『源氏物語』プロローグ | 閑話休題

『源氏物語』プロローグ

 今まで登場した源氏物語の女性は、主だった7人に過ぎない。それも私にとって印象の強い女性だけで、まだまだ多くの女性が登場するが、とても書ききれないので、一応終結したい。その女たちもそれぞれ顔貌、個性を持っていて忘れられない。筆者紫式部の女性に対する観察力、描写力はすごい。

  今から1000年以上昔の平安中期、女紫式部一人でこの長編が創作された。当時世界中を見渡しても、『源氏物語』ほどの小説はない。主人公光源氏の出生からの女遍歴、いろんな個性ある女を登場させ、それらが織りなす小説の綾、彼女の構想力には驚嘆する。

 

 万葉の昔から日本では和歌が広がり、貴族から庶民に至るまで、自然鑑賞・人間の哀歓を七五三のリズムで歌った。その後『竹取物語』から『伊勢物語』など短編小説が主流となり、短い文章の中に素晴らしい内容を盛り込んでいる。室町期から流行した「能」も原本の謡曲は、その文章自体は短く、その中ですべての主題を取り入れて纏めている。

 それらに対し『源氏物語』は54帖に及ぶ長編である。源氏物語』こそ日本にとって最大の文学遺産で、世界中数十ヶ国に翻訳されて、日本人の宝物にもなっている。

 

 全編平安中期の宮廷の、美しい日本語の、ーみやびーある古語で綴られており、現代のわれわれにもすんなりとは読み切れないが、

口語訳を読んだだけでは、『源氏物語』の素晴らしさは何も分からない。ぜひ注釈付きの原文を読まれることを薦めたい。それには新潮社版全8巻の『源氏物語』が最高だと考える。私は数年かかって5度通読し、やっとこの小説の素晴らしさの入り口に立つことが出来た。

 

 『源氏物語』を読んだ当時の知識人は、話や筋がが突飛すぎて、嘘交じりの虚構が多すぎ、この小説は罪深いと言い立てた。平安末期

平康頼が書いた『宝物集』には、紫式部が虚言をもって『源氏物語』を書き、そのため地獄に墜ちて苦しんでいる故、供養してほしいと言ったと書いてから、鎌倉期の能『源氏供養』では光源氏と紫式部の二人の供養をする能が創作されている。、