「気質の違い」は「性格の違い」ではなく、「体質や感覚の違い」と密接につながっています。

その「体質や感覚の違い」が「性格の違い」の背景にはあるのですが、「体質や感覚の違い」が成長の過程でどのような性格として表れるのかは育ちの影響が大きいので、「こういう性格だからこういう気質だ」とは一概には言えません。

特に、大人になると育ちの影響が大きくなるため、その性格の裏側に隠れた気質が分かりにくくなります。でも、性格の状態は異なっても気質が同じなら、似たようなからだや感覚の特性を持っています。

木は加工されて椅子になったり、テーブルになったり、馬車になったり、家になったり、箸になったり、紙になったりしますが、基本的にみんな火には弱いです。また、湿気が多い場所ではカビが生えたり腐ったりします。

ですから、見かけや用途は異なっていても、基本的な扱い方は同じです。

石や鉄もまた椅子になったり、テーブルになったり、家になったりしますが、その扱い方は木で出来た椅子や、テーブルや、家と同じではありません。

同じ「椅子」でも、木の椅子は燃えますが、石や鉄の椅子は燃えません。
石の椅子は雨ざらしでも腐りませんが、でも、ぶつけたらすぐ割れます。木や鉄の椅子は石ほどは簡単に割れません。
鉄で出来たものはそれが鍋であっても、箸であっても、自動車であっても、溶かして元の状態に戻せます。でも、木や石で出来たものは元の状態に戻せません。

その、「椅子」とか、「テーブル」とか、「家」といった用途的な分類が「性格」と呼ばれるもので、その素材として使われている「木」とか「石」とか「鉄」といったようなものを扱っているのが「気質」の考え方なんです。
でも、「素材」ですから表面的にちょっと見ただけでは分からないのです。

だからといって、その素材の特性(気質)を無視して扱ってしまったら、燃えてしまったり、割れてしまったり、腐ったりしてしまうかも知れません。ですから、同じ椅子でも、その素材を知り、素材に合わせた扱い方をする必要があるのです。

多血質の子は変化に敏感です。そしてその変化を楽しむことが出来ます。
明るくて楽しい雰囲気を持っていて、歌ったり、踊ったり、からだを動かすことが大好きです。また、一人で何かをやるよりも、人と一緒にやることを好みます。一人では退屈してしまうのです。
アップテンポなリズムが好きです。
意識が常に外側に向いていて、深く考えることなく反射的に行動してしまうので、いつも同じ失敗を繰り返す傾向があります。でもそれ故に、反応は早いです。
また、豊かな感情を持っています。他の人の感情にも共鳴しやすいです。
一番「子どもらしい子ども」です。

このような特性を理解して、このような特性が長所になるような関わり方や活動を与えると、多血質の子は明るくて、楽しくて、みんなを幸せに出来るような素敵な大人に育ちます。

でも、多血質の子に、多血質の子が持っていない特性を求めると、多血質の子はその明るさを失い、一見憂鬱質のようになります。

多血質の子は好奇心が旺盛で、変化に敏感で、反応が早いです。でも、これを裏返せば、「落ち着きがなく、深く考えないで行動する」ということでもあります。そして、失敗しても深く反省しません。

「みんなと一緒に楽しく活動するのが好き」ということは、「一人でじっくり何かに取り組むのは苦手」ということでもあります。
そのことで色々なトラブルも起きるかも知れません。

そして、お母さんや先生は「持っている部分」には目を向けず、「持っていない部分」ばかりに意識を向け、それを直させようとしてしまいがちなんです。

でも、そのことで子どもは自分らしさを失います。
多血質の長所が消えます。

また、短所を直そうとしても短所が改善されるわけではありません。木に、鉄や石のような強さや固さを求めても無理なんです。そのことに気付かず、木に鉄や石のような硬さを求めてしまうと、木は壊れてしまいます。