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カムイ書房

秋葉原『スープカレーカムイ』店主・諸橋亜蘭の小説サイト

 十歳の少女と十二歳の少年もこのたびの合戦に参加した。その小さな身体に甲冑をつけ、肩布をまとった。しかし、ふたりは刀槍も弓矢も手にしなかった。彼らの武器、それは「声」であった。

 蓮と黒虎は、戦場を縦横に駆ける伝令騎兵の背に貼りつき、鞍上から大声で叫んだ。

「族長だけは殺すな!」

 西岐の兵士たちの吶喊の中、場違いな子供の高い声は一段と響いた。戦場くまなくふたりの子供の声が跳ねたとき、義渠の兵士たちは疑心暗鬼に襲われた。

 火を噴くような西岐の攻撃も、沙旦族長のまわりに槍が迫ることも矢が飛んでこなかった。沙旦が反撃に出ると、潮が引くように西岐兵が後退する。そのくせ沙旦以外の者が率いている部隊は徹底的に叩きのめされ、馬蹄にかけられ、殲滅されていく。

 義渠の兵士たちの猜疑心が頂点に達したとき、沙旦はあっさり西岐の兵に生け捕りにされた。

 月光下の丘で散宜生が子牙に問おうとして、途切れた言葉こそまさに、

「勇猛で知られる義渠の族長を生け捕りにせよ、などと無理難題を言われるのです」

 であった。

 しかし、その難問も少年少女の活躍で解決した。

 合戦中、喉も裂けよと叫び続けたふたりは勝利の報に接して安堵するや睡魔に襲われ軍装も解かずに寝入ってしまった。