「メダカ」を守るということは、メダカの生育環境も含めて守るということです。
メダカを水槽の中に閉じ込めて、水やエサを管理して個体だけを守ることではありません。

象を守ると言うことは、象の生育環境も含めて守るということです。
象を動物園の檻の中に閉じ込めて、環境やエサを管理して個体だけを守ることではありません。

これは、メダカや象だけでなく全ての生き物において同じです。
全ての生き物は自然の働きの中に生まれ、自然の働きと共に生き、自然の働きと共に子孫を残し、自然の働きと共に死んで循環の中に還っていくのですから。

その自然の中には「仲間」も含まれます。
象は群れで行動する動物です。子育ても、エサ取りも、群れで行います。また、群れごとに異なった文化も持っているそうです。
それはイルカも、そして人間も同じです。

象も、イルカも、人間も、自然や仲間とセットで「象」であり、「イルカ」であり、「人間」なんです。

宇宙人がやってきて人間を一人だけ連れて帰って調べても、「人間について」は分からないでしょう。分かるのは、基本的な肉体の仕組みだけです。
「心」のことも、「精神性のことも」分からないでしょう。
また、一人だけでは子孫は残せないでしょう。

男女ペアで連れて行って宇宙人による飼育環境の中で子どもが生まれたとしても、その子どもは「地球で自然や仲間と共に育った子ども」とは全く異なった状態に育つでしょう。少なくとも「人間らしさ」を身につけることは不可能になります。

自然や仲間とのつながりの中で生まれ、育ち、生き、死んでいく生き物を、自然や仲間と隔離しましまったら、物質的な肉体は守れても、心も、からだも、精神性も、知性も守れないのです。
そういうものの育ちには、自然や仲間との関わり合いやつながりが必要だからです。

人間の知性や精神性や心の育ちには「言葉との出会い」と「言葉の育ち」が絶対的に必要になるのですが、その「言葉」は「他者との関わり合い」の中で必要になるものです。
つまり、「他者との関わり合い」がない状態で育った子は、言葉を学べなくなってしまうのです。

また、「豊かな心」や「豊かな知性」や「豊かな精神性」が育つためには、「豊かな言葉」を学ぶ必要があるのですが、その「豊かな言葉」が育つためには、「多様な体験を共有する仲間」が必要になります。
「親」もその「仲間」に含まれます。

それはつまり、「仲間」から切り離されてしまった子どもは、知性や精神性や心を育てることが出来なくなってしまうということを意味しています。

「部屋の中の方が安全だから」と子ども部屋の中に閉じ込め、「子どもが退屈するとといけないから」と人工的なオモチャやゲーム機を与えていては、人間性も、知性も、精神性も、からだも育たなくなってしまうのです。

「子どもを守りたい」と、子どもを「つながり」から切り離してしまうと、子どもは一人の人間として自立して生きていくための能力を育てることが出来なくなってしまうのです。
それでは子どもを守っている事にはならないのです。むしろ、子どもの成長を阻害していることになってしまうのです。

そのようなことをする人は、「子どもを守りたい」のではなく、「子どもを自分の思い通りにしたい」だけなんです。自分が不安だから、子どもを束縛してしまうのです。

本当に子どもを守りたいのなら、子どもの人間としての成長も守ってあげるべきなんです。
子どもが自然や仲間と出会い、自由に関わり、様々な体験を通してつながる場を与えてあげるべきなんです。
子どもを管理するのではなく、子どもに自由を与えるべきなんです。

でも実際には、「子どもを守る」という名目で、子どもからそういうものを取り上げてしまう大人がいっぱいいます。
ケガをするから危ない遊びはさせない、ケンカをするから仲間と自由に遊ばせない、ばい菌がいたり危険なこともあるから自然の中には入らせない。
その結果、人間性も、心も、知性も、精神性も育っていない子がドンドン増えてきています。

昔から「他の人が困るような悪いこと」をする子はいました。でも昔の子には「悪いことをしている」という自覚はありました。だから、隠れて、バレないように「悪いこと」をしたのです。

でも最近は、「イジメ」や「他の人が困るような悪いこと」をしても「悪いことをしている」という自覚がない子が増えてきました。
だから堂々とSNSにアップするのです。精神的な幼さ故に年齢的には大人になっていても、幼稚園児のような行為を平気でするのです。

肉体は健康でも、これでは子どもが守られていることにはならないのです。