​あらすじ


昭和五年七月、豪華客船・箱根丸は横浜港を出港、倫敦へ向かった。出港早々、殺人事件の容疑者が乗船していることがわかり、大騒動に。その後も、男爵令嬢の逃亡騒ぎ、幽霊船の出現など、奇妙な事件ばかりが起こり。じゃじゃ馬令嬢から意外な名探偵まで、魅力的な登場人物たちが大活躍。ミステリーの楽しみがギュッと詰まった、傑作オムニバス・ストーリー。

紹介文より引用

名探偵は密航中/若竹七海


昭和5年、横浜を出て上海や香港を経由してインド洋に入り、スエズ運河から地中海に入りロンドンまで50日余り。


ヨーロッパにいくには、シベリア鉄道で20日余りか船旅で50日余りのどちらか、という時代だったようです。


私にとっては乗ったことのない豪華客船。一等から三等までの船室。なんとなくタイタニックで想像してしまいますが、これは箱根丸という日本の船、横浜からロンドンまでの船旅の中で起こる数々の事件の物語です。


書かれたのは2000年だそうで、20年以上前の小説ですが、

2ヶ月ほど前に突然ハマった女探偵葉村晶シリーズの作者である若竹七海さんの小説です。


豪華客船が舞台の推理小説、というとアガサクリスティにもあったような..(あまり記憶にない)

名探偵ものではポピュラーな舞台でしょうか?


といってもこの小説は、一つの大きな事件を名探偵が解決する、というような小説ではありません。

なんなら名探偵もこれと決まった人がいるわけではありません。

船上、船外で起こった時に殺人事件、時に密航や誘拐事件を

この箱根丸に乗り合わせた乗客達が巻き込まれて、解決していくというオムニバス形式の小説になります。


なにしろ一つ一つの話が推理小説としても、読み物としても申し分なく面白いのです。

そして横浜からロンドンまでの船旅で停泊する神戸、香港、シンガポールにコロンボにナポリ、

箱根丸の航路を地図で辿りながら、飛行機では何度も訪れた事のある外国の街を、何十日もかけて船で訪れるのはどんな感じなのだろう、と想像するだけでも一緒に船旅をしているよう。


乗り合わせる乗客はクセのある人物ばかり

殺人者や密航者も当たり前、みんなそれなりに楽しく船旅をしたり、停泊の街で楽しんだりしています。

今ほど情報がなく、ネットもなく、言葉も通じず、みんな規格外のエリートでお金持ちなので、そういったルートや案内人がいるのでしょうが、それでもこの時代、見知らぬ街で観光やショッピングを楽しんだりできるものなのか、なかなか想像が及びません。

今の私であればパリやロンドン、シンガポールなど観光地として確立している都市であれば一人旅でも何ともありませんが、

たとえばアマゾンの見知らぬ街などに放り込まれてしまっては怖気付いて動けなくなってしまうと思うのです。

この時代の旅行というのはわからないのが当たり前なのでしょう。素敵ですね。


この話は箱根丸の中でも一等船室の乗客をメインにした話が多いので、一種の社交界のような雰囲気や、出される飲み物や食べ物を想像するのもまた楽しいです。

主人公は鈴木龍三郎という成り上がり一族の放蕩息子、のはずですが..作中ではだいぶ影が薄く、登場するのは話の間に書かれる寄稿文ばかり。

ですがそれにもちゃんとカラクリがありますのでお楽しみに。


若竹七海さん他の小説のレビューはこちら



つぎはまた、葉村晶シリーズに戻ろうかな、と思っています。


積み本も色々溜まっているのですが..


そういえば、全然違う話になりますが、

先日読み返した城塚翡翠のドラマ見ています。

概ね原作通りなのですがなにしろ駆け足で!

まだ4話目あたりだとおもうのですが、今週すでに透明な悪魔と対決!になるらしく..

このままどう引っ張るの?!と心配になっています。

↑先日のレビューはこちら


犯人変更、だけはやめてくれーと思っていますが、この話に限ってはそんなことはないはずと信じています。


前に日曜劇場でやっていたテセウスの船は、漫画と結末が変わって知らない犯人が出てきてえーーとなりましたが..


ドラマは原作知らない方が楽しく見れますよね。

今シーズンはあとアトムの童と祈りのカルテを見ています。


祈りのカルテは、日常生活で決め台詞言う人ってなかなかいないですよね..