三島由紀夫の自殺 | 閑話休題

 三島由紀夫の自殺

 文学者はよく自殺する。太宰治・川端康成など。しかし三島由紀夫の自殺はその動機が、憲法改正で自衛隊を戦前の軍隊に戻すことであった。昭和45年11月の事である。私は驚いた。あれほど尊敬する作家が大義をたてて自殺するとは、当時の世論風潮とはかけ離れていただけに、何か虚しさを感じた。その時詠んだ詩である。

 

    嗚呼惜しむべきむなしささ

  壮絶たる割腹

  ひとは彼の美意識の極致という 

  ひとは時代錯誤の犬死だという

    それにしても

  時代に訴える精神の惜しむべき虚しさ

 

  かの横溢たる審美の精神

  その磨き尽くされた文章の確かさ

  昨日まで人々を酔わしめた紅葉が

  春をも想わせる晩秋の一日

  かくも敢えなく散ろうとは!

 

  彼の磨き尽くされた遺産を惜もう

  その昇華された純粋の行動を買おう

  しかしここに思想の虚しさを感じさせる何かが

  一つの時代の終焉をつげる

 

  壮絶たる死!

  彼の肉体の奥深くに貫かれた切口

  自ら鬼神と名乗りながら

  もう一歩のところで彼は神になりえなかった

  嗚呼! 惜しむべき虚しさ!