あらすじ
探偵を休業し、ミステリ専門店でバイト中の葉村晶は、古本引き取りの際に白骨死体を発見して負傷。入院した病院で同室の元女優の芦原吹雪から、二十年前に家出した娘の安否についての調査を依頼される。かつて娘の行方を捜した探偵は失踪していた――。有能だが不運な女探偵・葉村晶が文庫書き下ろしで帰ってきた!
文庫版裏表紙より引用
さよならの手口/若竹七海
現在若竹七海氏の『女探偵・葉村晶シリーズ』にはまっています。
1ヶ月ほど前、古本屋でたまたま手に取った『依頼人は死んだ』というミステリ小説
面白さと葉村晶のキャラクター、読みやすさに惹かれて翌日には既刊を調べて本屋でまとめ買い。
どうやら第一作は短編集の『プレゼント』
そこから『依頼人は死んだ』『悪いうさぎ』ときて、
『さよならの手口』は文庫版4作目にあたるようです。
シリーズものの名探偵といえば、古くは横溝正史さんの『金田一耕助シリーズ』から京極夏彦さんの『百鬼夜行シリーズ』島田荘司さんの『御手洗潔シリーズ』など言うまでもなく
先日レビューした『ガリレオシリーズ』などもありますね。
探偵が女性というのも珍しくありません。
とくに最近流行っている今村昌弘さんの『剣崎比留子シリーズ』や今度ドラマ化する相沢沙呼さんの『霊媒探偵城塚翡翠』などもあり、むしろ今の流行りともいえるのかもしれません。
(元彼の遺言状、なんかも綾瀬はるかさんでドラマになりましたね)
ところがそれらに共通する女性探偵の共通点はまず若いこと、そして人目を引くような美人であること、頭脳明晰であること。
この葉村晶シリーズ、何が面白いって探偵が40代の極めて地味な女性なんです。(1作目はアラサーでしたね)
探偵事務所に勤務歴はあるももの人気探偵でもなくほとんど古本屋のアルバイトで生計を立て、
印象が薄いというのが探偵にとって利点であるという描写があるほど平々凡々な顔立ち、とりたててIQが高いとか(探偵としてはかなり有能なのですが..)特殊能力があるとかそういった描写もなく、
なにより私が好きなのは、常に満身創痍であること。
物語の中の探偵は多少暴行をうけようが、軽く刺されようが、小さな傷なら2日で消える2歳児の如き新陳代謝でわりとすぐ支障なく探偵活動に戻りますが
葉村はとにかく、怪我が治らない。
事件呼び寄せ体質でよく怪我をするものの作品中その怪我をずっと引きずり足が痛いだの肩が上がらないだの不平をこぼし、なんなら次の作品までその不調を引きずっています。
ついでにスマホをよく壊したり、家を追い出されたり、バイト先の上司にこき使われたり
悲劇を背負うタイプの探偵もいますが、葉村はその悲劇すら地味なのです。
前置きが長くなってしまいましたが、今作『さよならの手口』は
元大物女優からの依頼で失踪した娘の安否を探すという主軸がありながら、他にも遺品整理のバイト先でみつけた白骨や、
突然できた女友達についてなど、様々な事柄が絡み合ってくる長編小説です。
なにしろ娘が失踪したのは20年前。
しかし聞き込みを続けるうちに、20年前に娘を追っていた探偵もまた失踪していることを知ります。
葉村自身は極めて地味ですが、このシリーズはよく人が死ぬタイプのミステリ小説です。
そのせいか事件自体はかなり大事なのになんとも言えない寂しさとか薄寒さが作中に漂っていてるのもまたこの小説の良さですね。
探偵には相棒がつきものですが、葉村にかぎってはこれといった相棒もいません。
けれど大家だったり、前の職場の探偵仲間だったり、バイト先の店長だったり、警察だったりシェアハウスの仲間だったり、魅力的でキャラの立つ人物が多数でてきます。
友達いてよかったね、葉村!と思わず言いたくなってしまう場面もしばしば。
派手な探偵ミステリが苦手な方におすすめですよ。
余談ですが上に書いた流行りの美少女探偵、
3つとも読みましたがなんとなく、ハマらない感が。
気になって最後までは読んだのですがそこまで好みではないです。
元彼の遺言状は割と好きでした。
といいつつ多分続きが出たら読むんですが。
葉村晶シリーズは現在既刊分があと3冊。
積み本にしてあるので大事に読んでいこうと思います。