現代人の多くが「競争に勝たないと幸せになることが出来ない」と考えています。だから、多くの人が子どもの幸せを願って子どもを追い立てています。まただから、子育てなんかでも助け合うことが出来ません。なんせみんな競争相手ですからね。

みんなで助け合って子育てすれば、子育ては楽に、楽しく、そして大人にとっても子どもにとっても「学びの場」になるのに、みんな一人で「子育て」を抱え込んで苦しんでいるのです。
これは社会全体の価値観が「つながり」よりも「個」を重視するようになってきたからなのでしょうか。

問題は、社会の方は「個」を重視するようになってきたのに、「個」を育てるような子育てや教育の方は少しも進歩してこなかったことです。(教えられる人がいないのですから・・・)
だから、精神的な自立が確立されず「個を生きる能力」が育っていない子がいっぱい育ってしまっているのです。

実際、こんなにも「自由」が許されている社会に生きているのに、「自由」を謳歌して幸せに生きる事が出来ている人は少ないのではないでしょうか。
多くの人が、私の教室の子ども達と同じように、何をしたらいいのか分からず戸惑っています。だから「人目」を気にして「人目」に振り回されてしまうのでしょう。

またそのような人は、「つながりから切り離された個」という状態に不安を感じているので常に「何か」や「誰か」に依存しようとしています。「競争」に参加することでつながろうとしている人もいっぱいいます。他の人を否定することでつながろうとする人もいます。有名人を否定することで有名人とつながることが出来たような錯覚を感じる人もいます、

でももし、本当に「個」を大切にしているのなら、他人の評価に基づく競争などには参加しないはずです。他の人を否定することで自分の存在感を演出しようなどとはしないはずです。

実は、子育てで一番大切なことは「競争に勝つ能力」を育てることではなく「子どもの自立」を支えてあげることなんです。そしてこれは人間だけでなく、子育てをする全ての生き物に共通した原則です。そうでないと種が絶滅してしまうのですから。それが子どもを育てる意味でもあるのです。

「競争に勝つ能力」も「自立する能力」として必要なものは親が子に伝えますが、単に「勝つことだけを目的としたような能力」を育てるようなことはしません。そんなことをしているのは人間だけです。


また、「自立して生きていく能力を育てる」ということは、「一人ぼっちで生きていく能力」を育てることではありません。
人間の社会は「人と人のつながり」によって支えられています。そのような社会で自立して自由に生きて行くためには「他の人とつながる能力」が必要になるのです。水の中にいるのに水を嫌っていたら泳げずに溺れてしまうのです。
「仲間と助け合う能力」が育っていない子は自立できないのです。


でも現代社会では、多くの人が自立よりも競争に勝つことの方を重視しています。確かに、自然界では競争に勝つことも自立には必要なことではあります。でも、それ以上に大切なのは仲間と助け合う能力を育てることの方なんです。

実際、どんなに高い能力を持った人でも自分一人では生きていくことが出来ないのです。競争に勝ってもみんなから無視されたら生きていけないのです。
逆に、それほど高い能力を持っていなくても、仲間と助け合うことで偉大な仕事が出来てしまうこともあるのです。