十歳の少女と十二歳の少年も、このたびの合戦に参加した。その小さな身体に甲冑をつけ、肩布をまとった。しかし、ふたりは刀槍も弓矢も手にしなかった。彼らの武器、それは「声」であった。
蓮と黒虎は、戦場を縦横に駆ける伝令騎兵の背に貼りつき、鞍上から大声で叫んだ。
「族長だけは殺すな!」
西岐の兵士たちの吶喊の中、場違いな子供の高い声は一段と響いた。戦場くまなくふたりの子供の声が跳ねたとき、義渠の兵士たちは疑心暗鬼に襲われた。
火を噴くような西岐の攻撃も、沙旦族長のまわりに槍が迫ることも矢が飛んでこなかった。沙旦が反撃に出ると、潮が引くように西岐兵が後退する。そのくせ沙旦以外の者が率いている部隊は徹底的に叩きのめされ、馬蹄にかけられ、殲滅されていく。
義渠の兵士たちの猜疑心が頂点に達したとき、沙旦はあっさり西岐の兵に生け捕りにされた。
月光下の丘で散宜生が子牙に問おうとして、途切れた言葉こそまさに、
「勇猛で知られる義渠の族長を生け捕りにせよ、などと無理難題を言われるのです」
であった。
しかし、その難問も少年少女の活躍で解決した。