造形という場で子どもたちと接していると、「考える」ということが苦手な子があまりにも多いので困惑します。

何かを作る時、何かをやる時にもすぐに指示を求めるのです。自分の頭で考えることをせずに、最初から「やり方」や「正解」を聞いて来るこが多いのです。

そして、「やり方さえ教えてもらえれば、自分には何でも出来る」と思い込んでいる子も多いです。ゲームなどでは、攻略法を教えてもらえれば攻略出来るのかも知れませんが、それと同じ感覚なのでしょう。

椅子を作りたいと言う子がいると、とりあえず材料を出してあげます。
昔だったら材料だけ出せば、自分の頭で何とか考え「自分デザイン」の椅子を作る子もいましたが、ここ10年ぐらいの子にはそれは無理なので、最近は「こんな風に作るといいよ」と見本を見せます。でも、見本を見せても「何がどうなっているのか」が全く分からないようなんです。

分からないなら理解しようとすればいいのですが、見本を見せてもその構造を理解しようとする子がほとんどいないのです。そして、見本は見ずに「で、どうやって作るの?」と聞いて来ます。

それで私は、「だから、こうやって作ればいいんだよ」と再度見本を見せるのですが、何を言われているのかすら理解出来ない子の方が圧倒的に多いです。

まあ、それでは通じないことは経験上分かっているので、そのようなやり取りの後、角材や板に線を引いて「まず、これをここで切って」と言うのですが、「え!ぼくが切るの?」などと言う子もいます。

それで、「君が作るんだから君が切るんだよ」と言うと、「先生手伝って」と言ってきます。始める前から「手伝って」と言ってくるのです。

また、「何で切るの?」と聞いてくる子も多いです。
「木を切る=>ノコギリを使う」という発想がない子がいっぱいいるのです。
まれに、カッターやハサミで挑戦しようとする子もいます。

それで、ノコギリを渡して、目の前で切って見せて「こうやるんだよ」と教えてあげるのですが、おかしな持ち方をして、おかしな姿勢で、おかしな切り方をする子も多いです。

「どう考えたってそんな切り方で切れるわけがないじゃん」というやり方で挑戦する子もいます。
まあ、今の時代「ノコギリ初挑戦」の子も多いでしょうから、最初の反応としてはそれはそれで仕方がないのですが、でも、それではうまく行きません。

うまく行かなかったら、再度よく見て、よく考えればいいのに、うまく行かなかった時に「どうしてダメなんだろう?」と考える子がすごく少ないのです。
それで「ぼくには無理」とすぐに諦めるのです。

で、しょうがなく「じゃあ、半分まで切ってあげるからあとは自分でやって」と手伝ってあげるのですが、脚が一本切れただけで「先生できた、次はどうするの?」と聞いてきます。

で、「脚一本じゃ椅子は出来ないよ、あとこれとこれも切って」と言うと、また「先生手伝って」が始まります。
パーツが全部切り終わっても、次に何をしたらいいのか考えようとしません。

人がトラブルを乗り越えるためには自分の頭で考えるしかないのですが、その考える能力が育っていない子が非常に多いのです。そういう子はちょっとしたトラブルに出会っただけですぐに諦めてしまうのです。

ゲームの世界には攻略本も、攻略動画もあるのでそれを見ればいいのかも知れませんが、現実世界では、自分の頭で考えないことには自分のトラブルは攻略できないのです。でも、その能力が育っていない子が非常に多いのです。



<明日に続きます>