■BOOK「苦役列車」
芥川賞受賞作品「苦役列車」を読む。
作者の「私小説」らしく、実際作者自身、中卒・逮捕歴あり、という作家として珍しい経歴の持ち主である。
だからというわけでもないと思うが、この作品は、他の作家にない
新たなジャンルの小説にようにみられ、先が気になってついつい一気に読んでしまった。
どの分野でもそうだが、新たなもの出会いは嬉しいものだ。
小説全体が、青黒い背景で塗られたような、そんな毒々しさ、
何か問題が起きそうな、そんな重さが充満している。
「本を読むということは、他人の人生を仮想体験することだ」と誰かが言っていたが
それは本当だなと思う。
主人公の描写が私自身とシンクロさせた。
そして「私は運がよくここまでやってこれたなあ」ということを痛感するのである。
そして「親」の役目とは何か、「子」をどこまで「誘導」することなのか、
なんていうことまで考えが及ぶ。
理屈では高卒も中卒も関係ないと思うことも多いけれど、彼は実際、
こんなに苦労している。これは高校教育の価値観を認めるべきことか。
……運よく人生なんとかやってきた身としては、いくつかの疑問が生まれてくる。
基本的には、人間には同じような「精神」「欲望」があり、
それをかなえていくには、ある程度の品位とお金が必要である。
そして自分自身の「信頼」も必要である。
そういうことが、これから新たな仕事を始めるというこの時節、
私をドキッとさせるのである。