5/22読了

バースデイ

 

リング事件発生の30年前、小劇団・飛翔に不思議な美しさを放つ新人女優がいた。山村貞子──。

貞子を溺愛する劇団員の遠山は、彼女のこころを掴んだかにみえたが、そこには大きな落とし穴があった……

リング事件ファイル0ともいうべき「レモンハート」、シリーズ中最も清楚な女性・高野舞の秘密を描いた「空に浮かぶ棺」、他1編を収録。

“誕生”をモチーフに3部作以上の恐怖と感動を凝縮した、シリーズを結ぶエピソード集。

 

「リング」「らせん」「ループ」と続けて読んだため、ちょっと中休みをして、また戻ってきた!

 

えー!ちょっとちょっと!!映画「リング0 バースデイ」と全然別物じゃん…!!

 

小説のストーリーを知ってしまった今、早く映画を観直したい!!

 

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本作は、「リング」「らせん」「ループ」で、いわば脇役だった登場人物目線での、メインストーリー前後のお話。

 

①「空に浮かぶ棺」

「らせん」で高山竜司の死後、高野舞が竜司の実家でビデオを発見してから最期までのお話。

 

いわば、貞子を生んだ第一号の舞。その出産の経緯がこんなに苦しいものだったとは…。

 

お腹の中にいる貞子に操られ、意識朦朧としながらも、

 

・"空に浮かぶ棺" にいる状況把握と、自分がなぜこうなったか、この先どうなるかを推察する冷静さ。

 

・これまでの人生を思い返し、家族や慕っている人を恋しく思いつつ、貞子との意思疎通、自分の運命のやるせなさや目前に迫っているその時への恐怖などの、感情の揺れ動き。

 

この対比がすごく良かった。

 

②「レモンハート」

「リング」以前、貞子が劇団にいた頃のお話。

 

当時、貞子と同じ劇団に所属していて恋仲であった遠藤の現在と、その遠藤の回想という視点で進行していく。

 

映画「リング0 バースデイ」は、この「レモンハート」の映画化とのことで、映画版も好きだけど、話としては似ているようで全然違った。

 

映画版では劇団員たちが相当な胸糞だったけど、小説版では貞子が魔性の女って感じで、貞子の思惑がいまいち分からなかった…。色々と、何がしたかったの?

 

だがしかし、映画版の遠藤も、小説版の遠藤も、めちゃめちゃ切なかった。甘酸っぱいレモンの香りがこちらまで届いてきそうな切ないラストに、胸がキュッと締め付けられた。

 

③「ハッピー・バースデイ」

「ループ」の主人公、馨の恋人である礼子のその後のお話。


私はこの話が一番好き。なんてったって竜司大好きなのでw

 

馨と礼子の理性的かつ本能的な愛情と、脆いようで強い絆が泣ける。ラストもすごく良かった;;

 

何度も大切な人を失った礼子の心を思うととても辛いけど、礼子はめちゃめちゃ幸せだと思う。いつどこにいようと、きっとずっと思ってくれているよ。

 

道は険しいかもしれないけれど、その人の血を継いでいる息子と共に、頑張って、幸せに生きていってほしい。

 

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映画版は、小説リングシリーズの肝の部分を完全にカットしちゃってるのが非常に残念だと思う。話が別物になっちゃうので。

 

私は映画版も好きだけど、原作者の鈴木光司さんは納得しているのかなぁ?それならいいんだけど…。

 

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小説の話に戻す。

 

小説のシリーズは本作が4作品目だけど、

 

・貞子自身の思いや存在

 

・貞子と、貞子の母 志津子は、どうしてそのような運命を辿らなければいけなかったのか

 

・竜司の本当のラストで起きたこと(老化のやつ)は、他の人には起こらないのか

 

・礼子の息子の存在は、世界に何らかの影響を及ぼすことにならないのか

 

ここら辺が結構気になっている。

 

現行刊は残すところ「エス」と「タイド」の2作だけど、どれかは描かれているのかなぁ?

 

続きが楽しみ。