瑠帷の家 -35ページ目

瑠帷の家

いつでもだれでもいらっしゃい。

(Yahooブログ「瑠帷の話」から移転)

誰もいなくなった
 
昼の町を歩く私の袖を掴んで呼び止めた女に見覚えはない
息を切らした女の眼には
悲しさとは違うものが見える
そんな帽子を被っているのはあの人ぐらいだったと
笑いながら話す
帽子だけ頼りにして捜してきたのにと
悔しそうに話す
 
捜す男は指名手配犯の濡れ衣を着せられてどこかへ消えたらしい
濡れ衣を脱ぎ捨てるため二人で貯金をしていたらしい
張り紙の似顔絵は彼とは似ても似つかぬと
懸命に話す
 
私は共に捜した 彼女の幸せを捜した
 
捜し続けて半年が経つ頃に私たちのところへ強盗が押し入った
夜の町に警報がけたたましく響く
寝巻しか纏わない私たちに刃物を向けて
消えてくれと襲い掛かる男たち
その時 強盗の一人が飛び出して女の代わりに血を流した
倒れる男の挙げた声を聞いて女の顔が変わる
私は女の手を取って窓から飛び出した
 
間も無く警察が強盗を取り押さえ
倒れた男は担架で運ばれていく
女の体は話も聞けぬほど震えていた
あの倒れた男が今まで捜していた彼だ
唇は震えていた
 
私は共に捜した 彼女の幸せを捜した
 
指名手配されていた凶悪犯が逮捕されました
速報が夜明けの町へ行き渡る
刺された男性が近くの病院で亡くなりました
速報が夜明けの町へ行き渡る
刺された経緯(いきさつ)を事細かに話すテレビ
何も知らぬ町には
飛び出した男の心などわかりはしないだろう
 
愛されていたんだね その日私は女に言った
泣いている女
次に女を見たのは夜が明けてから
芯まで冷たくなってからだった
息の切れた女の眼には
何も映ってなどいなかった
遺書の隣には保険金の束があった
 
強盗をした上に四人を殺した罪は重いと
風格のある髭の男が語った
凶悪犯の最期は全員が死刑
 
私は共に捜した 彼女の幸せを捜した
 
誰も正しくなかったのか
誰も正しくなかったのか
誰もいなくなった
誰も正しくなかったのか
誰もいなくなった
誰もいなくなった
誰もいなくなった
涙に塗れて
 
悪あがきでも強がりでもあたしの心 変わりはないわ
皸(あかぎれ)でもささくれでもあたしの体 変わりはないわ
仕事に出れば砂塗れ 陽射しの下で汗塗れ
死ぬときゃ血塗れ なんてご冗談
涙に塗れて 死んでゆきたい
笑顔の雫を 運んでゆきたい
涙に塗れて 死んでゆきたい
笑顔の雫を 運んでゆきたい
 
髪を振り乱しあたしは走る あんたのもとへいつでも走る
あたしは歌う あたしは叫ぶ あんたの涙が涸れ果てるまで
真夜中聞かせる子守唄 叫びか歌かいざ知らず
けれども最後に 聞かせてやりたい
涙に塗れて 死んでゆきたい
笑顔の雫を 運んでゆきたい
涙に塗れて 死んでゆきたい
笑顔の雫を 運んでゆきたい
 
仕事に出れば砂塗れ 陽射しの下で汗塗れ
死ぬときゃ血塗れ なんてご冗談
涙に塗れて 死んでゆきたい
笑顔の雫を 運んでゆきたい
涙に塗れて 死んでゆきたい
笑顔の雫を 運んでゆきたい
 
 
 
(5月17日22:32 一部修正)
(同日23:29 一応、完成)
(翌日15:07 繰り返し部分追加修正)
過ちを映すもの
 
どれほどの裏切りを置いてきたのだろうか
どれほどの裏切りを覚えているだろうか
私は覚えているよ 幾らでも伝えられる
思い出して欲しくはない 忘れ捨てて欲しくはない
雪よ 降らないでくれ
銀盤に過ちが映される
雨よ 降らないでくれ
水面(みなも)に過ちが映される
過ちを映すものは 涙を湛えた瞳だ
 
どれほどの秘め事を置いてきたのだろうか
どれほどの秘め事を覚えているだろうか
私は覚えているよ 幾らでも伝えられる
秘めたものを思い出すか 秘めたままで忘れ去るか
風よ 吹かないでくれ
青空に過ちが映される
空よ 晴れないでくれ
陽射しに過ちが映される
過ちを映すものは 涙を湛えた瞳だ
 
蝋燭の炎
 
あの蝋燭に見覚えはないか
消えかけながら転がる火種を
踏みつけていかなかったか
今もどこかで燃え盛る
振り返っても見ることはできない炎だ
炎よ 顧みず去っていく者たちを照らせ
 
あの蝋燭に見覚えはないか
昨夜も立ち上った炎の影
お前には見えなかったか
今も静かに燃え盛る
振り返っても見ることはできない炎だ
炎よ 顧みず去っていく者たちを照らせ
 
今も遠くで燃え盛る
振り返っても見ることはできない炎だ
炎よ 顧みず去っていく者たちを照らせ
炎よ 顧みず去っていく者たちを照らせ
 
命の在処
 
いつからか海を歩いてきた
空へ向かってただ走ってきた
まだ空は遠く見える
今は地を這っている
 
空ほど軽くはない 高くはない 広くはない
海ほど重くはない 深くはない 広くはない
 
命の在処は海と空の境
在るか無きかの狭間の長さ
僕たちはきっと
あの空へ行くのだろう
 
いつまでの過去を思い出せる
未来は肌を掠め攫っていく
いつか空と同じになる
今は地を這っている
 
空ほど軽くはない 高くはない 広くはない
海ほど重くはない 深くはない 広くはない
 
命の在処は海と空の境
在るか無きかの狭間の長さ
僕たちはきっと
あの空へ行くのだろう
 
海の底から空の彼方へと
続く階段を踏みしめて上れ
落ちることを恐れずに
駆け上がれ 這い上がれ