君はとおくに行ってしまった
きっともう戻ってはこないだろう



分かっているんだ。僕は、分かっている。



君をそこから助け出せないことも
君をそこから引き上げることが出来ないことも




その大きな川のふちに君の面影を見た
胸を締め付けられる気持ちに襲われる
君と共に生きる約束をしたはずなのに、と




僕は、分かっている、はずなのに。




君を助け出したい気持ちにはもうかられていた
でもこんなにも強く想う夜は初めてで
僕は急いであの駅に向かった




駅はガランドウで、まるで宇宙のようだった


あの日の夜みたいだね

白い闇の中で君は行ってしまったあの夜



君はせっかちだから、さよならも言えなかったよ


だからせめて僕は笑ったんだ。あの夜に




助け出したい。
ガランドウの白い闇の中に、

君の笑顔が見えたんだ。



僕は魔法の言葉を呟く



辺りは透明な夜に包まれて
まるで君がそこにいるよう



さよならなんて言えないぐらい近く

だって、あの日の約束じゃないか

傍にいるよ。ずっと君のそばに




君がそこに行ってしまったのなら

僕もこの白いガランドウの闇に落ちよう



あの日の夜の様に

一緒に、行こう

















「 今、行くよ 」





――――――――――――



待っててね







私は神様を創ろう



温かく包まれたその世界の住人になれるなら
私はこの両手を失っても構わない


私は神様を創ろう



その世界で私は人として生きよう
その子と共に
私達の世界を創ろう


叶わぬ想いも
叶わぬ夢も
その世界の中では忘れられるように

私は生きているとちゃんと実感出来るように


私は神様を創ろう


私の神様を

私がちゃんと、私を愛せるように


世界を、創ろう



温かな光に包まれたその色を
創世することはきっとたやすくないけれど


神様を創ろう



もう一度私が私を好きになれる世界を創る為に

神様を創ろう

世界をもう一度知る為に




5月の穏やかな日に
私のこの両手で
私の神様と世界を
一枚の真っ白な窓に



神様を創ろう







拝啓 わたし 様



お元気ですか。私は身体的にお元気です。
昨日「死」について考えていました。
イコール、私は大変暇であります。
考えても出ない答えを探しているのであります。
きっと私は悩んでいる自分というものに酔っているだけなのでしょう。
おかしいですよね。こんなこと貴方にしか話せません。
ですが暇なので、私の考えを貴方に書いてみようと思います。



「死」とはどうなることなのでしょうか。
身体は滅び、私の残りはどうなるのでしょうか。
消えるのでしょうか。
産まれる前のように真っ白に。
いや、真っ暗なのでしょうか。そこらへんはよく、わかりませんが。
感情はどう消えるのでしょう?
感覚はどんな風に無くなっていくのでしょう?
「死」への到達は恐ろしいのでしょうか?
それとも快感を覚えるのでしょうか?



考えても考えても答えは出ません。
当たり前ですよね、死んだ人は戻ってこない。
そこに到達する為には私が私を殺さないと到達出来ない。
それならば、私は。



…こんなことを言えるのが貴方であってよかった。



貴方はきっと何も言わないでしょう。
貴方はきっと、意見も偏見も私に持たない。
ただそこにあるだけ。
たまに苛立ったりします。
貴方の意見が欲しい、そう思います。
でも、私は貴方が貴方であってよかったと思います。
貴方に私の意見を反発されたら、それこそ私は貴方を殺してしまうかもしれない。
貴方を疑って、貴方を嫌って
きっとそうなれば私は狂ってしまうと思います。
ありがとう、貴方が貴方であってくれて、ありがとう。



「死」への想いはきっと絶えることはないでしょう。

遅かれ早かれ、迎えるものですから
そんなに行き急ぐこともないかな、なんて思ってもみますが。
それでも私には、どうしてもその誘惑に飛びついてしまいたくなる日があるのです。
それが、今日という日だっただけであって。



貴方が貴方でいてくれてありがとう。



きっと貴方はそんなこと言われる相手もいないでしょうから
私は代わりに言いますね。



こんな汚い人間を
貴方だけが見捨てずにいてくれる。



私はそんな貴方の存在を、心から感謝します。



だから私は
私と貴方を殺すことにしました。



遅かれ早かれ無くなる命なら今燃やしてみたいのです。



貴方ならわかってくれますよね。
きっとわかってくれるって信じています。




それではここで私の手紙は終わります。
靴を並べて、私はその誘惑に飛びつきます。



もし私が生きていたら
それは私が生まれ変わったものとしてこの手紙を燃やして下さい。




それでは幾ばくの夜も幾万の朝も、お元気で












キミタチの夢の象をなぞるだけのつまらない人生




投げ出そうか
そうしようか
どうしようか



キミタチはそんなことも知らずに今日もまた毒を吐く
薄紫色のその有毒はじわじわと僕の肺を壊していく



逃げ出した画面の先には僕を救っているものはなにもなく
それすら知らないふりをして、その先に救いを求める



なにもなくて
薄暗くて
怖くて、 怖くて



ついそこにある緑の柵を
するりと飛び下りれれば終わるのに
それも、出来なくて



キミタチの「安定」にすがりついて
ただ暗い夜を有毒を吸ってやり過ごす



泣きたい
泣けない
だってもう身体は毒に犯されてしまったから



涙すら流れない




あの画面の先にも救いがないと思い知らされて
また有毒の薄紫色を吸って、かろじて息をする



ひとり自分の中に取り残された
助けのない僕の「安定」という名の檻



緑の柵まであと数メートル
暗い明日まであと数時間




もう、そうだね
意を決してみようか





緑色の明日


柵の向こうの僕の未来






真っ赤な道をするすると
通り抜けてその先に
私の夢みた桃源郷



その暗い現実から
逃げて 逃げて 逃げて



あの甘い嘘を
舐めて 舐めて 舐めて



私の画面の先の桃源郷
私の13インチの幻想郷


逃げてきたその勇者たちの集いは
私に仮初めの勇気を与えて
今日もどこかで笑ってる



甘い甘い嘘に縛られて
今日も私はいっぱいの夢を見る



亀裂ばかりの明日を閉ざして
嘘ばかりの夢を舐めて
仮初めの勇者を気取って



私の13インチ
私の幻想郷
私の桃源郷




やめることの出来ない甘い誘惑
とまることの出来ない甘い有毒




低脳なワタシの、
たったひとつ与えられた、
たったひとつの生きる意味



13インチの世界の中へ
亀裂だらけの今日をつれて





また、明日




13インチの今日







境界線を越えたら私が消えた
それは夜から朝に変わる瞬間
私は音を立てて消滅した


やっと静かになった


息を止める瞬間、私は嗤った



笑って過した日々があった
幸福な時間があった
けれどどうしても
泣きたいぐらいに死んでしまいたい夜が
確かにそこに存在していたから



爆発音と共に熱に溶ける私を
どこか安心して見送った



笑って過した時間の中で
どこか偽りを探していた
これは嘘なのだよと、あまり信じない方がいいよと
私はすごく、臆病者だったから




境界線が消えたら私が現れた
それは夜から朝に変わる瞬間
私は空間上に誕生した



なんだ、まだ生きてた






私は悪態をついて、泣いた





1日消滅


泣いてしまうぐらい、ここにいたい朝もあった







鋭いハサミがありました

錆びついたハサミがありました



僕は何度も何度もそのハサミを研ぎました

研ぎながら僕は僕の感情を抑え留めました



このハサミで、切り裂いてやりたい
このハサミで、ぐちゃぐちゃにしてやりたい

このハサミで、君を




僕はハサミを研ぎました
僕はハサミを研ぎました

ひたすらひたすら研ぎました



僕は泣きました
ひたすら泣きました



気付くと君が隣で眠っていました
僕は溜息をつきました



ハサミを研ぎました
君は寝息を立てました








綺麗な君を、生かしましょう


僕はハサミを手にしました





悪夢内自殺


僕は自分を刺しました


おしまい




――――――――――――


死んだとおもったら夢でした





貴方とかくれんぼ
独り間抜けに鬼ごっこ


もういいかい
まだだよ
もういいかい
もう遅いよ


私は走るの



貴方と鬼ごっこ
独り間抜けにかくれんぼ


みつけたよ
みつかったわ
みつけたよ
まだ早いの


私は逃げるの




走りながら気づいた

もう貴方がいないことを
お間抜けね、
時間が止まっていたことさえも知らないなんて



何かから逃げた
何かを忘れた
時間に追われた
なんの為に逃げたかを思い出した
思い出したところで
何も変わらないことを知らないふりをした




貴方とかくれんぼ
貴方と鬼ごっこ



貴方の存在からかくれんぼ
貴方の存在を鬼ごっこ




―――――――――――――


貴方が死んでしまったことをどうか気付かないでいたい






路地裏に迷い込んだ猫が凪いだ
彼は死んでしまったんだろうか
私はずっと そわそわ そわそわ


裏路地はいつでも平和
私を含めて時間が止まってしまったままだった
それでもカラスは息絶え絶えに
彼女はもうすぐ死んでしまうのだろうか
私は毎日 わらわら わらわら


路地裏に入り込んできた彼が言った
「君はずっとこんなところにいるの?」
心臓を突かれた感覚に襲われる
気付いたら周りのみんなは死んでいた



時間が止まってしまったと思っていた
表に出たら動いてしまうと恐れた
でも時間が止まっていたのは私だけだったようだ
私は声をあげずに泣いた


彼は私の恐れた表の人間
なのになぜ彼は私に手を差し出すの?
私は おろおろ おろおろ …おろおろ
私は周りを見回した
猫はドラム缶におぼれていた
カラスは土に還っていた




おろおろ、わらわら、そわそわ



彼は私を見て笑った


私は彼の手を、そっと触った




路地裏逃避行


いつしか彼は私を汚いおじさんに売った




―――――――――――――――――


ハッピーエンドにはなれませんでした











光の中でみた君は、まるで夢のよう

私の身体が光に溶けだしていてもなお、輝いていて

これから地獄におちるであろう私に、いつもの笑みを



笑みを ――― ……






君は笑って手をのばすだろう

私がもうすぐ溶けてしまうことさえ知らず

君は温かなその手を私に差し出して笑うだろう

私がもうすぐ君の前からいなくなることなんて考えず




まるで夢のような人

まるで幻のような人




君がいたから、生きていこうと思った

君が光をくれたから、暗闇の中でも前を向けた



神さまなんか信じない私だけど、君は、信じようと思った





君の手の温もりが消えていく

君の声のトーンが遠の退いていく



まだここにいたいのに

その願いさえ許されず


君の傍にはもう立てない




神さまは信じないけれど

もし神が形を成したなら君みたいなのだろと笑った



この光を失ってしまうのは怖いけれど

それでも、私が消えたあとも、君には笑っていてほしい




まるで夢のような人

まるで、神さまみたいな人





笑っていて

どうか私のことは忘れて

涙なんか流さないで




アナタは、アナタのまま

何事もなかったかのように

笑って生きていて





このロクデモナイ世界で


君に逢えたことだけが、私の唯一の救いでした





――――――――――――――――


ロクデモナイ

ってカタカタにするとカクカクだなぁ