私はライターをコーディネートする会社を営みながら、自身でもライターとして活動しています。2023年1月にひきこもり支援をするNPO(特定非営利活動法人)「キャリアサポートセンター奈良」(橿原市)を取材した記事がニュースサイトに掲載されました。
このNPOでは当時パソコントラブルの対応をサービスとして提供していて、私はたびたび利用していました。ひきこもり当事者の中にはパソコンに詳しい人もいて、社会復帰の一環とする側面もあったようです。私は当時、会社のある大阪市から吉野郡に住まいを移し、気軽にパソコントラブルを相談できる業者を探していたところ、当NPOにたどり着き、良心的な対応が気に入り、たびたび利用するようになりました。
窓口になっていつも対応してくれる職員(男性)の方がいて、何度目かの利用の際にご自身もひきこもり経験があって、当NPOの支援を受けて当NPOの職員になったことを何気ない会話で知りました。ひきこもりは、他人事ではないと私自身がかねてより思っていました。私は自意識過剰で、極端に人目を気にするところがあって、仕事がうまくいかないと自己嫌悪に陥ってふさぎ込むようなところがあります。長年パニック発作を患ってもいたので、何かの拍子に自分がいつひきこもりになってもなんら不思議ではないと思うと共に、その息苦しい死にたいような気持は、自分でも想像できたので、社会に役立つ記事を書きたい。そんな気持ちがにわかに湧き上がってきました。しかし相手からすると、つらい思い出を語ってもらうことになるので、取材を断られても仕方ないとも思いました。しかし、その職員の方は二つ返事で取材承諾をしてくれました。
当日、取材場所である当NPOの作業所に行くと、その職員の方以外に年配の男性が私を出迎えてくれました。理事長(当時)の山田政利さんです。すると山田理事長が、当NPOの設立の経緯を話し出し、私は戸惑いました。と言うのも、ひきこもりからひきこもり支援する立場になった職員の方にスポットを当てた記事を書くつもりで、ニュースサイト編集部にもそのことを伝え、それで掲載許可を得ていたからです。
山田理事長の話を聞いていくうちに、キャリアサポートセンター奈良という一見ひきこもり支援とは不釣り合いな名称の成り立ちが理解できました。30分ほど話した後、山田理事長は次の仕事へ向かう準備をされました。私は山田理事長に「いろいろとお話いただきましたが、記事の関係上どれくらい情報を盛り込めるか分かりません」と今考えると大変失礼なことを言ったと記憶します。去り際に、職員の方とのツーショット写真を記事用に撮影させていただきました。
当初は、山田理事長との30分のやり取りは取材ではなく「ご挨拶」ととらえ、その後に控えた職員の方とのやり取りこそがインタビュー取材ととらえていました。職員の方の口からは、山田理事長の何とか社会復帰させてあげようというひたむきさ、傷ついた心を癒してやろうという大きな優しさ、さまざまなことに対しての山田理事長への尊敬と感謝の言葉が聞け、彼にとっての山田理事長の存在の大きさを実感しました。当初の職員の方にスポットを当てるつもりが、山田理事長と職員の方の二人にスポットを当てる、ダブル主演のような記事になりました。
結果、自画自賛ですがいい記事が書けたと思いますし、山田理事長からもおほめの言葉をいただきました。記事の掲載後に開催されたイベントの問い合わせが全国からあったそうで、当日のイベントは満員札止めでした。
それ以来、当NPOのイベントに足を運ぶようになりましたが、会場で山田理事長に挨拶をしに行くたびに「私が死んだら、棺桶にあなたの書いた記事を一緒に入れてもらうよう(家族に)言うてんねん」とおっしゃっていただき、いつも私をいい気分にさせてくれました。ひきこもりの支援を受けている人たちも、山田理事長のこのような温かい言葉に助けられ、背中を押してもらっているのでしょう。
本日(5月31日)に山田理事長のお別れの会に行ってきました。午前10時から午後3時まで会場である作業所を開放するスタイルで、私は午前10時半くらいに訪問しましたが、すでに大変多くの方々が訪れていて、会場の随所に配された生前の写真や思い出の品を眺めながら故人を偲んでいました。
会場を後にする際、新理事長と取材した職員の方に挨拶に伺ったところ、山田理事長が私に自叙伝を書いてもらいたいと言っていたと、思いもよらぬ有難いお言葉を伝えていただきました。死してもなお、周囲に優しさを振りまき、背中を押してくれる。山田理事長らしいと思いました。
亡くなる前日まで、いつも通りにお仕事をされていたと聞きました。いみじくも今年の目標を「貫」と掲げられていたそうです。山田政利理事長は亡くなりましたが、山田理事長の遺志を継ぐ、新理事長はじめキャリアサポートセンター奈良の職員の方々がひきこもりの支援をされています。奈良県内のひきこもり当事者の方々、その家族の方々、だまされたと思って(山田理事長の口ぐせ)、キャリアサポートセンター奈良に一度相談してみてください。きっと心が晴れることでしょう。
キャリアサポートセンター奈良
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