人は「人と人のつながり」の中でないと人間らしく生きることが出来ません。これは、誰も否定できない事実です。
ですから、「自立して自由に、幸せに生きる」ということも、「人と人のつながり」の中で実現するしかないのです。

だからこそ、「自立して自由に、幸せに生きる能力」を育てるためには、「他の子や他の大人と幸せな関係でつながり合う能力」を育てることとセットにして考える必要があるのです。
どんなに成績優秀で、英語がペラペラで、知能指数が高くても、「他の人と幸せな関係でつながる能力」が育っていない子は、自立して自由に幸せに生きることは出来なくなってしまうからです。

海の中で自由に動けるようになるためには「泳ぎ方」(海の水との関わり方)を学ぶ必要がありますよね。「水があるから自由に動けないんだ」と海の水を排除しようとしてもそれは不可能だし、そんなことしていたらおぼれてしまいますよね。

それと同じように、「人と人のつながり」の中で自由に生きることが出来るようになるためには、自分の周囲にいる人との間に、「支え合い、助け合うことが出来る関係を築くことが出来る能力」を育てる必要があるのです。
その能力が育つことで、人は「一人では出来ないようなこと」でも出来るようになる自由を得ることが出来るのです。
そしてそれが「仲間作り」の能力なんです。


でも最近、「仲間作り」がうまく出来ない子ども達が増えてきています。
大人も同じです。というか大人が出来ないから子どもも出来なくなってしまったのでしょう。
でも、子どもも大人も困っていません。なぜなら、他の子や人とつながらなくても遊んだり生活していくことが出来るような便利な機械やインフラがいっぱいあるからです。

でも、そういう便利な機械やインフラに囲まれて遊び、育ってしまったため、そういう便利なものがないと遊んだり生活できなくなってしまいました。
子育ても、「一人で遊び、一人で生活することに慣れてしまった人」は一人で何とかしようとしてしまいます。

でも、「子育て」はお母さん一人では絶対に出来ません。「遊び」や「子育て」についてどんなにいっぱい知っている優秀なお母さんでも、一人で子育ては出来ないし、やろうとしてはいけないのです。
お母さん一人では、子どもに「人と人のつながりの体験」を与えることが出来ないからです。

お母さん一人でも「子どもの世話」は出来ます。安心を与えることも出来ます。
でも、子どもを「将来、自立して自由に幸せに生きることが出来る人間に育てるような子育て」は、お母さん一人では不可能なんです。
「お母さん一人の子育て」で子どもが学ぶことが出来るのは「お母さんとの関わり方」だけだからです。

だからこそ、子育てでは「仲間」が必要になるのですが、今、その「仲間作り」が苦手な人がすごく多いのです。子どもの頃から仲間と群れて遊んだ体験がないまま大人になってしまったからなのでしょう。

ちなみに、「群れ遊び」における「群れて遊ぶ」というのは「みんなが同じことをして遊ぶ」ということではないですからね。

大人がオニになって、子ども達が逃げ回るのは「群れ遊び」ではないですからね。
同じように逃げ回っていても、それだけでは「仲間」ではないですからね。
自分たちでルールを決め、自分たちでルールを守り、ちゃんとオニが交代して、子ども達だけでズーッと楽しく遊ぶことが出来るつながりが「仲間」という関係なんです。

そして、子どもが大人になって自立して自由に幸せに生きて行くためにはそういう能力が必要になるのです。

また、子どもを保育園に預けても仲間作りが出来るようになるわけではありません。
お母さんは、「保育園には子どもがいっぱいいるから仲間作りも出来るようになるだろう」と考えますが、先生の指導の下に一緒に遊んでいるだけでは、大人に対する依存心が育つだけで「仲間作りの能力」は育たないのです。「友達」は出来ても「仲間」は出来ないのです。

保育園の先生達は子どもの世話はしてくれますが、仲間にはなってくれません。
子どもと一緒に遊んでくれているように見えても、「一緒に遊んでくれている」だけであって、子どもと同じ意識で一緒に遊んでいるわけではありません。
そういう人は仲間ではないのです。

また、「一緒に遊んでくれる先生」にリードされて一緒に遊んでいる子ども達もまた「仲間」ではありません。
遊びをリードしてくれる人がいなければ一緒に遊べないような関係を「仲間」とは言えないのです。

昔は、「子どもによる子どもが主人公の伝承遊びの場」が「仲間作りの場」でもあったのですが、今、そういう場はほぼ消えかかっています。

だから、そういう場をもう一度再生しなければならないのですが、でもそれが非常に難しいのです。社会の流れに逆らって、子ども達の「仲間作りの場」を作るためには、「大人の仲間」が必要になるからです。
消すのは簡単でも再生するのは非常に難しいのです。