下ろしてましたよ。
ブログを読んでくれてるあなたへ
あゆみからのプレゼントテキストでっす♪

いつも読んでくれてありがとう、メリークリスマスクリスマスツリー



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